はじめに
台風の一生は、発生期、発達期、最盛期、衰弱期に大きく分けることができます(豆知識52)。このうち、台風の発生から最盛期における特徴は、主に豆知識51と豆知識53で述べました。今回は、主に衰弱期の台風に焦点を当てます。
台風が衰弱していく過程は、大きく二つに分けられます。一つは、熱帯低気圧への変化であり、もう一つは温帯低気圧への変化です。これらの変化について、具体的な事例を交えてお話します。
熱帯低気圧への変化
台風が衰弱すると、熱帯低気圧に変化することがあります。気象庁の実況天気図(速報天気図)では、「台風○○号」から「熱低」と表示が変わります。
このように台風が熱帯低気圧に変化する場合、その構造が大きく変化するわけではありません。台風の条件となる最大風速17.2 m/s(豆知識51)の水準を下回ったことで、台風から熱帯低気圧へと区分が変わったものです。熱帯低気圧に変化しても、強風や高温多湿な空気がもたらす大雨のリスクがあるため油断は禁物です。
ここでは、台風の「発生期」「発達期」「最盛期」及び「衰弱期(熱帯低気圧に変化する過程)」における雲域の特徴を、3つの事例を用いて紹介します。
まず、2024年8月22日~9月1日の台風10号に関する地上天気図(左側)と気象衛星による赤外画像(右側)を図1に示します。図1における①は台風の発生期、②は発達期、③は最盛期、④は衰弱期(熱帯低気圧に変化する前)、⑤は衰弱期(熱帯低気圧に変化した後)に相当します。
一般に、発生期の台風では中心部付近に積乱雲群が高密度で存在し、これらの雲域が組織化され始めます。ただし、発生初期の段階では、まだ雲域と台風中心の位置が離れている場合があります。発達期から最盛期の台風では、中心の周りを取り巻くように、円形に発達した積乱雲域が形成されます。
これらの一般的な特徴は、図1①、②、③の赤外画像において白く写っている雲域、つまり雲頂高度が高い積乱雲域からも読み取ることができます。(ただし、厳密には豆知識17で述べたとおり、積乱雲かどうかを判断するためには、可視画像で雲の厚さを確認する必要があります)
最盛期の台風では、中心部には眼が形成されることが多く(豆知識52)、発達した台風ほど、衛星画像で見た眼の形は真円に近く、その縁が鮮明になる傾向があります。図1③の衛星画像でも、この特徴が表れています。
一方、台風が衰弱して熱帯低気圧に変化する過程では、中心を取り巻いていた雲域のまとまりが次第に崩れ、渦巻き状の雲域がばらけていく傾向があります。この特徴は図1④、⑤の衛星画像からも見て取れます。
他の2つの事例(図2、3)についても、図1と同様の特徴が見られます。
2024年8月22日~9月1日の台風10号





図1 2004年8月22日3時(①)、26日18時(②)、28日3時(③)、30日9時(④)、9月1日12時(⑤)の地上天気図(左側)と気象衛星による赤外画像(右側)
注)地上天気図は気象庁提供、気象衛星画像は高知大学気象情報頁(http://weather.is.kochi-u.ac.jp/) による。注目する台風の位置を、地上天気図では赤の矢印、気象衛星画像では青の矢印で示した(地上天気図において台風の進行方向は、白抜きの矢印で示されている点に注意)。
2010年8月29日~9月3日の台風7号





図2 2010年8月29日21時(①)、30 日21時(②)、31日9時(③)、9月2日18時(④)、3日3時(⑤)の地上天気図(左側)と気象衛星による赤外画像(右側)
注)図の注釈は、図1を参照。
2012年8月3日~8月10日の台風11号





図3 2012年8月3日9時(①)、4日18時(②)、6日18時(③)、9日21時(④)、10日3時(⑤)の地上天気図(左側)と気象衛星による赤外画像(右側)
注)図の注釈は、図1を参照。
台風が熱帯低気圧になった後、再び台風に発達した事例
台風がいったん熱帯低気圧になった後、海水温の高い海域を進むなどして、再び台風として発達する場合があります。このように、熱帯低気圧が再び台風にまで発達した場合は、新たに台風番号を付け直すことはなく、最初に付けられた番号をそのまま用います。
その事例を2025年の台風8号で見てみましょう(図4)。7月23日21時頃、熱帯低気圧から台風8号に変わりました(②)。その後、7月26日9時頃に再び熱帯低気圧となりました(④)。この熱帯低気圧は再発達し、7月27日21時頃には再び台風8号となりました(⑥)。その後台風8号は再び衰弱し、7月31日9時頃に、みたび熱帯低気圧に変化しました(⑧)。








図4 2025年7月23日18時(①)、23日21時(②)、26日6時(③)、26日9時(④)、27日18時(⑤)、27日21時(⑥)、31日6時(⑦)、31日9時(⑧)の地上天気図
注)地上天気図は気象庁提供。注目する台風(熱帯低気圧)の位置を、赤の矢印で示した。
温帯低気圧への変化
台風は気温などの物理量が水平方向にほぼ一様に分布する熱帯海洋上で発生・発達するため、前線は形成されず、物理量や雲の分布は中心の周りにほぼ軸対称になっています(豆知識52)。また、台風の中心付近には、暖気核が形成されます(豆知識53)。
しかし、台風が北上して偏西風帯に入ると西(あるいは北)側から乾燥した寒気が中心付近に流入するようになります。さらに、台風の北上により、海面からの暖かく湿った空気(水蒸気)の供給量が減少し、中心付近の暖気核が弱まります。また、中緯度の傾圧性(水平温度傾度)が大きい場所では、台風の周辺部から、暖気と寒気の間に前線が形成されるようになります。
これらの結果、物理量や雲の軸対称の分布が崩れ、「台風の構造」から、進行方向の前面(東側)で暖気移流、進行方向の後面(西側)で寒気移流が卓越する「温帯低気圧の構造」(豆知識9)に変化することがあります。このような構造の変化が台風の中心付近まで及び、前線が中心まで解析できるようになると、温帯低気圧に変わったとされます。この温帯低気圧への変化は、最大風速の大小とは関係しません。
台風が温帯低気圧に変化することを、台風の温帯低気圧化(温低化)といいます。気象庁の実況天気図(速報天気図)では、「台風○○号」から「低」と表示が変わります。
ここでは台風の「発生期」「発達期」「最盛期」及び「衰弱期(温帯低気圧に変化する過程)」における雲域の特徴を、4つの事例を用いて紹介します。
まず、2012年9月12日~9月18日の台風16号に関する地上天気図(左側)と気象衛星による赤外画像(右側)を図5に示します。図5における①は台風の発生期、②は発達期、③は最盛期、④は衰弱期(温帯低気圧に変化する前)、⑤は衰弱期(温帯低気圧に変化した後)に相当します。
図5の①発生期、②発達期、③最盛期の雲域についても、図1①~③を用いて説明した特徴がみられます。
一般に台風が温帯低気圧に変化する過程では、台風の中心を取り巻く円形の活発な雲域が消失し、中心付近は下層雲域のみとなる傾向があります。図5の④、⑤の赤外画像においても、台風(低気圧)の中心付近は暗く写っており、雲頂高度の高い雲が中心付近に存在しないことが読み取れます。
また、台風(低気圧)の西側から乾燥した寒気が流入するため、積乱雲は西側から次第に衰弱し、北側を中心に存在するようになります。さらに、この積乱雲域は偏西風に流され、中心から北東方向へ次第に離れていきます。この特徴は、図5④、⑤の赤外画像において白く写っている雲域、つまり頂高度の高い雲域からも推定することができます。
他の3つの事例(図6~8)についても、図5と同様の特徴が見られます。
2012年9月12日~9月18日の台風16号





図5 2012年9月12日15時(①)、13日3時(②)、14日12時(③)、17日18時(④)、18日9時(⑤)の地上天気図(左側)と気象衛星による赤外画像(右側)
注)図の注釈は、図1を参照。
2013年10月4日~10月9日の台風24号





図6 2013年10月4日15時(①)、6日9時(②)、7日12時(③)、8日15時(④)、9日9時(⑤)の地上天気図(左側)と気象衛星による赤外画像(右側)
注)図の注釈は、図1を参照。
2017年9月9日~9月18日の台風18号





図7 2017年9月9日21時(①)、13日6時(②)、14日15時(③)、17日3時(④)、18日21時(⑤)の地上天気図(左側)と気象衛星による赤外画像(右側)
注)図の注釈は、図1を参照。
2020年8月28日~9月3日の台風9号





図8 2020年8月28日15時(①)、30日12時(②)、9月1日15時(③)、3日9時(④)、3日15時(⑤)の地上天気図(左側)と気象衛星による赤外画像(右側)
注)図の注釈は、図1を参照。
温帯帯低気圧の変化後に再発達した事例
台風が温帯低気圧化すると、天気図や気象情報からは「台風」という言葉がなくなりますが、温帯低気圧として再発達し、中心気圧が下がることがあります。この場合、強風域が広がったり、低気圧の中心から離れた場所で風が最も強くなったりすることがあります。また、大雨への警戒も引き続き必要です。
台風が温帯低気圧に変化し、再発達する様子を地上天気図で見てみましょう。図9は、2004年の台風18号が温帯低気圧に変化する過程の地上天気図を、上から時系列に並べたものです。
台風18号は長崎に上陸した後(①)、日本海を北東に進みながら弱まって(②~④)、暴風域が狭くなりました。しかし、北海道の西の海上で温帯低気圧に性質を変えながら(⑤~⑥)再び発達し、中心から離れた帯広や釧路地方でも強風が吹きました。






図9 2004年9月7日9時(①)、7日15時(②)、7日21時(③)、8日3時(④)、8日9時(⑤)、8日15時(⑥)の地上天気図
注)地上天気図は気象庁提供。注目する台風(温帯低気圧)の位置を、赤の矢印で示した。
気象衛星画像での台風の強さの推定
気象衛星画像(図1~3、図5~8)を用いて述べたように、台風は発達段階によって、雲パターンや眼の形成の有無などが異なります。気象庁では、観測点のない海上における台風の強度(最大風速や中心気圧)を推定するために、このような気象衛星画像の解析結果を用いています。
具体的には、まず雲パターンから発達段階を示す指数(T数)を求めます。さらに、中心を取り巻く雲域の大きさや雲頂温度(雲頂高度)、眼の形状、スパイラルバンド(豆知識53)の幅や長さなどを考慮してT数を調整します。こうして求めたT数と台風の強度が統計的に関係付けられているため、T数から台風の強度を推定することができます。
この手法は、その開発者であるV. F. Dvorak氏の名前にちなんで「ドボラック法」と呼ばれています。
過去の気象予報士の試験問題
過去の気象予報士試験において、台風の衰弱や気象衛星画像での強さの推定などに関する問題が出された例を、以下に紹介します。
第64回気象予報士試験 学科

図10 第64回学科 専門知識問14
(c)に関しては、「温帯帯低気圧の変化後に再発達した事例」の項目で述べたとおり、強風域が広がったり、低気圧の中心から離れた場所で風が最も強くなったりすることがあります。よって、問題文(c)は、正しいです。
第63回気象予報士試験 学科

図11 第63回学科 専門知識問10
(c)に関しては、中緯度帯でも海面水温が高ければ、台風が発達することができます。しかし、「温帯低気圧への変化」の項目で述べたとおり、中緯度でも傾圧性(水平温度傾度)が大きい場所では、台風は周辺部から前線が形成され、軸対称の構造が崩れてきます。気象業務支援センターの解答例では、問題文(c)は、誤りとされています。
第62回気象予報士試験 学科


図12 第62回学科 専門知識問8
(d)に関しては、眼がはっきりしているDは、最盛期の台風です。積乱雲が組織化され始めている段階にあり、まだ雲域と台風中心の位置が離れているEは発生初期の台風と考えられます。よって、「Eの台風の方が中心気圧が低いと推定される」とする問題文(c)は、誤りです。
第61回気象予報士試験 学科

図13 第61回学科 専門知識問10
(d)に関しては、「温帯帯低気圧の変化後に再発達した事例」の項目で述べたとおり、強風域が広がったり、低気圧の中心から離れた場所で風が最も強くなったりすることがあります。よって、問題文(d)は、正しいです。
第58回気象予報士試験 学科

図14 第58回学科 専門知識問12
(d)に関しては、「気象衛星画像での台風の強さの推定」の項目で述べたとおり、気象衛星画像による台風の雲域の形状や雲頂温度(高度)の分布などから台風の強度を推定する方法を用いています。よって、問題文(d)は、正しいです。
第54回気象予報士試験 学科

図15 第54回学科 専門知識問8
(a)に関しては、この台風は周辺には活発な対流雲を伴っているため、引き続き大雨への警戒が必要です。よって、問題文(a)は、正しいです。
(c)に関しては、「温帯低気圧への変化」の項目で述べたとおり、台風が北上すると乾燥した寒気が中心付近に流入するとともに海面からの水蒸気の供給量が減少し、中心付近の暖気核が弱まります。また、中緯度の傾圧性が大きい場所では前線が形成されるようになります。これらの結果、軸対称性が崩れます。よって、問題文(c)は、誤りです。
第53回気象予報士試験 学科

図16 第53回学科 専門知識問11
(d)に関しては、「温帯帯低気圧の変化後に再発達した事例」の項目で述べたとおり、強風域が広がったり、低気圧の中心から離れた場所で風が最も強くなったりすることがあります。よって、問題文(d)は、正しいです。
第47回気象予報士試験 学科

図17 第47回学科 専門知識問10
(b)に関しては、「温帯帯低気圧の変化後に再発達した事例」の項目で述べたとおり、強風域が広がったり、低気圧の中心から離れた場所で風が強くなったりすることがあります。よって、問題文(b)は、正しいです。
(c)に関しては、「温帯帯低気圧の変化後に再発達した事例」の項目で述べたとおり、温帯低気圧の中心気圧は、変わる直前の台風の中心気圧より下がることがあります。よって、問題文(c)は、誤りです。
第39回気象予報士試験 学科

図18 第39回学科 専門知識問8
(d)に関しては、「気象衛星画像での台風の強さの推定」の項目で述べたとおり、気象衛星画像による台風の雲域の形状や雲頂温度(高度)の分布などから台風の強度を推定することができます。よって、問題文(d)は、正しいです。
第35回気象予報士試験 学科

図19 第35回学科 専門知識問10
(a)に関しては、すでに台風の眼を識別できなくなっており、壁雲もありません。よって、問題文(a)は、正しいです。
(b)に関しては、「温帯低気圧への変化」の項目で述べたとおり、台風が温帯低気圧に変化する過程では、台風の中心を取り巻く円形の活発な雲域が消失します。よって、問題文(b)は、正しいです。
(c)に関しては、「温帯低気圧への変化」の項目で述べたとおり、台風が温帯低気圧に変化する過程では、中心付近は下層雲域のみとなる傾向があります。よって、問題文(c)は、正しいです。
(d)に関しては、豆知識17や豆知識43で述べたとおり、可視画像、赤外画像ともに白く写っているのは、厚くて雲頂高度の高い雲(積乱雲)です。これらの雲域がかかっている地方では、大雨に警戒が必要です。よって、問題文(d)は、正しいです。
第33回気象予報士試験 学科


図20 第33回学科 専門知識問4
下線部(a)に関しては、「気象衛星画像での台風の強さの推定」の項目で述べたとおり、気象衛星画像による台風の雲域の形状や雲頂温度(高度)の分布などから台風の強度を推定する方法を用いています。よって、下線部(a)は、正しいです。
下線部(b)に関しては、「熱帯低気圧への変化」の項目で述べたとおり、発達した台風ほど、衛星画像で見た眼の形は真円に近く、その縁が鮮明になる傾向があります。眼がほぼ円形に近く縁が鮮明である右図の方が、最盛期の画像です。よって、下線部(b)は、誤りです。
下線部(c)に関しては、豆知識52(図12)と豆知識53の「雲の構造」の項目で述べたとおり、台風の中心の少し外側の壁雲付近で風速は最大となります。よって、下線部(c)は、正しいです。
下線部(d)に関しては、豆知識51の「暴風域と強風域」の項目で述べたとおり、暴風域の外側でも、瞬間的には25 m/s以上の風が吹くことがあります。また、今回の豆知識の「温帯帯低気圧の変化後に再発達した事例」の項目で述べたとおり、温帯低気圧化に伴い、中心から離れた場所で風が強まることがあります。よって、下線部(d)は、正しいです。
第28回気象予報士試験 学科

図21 第28回学科 専門知識問10
文(d)の下線部に関しては、「温帯低気圧への変化」の項目で述べたとおり、台風が北上して偏西風帯に入ると西(あるいは北)側から乾燥した寒気が中心付近に流入するようになり、また、中緯度の水平温度傾度が大きい場所では、暖気と寒気の間に前線が形成されるようになります。これらの結果、物理量や雲の軸対称の分布が崩れます。よって、文(d)の下線部は、正しいです。
第25回気象予報士試験 学科


図22 第25回学科 専門知識問3
(a)に関しては、水蒸気画像では、矢印で示した台風の中心付近が周囲より黒く表現されており、上・中層に乾燥した空気が流れ込んでいることが分かります。このことは、台風の中心付近に雲頂高度の高い積乱雲がないことを示しています。よって、問題文(a)は、正しいです。
(b)に関しては、「温帯低気圧への変化」の項目で述べたとおり、積乱雲域は強い偏西風に流されて中心から次第に離れていくようになります。よって、問題文(b)は、正しいです。
(c)に関しては、C付近の雲域は赤外画像では不明瞭で、ほとんど識別できません。一方、可視画像では白く筋状・房状の雲として確認できるため、雲頂高度の低い積雲または層積雲であると判断できます。この雲域は、冬季の日本海で寒気が流入した際に形成される筋状の雲と同様の仕組みにより、台風中心の西側へ寒気が流入したことに伴って発生したものと考えられます。よって、問題文(c)は、正しいです。
第25回気象予報士試験 学科

図23 第25回学科 専門知識問7
(d)に関しては、「温帯低気圧への変化」の項目で述べたとおり、温帯低気圧の構造に変化し、前線が中心まで解析できるようになると、温帯低気圧に変わったとされます。この温帯低気圧への変化は、最大風速の大小とは関係しません。よって、問題文(d)は、誤りです。
第19回気象予報士試験 学科


図24 第19回学科 専門知識問3
台風になる前の熱帯低気圧の画像は、積乱雲がまだ組織化されていない状態で分布している(c)です。 台風の発生初期、最盛期、温帯低気圧の画像については、図5~8を用いて述べた内容を考慮すると、それぞれ、(b)、(d)、(a)の画像となります。よって、正解は、(c)→(b)→(d)→(a)とする③となります。
第15回気象予報士試験 学科

図25 第15回学科 専門知識問8
(b)に関しては、「温帯帯低気圧の変化後に再発達した事例」の項目で述べたとおり、強風域が広がることがあります。よって、問題文(b)は、正しいです。
さいごに
今回のキーワードは“台風の衰弱”でした。繰り返しになりますが、台風が衰弱したからといって、油断は禁物です。熱帯低気圧への変化は、あくまでも最大風速が17.2m/sの水準を下回ったことによるものであり、引き続き強風や大雨への警戒が必要です。
また、温帯低気圧化については、台風としては“衰弱”であっても、温帯低気圧の構造に変化することで、温帯低気圧として“再発達”することがあります。この場合、むしろ風が強まったり、強風域が広がったりすることもあります。発達する温帯低気圧の特徴については、豆知識9を参照いただけると幸いです。
次回は、台風による被害についてお話しする予定です。
今回の豆知識で参考にした図書等
●明石秀平,木場博之,櫃間道夫(1986)台風の気圧中心から離れて存在する積乱雲の渦,気象衛星センター技術報告13: 33-56
●浅井冨雄,内田英治,河村 武 監修(1999)増補 気象の事典,平凡社
●安斎政雄(1998)新・天気予報の手引(改訂29版),日本気象協会
●岩槻秀明(2017)気象学のキホンがよ~くわかる本(第3版),秀和システム
●気象衛星センター(2004)気象衛星画像の解析と利用-熱帯低気圧編-,気象衛星センター
●気象衛星センター(2022)気象衛星画像の解析と利用(2022改訂版),気象衛星センター技術報告 特別号(2022)
●気象業務支援センターのwebサイト
●気象研究所(1985)台風の構造の変化と移動に関する研究-台風7916の一生-,気象研究所技術報告, 14
●気象庁のwebサイト
●北畠尚子 (2025) 総観気象学 基礎編(改訂版),気象庁
●Kitabatake, N., Hoshino, S., Bessho, K., and Fujibe, F. (2007) Structure and intensity change of Typhoon Songda (0418) undergoing extratropical transition, Papers in Meteorology and Geophysics 58: 135-153
●高知大学のwebサイト(気象情報項)
●髙村奈央・石川裕彦(2013)台風が温帯低気圧化後に再発達するときの構造と環境場,京都大学防災研究所年報 56B: 323-334
●中島俊夫(2022)イラスト図解 よくわかる気象学 実技編,ナツメ社
●饒村 曜(2005)気象予報士 完全合格教本,新星出版社
●野中信英(2005)北西太平洋域における台風の発生形態の特徴,気象衛星センター技術報告46: 15-32
●村松照男(1982)成熟した台風の温帯低気圧化の過程について-台風7916号(OWEN)-,天気29: 1199-1212
●村松照男(1983)洞爺丸台風の温帯低気圧化について,天気30: 461-468
