【豆知識59】台風通過時の気象要素の時系列図を読み解く|突風率とは?「強い雨」「激しい雨」の基準は?

はじめに

 地上で観測された風・気圧・降水量などの10分間隔のデータを、時系列に整理して図に示すことがあります。これを「地上気象要素の時系列図」と呼びます。
 気象予報士試験の実技試験では、この「地上気象要素の時系列図」を用いて、台風の接近・通過に伴う気象要素の変化を読み取る問題が出題されることがあります。
 豆知識52では、台風域内の「気圧と風の強さ」や「風向」の特徴をテーマとし、関連する気象予報士試験(学科試験)の問題を紹介しました。今回の豆知識では、その続編として、台風が通過する前後の「地上気象要素の時系列図」を主なテーマとし、関連する気象予報士の実技試験問題を通して、その見方や読み取り方を学んでいきます。
 「地上気象要素の時系列図」に掲載される風速データとしては、多くの場合、瞬間値と平均値が用いられます。そこで最初に、豆知識4で述べた瞬間風速と平均風速について簡単におさらいしておきましょう。

瞬間風速、風速、突風率

 風速はたえず変化するので、瞬間値と10 分間(例えば8時50分~9時00分)の平均値で表します(図1)。
 瞬間風速は、風速計の測定値(0.25秒間隔)を3秒間平均した値(測定値12個の平均値)です。最大瞬間風速は、瞬間風速の最大値です。
 一方、風速とは10分間平均風速を指し、最大風速は10分間平均風速の最大値です。
 突風率は、最大瞬間風速が生じた時のその値と10分間平均風速との比で定義されます(図1)。強風による被害は最大瞬間風速が観測される頃に発生しやすくなります。突風率は、最大瞬間風速がその時間帯の平均風速に比べてどの程度大きいかを表す指標です。一般に突風率は、1.5~2の値をとるとされています。

図1 瞬間風速、平均風速、および突風率

雨の強さと降り方

 「地上気象要素の時系列図」では、10分間降水量の推移も示される場合があります。降水量の大きさをイメージしやすくするため、ここでは気象庁が定める1時間雨量ごとの「雨の強さと降り方」を紹介しておきます(表1)。

過去の気象予報士の試験問題

 過去の気象予報士試験において、台風が通過する前後の「地上気象要素の時系列図」などに関する問題が出された例を、以下に紹介します。

第65回気象予報士試験実技1
 実技1では、XX年8⽉14⽇から8月16日にかけての⽇本付近における気象について問われました(ちなみに、XX年は2023年です)。8月14日は台風7号の影響で近畿・東海地方で大荒れの天気となり、15日には台風は近畿地方を北上しました。
 図2は8月14日21時の地上天気図です。
 実技1問6では、潮岬における8月14日22時~15日10時の地上気象要素の時系列図を用いて、台風の中心が通過した際の気象変化などについて問われました。

図2 地上天気図(XX年8月14日21時(12UTC)) 
注)実線・破線:気圧(hPa) 。矢羽:風向・風速(ノット)(短矢羽:5ノット、長矢羽:10ノット、旗矢羽:50ノット)。台風の予報円は削除してある。

図3 第65回実技1問6

図4 地形図 
注)細実線:等高線(300m毎)、塗りつぶし域:標高(m)(凡例のとおり)

図5 潮岬における地上気象要素の時系列図
注)XX年8月14日22時(13UTC)~15日10時(01UTC)。矢羽:風向・風速(m/s)(短矢羽:1m/s、長矢羽:2m/s、旗矢羽:10m/s)、潮岬の位置は図4に表示。

【問6(1)】
 図6は、設問の時系列図(図5) に、答えを導くうえでヒントとなる情報を、私が書き込んだものです。
 豆知識52(図24)で述べたとおり、台風がある地点の東側を北上する場合には風向は反時計回りに変化し、台風がある地点の西側を北上する場合には、風向は時計回りに変化します。
 図6の赤の枠内に示されている矢羽根の向きの変化に注目すると、風向は反時計回りに変化しています。
 よって解答は、
 台風の中心は潮岬の東側を通過した。
となります。
 また、その理由は、
 風向が反時計回りに変化したため。
となります。

図6 問6(1)の解答を導くうえでヒントとなる情報
注)設問の図5に番号などを書き込んだもの。

【問6(2)①、②、③】
 豆知識13で述べたとおり、「気温と露点温度の差」が0に近いほど、空気は湿っていることになります。逆に言うと、気温と露点温度の差が大きいほど、空気は乾燥していることになります。
 4時30分頃の気温と露点温度の差(図6①の青の矢印)をみると、その差は前後の時間より大きくなっています。よって、相対湿度が① 低いとなります。
 また、台風の中心が最接近した時刻を中心に風が弱く、降水も弱いことから、潮岬は② 台風の眼に入っていたと考えられます。
 最大瞬間風速が10m/s以下となった点(プロット)は、2時50分~6時00分です(図6③の緑の矢印)。ただし、図6に記載されているように、最大瞬間風速は、「前10分間の最大瞬間風速」であり、2時50分の点は2時40分~2時50分の観測値に対応しています。よって、実際に最大瞬間風速が10m/s以下となっている時間帯は、2時40分~6時00分の③ 200分間となります。

【問6(2)④】
 台風の移動速度は20km/h。台風の眼に入っていた時間は200分(200/60≒3.33時間)。
 距離=速度×時間=20 (km/h)×3.33 (h)≒66.6 (km)
 ここで、「④は10刻みの整数で答えよ」とされているので、台風の眼の直径は約④ 70 kmとなります。

【問6(2)⑤】
 図6の期間中の最大瞬間風速の最大値は、オレンジ色の⑤(23時30分)の値を読み取ると、約⑤ 34 m/sとなります。
 この時刻の平均風速は、紫色の矢印(23時30分)の値を読み取ると15m/s。
 突風率=最大瞬間風速÷平均風速=34 (m/s)÷ 15 (m/s) ≒ 2.3。
ここで、「⑥は0.1刻みの数値で答えよ」とされているので、突風率は約⑥ 2.3 となります。

【問6(3)①】
 図6の期間中の最大の前1時間降水量が最も多い時間帯は、23時30分から0時30分です(灰色の矢印)。この時間帯の10分間積算量(目盛りはグラフの右側)は、5+4.5+4.5+5+6+5.5=30.5 (mm) です。
 ここで、「最大の前1時間降水量を0.5mm刻みで、その起時を10分刻みで答えよ」とされているので、降水量は 30.5mmとなります。また、設問では「最大の前1時間降水量の起時を答えよ」とされています。23時30分から0時30分の降水量は、0時30分の前1時間降水量です。そう考えると
 起時は 0時30分(気象業務支援センターの解答例)
となります。

【問6(3)②】
 図6において、最低気圧を観測した時刻は2時20分(気圧は975hPa、ピンクの矢印)であり、台風の中心が最接近した4時30分頃(気圧は977hPa、黒の矢印)よりも約2時間早くなっています。
 設問では、「このような状況をもたらした主な要因を答えよ」とされています。もし、台風が勢力を維持したまま進むのであれば、最接近する頃に最低気圧を観測するはずです。しかし、実際には、最接近する約2時間前に最低気圧を観測し、最接近時の気圧はそれより2hPa上昇しています。このことから、台風の勢力は弱まったと考えられます。
 したがって解答は、
 台風の勢力が急速に弱まった(気象業務支援センターの解答例)
となります。
 ただし、2時間で2hPaの上昇なので「急速に」の表現がなくても正解と判断される可能性があります。また、「台風の中心気圧が上昇した」としても正解になるかもしれません。

第60回気象予報士試験実技2
 豆知識58で述べたとおり、実技2では、XX年6⽉15⽇から17日にかけての⽇本付近における気象について問われました(XX年は2018年です)。
 図7は6月15日21時の地上天気図です。実技2問3(4)では、この時刻に⽯垣島付近にあり東北東へ進む台風6号に関し、その後の台風の経路や移動速度などが問われました。

図7 地上天気図(XX年6月15日21時(12UTC)) 
注)実線、破線:気圧(hPa) 。矢羽:風向・風速(ノット)(短矢羽:5ノット、長矢羽:10ノット、旗矢羽:50ノット)。今回の豆知識のテーマに絞るため、実際の図の一部を省略している。

図8 第60回実技2問3(4)

図9 沖縄周辺における台風の経路図
注)矢印を付したA~Dの直線のいずれかが、台風の経路を示す。 名護と久米島間の距離は120kmである。

図10 気象要素の時系列図   XX年6月16日6時(15日21UTC)~15時(16日06UTC)
久米島(上)、粟国(中)、名護(下)
注)矢羽:風向・風速(m/s)(短矢羽:1m/s、長矢羽:2m/s、旗矢羽:10m/s) 。瞬間風速:前10分間の最大瞬間風速、平均風速:前10分間の風速の平均値。

【問3(4)①、②】
 図11は、設問の時系列図(図10) に、答えを導くうえでヒントとなる情報を私が書き込んだものです。
 豆知識52(図24)で述べたとおり、台風がある地点の右側を進む(=その地点が台風の経路の左側に位置する)場合、風向は反時計回りに変化します。一方、台風がある地点の左側を進む(=その地点が台風の経路の右側に位置する)場合、風向は時計回りに変化します。
 図11の赤枠部分に注目すると、
・久米島の風向は時計回りに変化→久米島は台風経路の右側(a)
・粟国の風向は反時計回りに変化→粟国は台風経路の左側(b)
・名護の風向は時計回りに変化→名護は台風経路の右側(c)
と推定されます。
 また、図11の青の矢印の部分に注目すると、最低海面気圧は名護(990hPa)の方が久米島(992hPa)より低く、それぞれの地点に台風が最接近した時の台風中心からの距離は、久米島より名護の方が短かったと推定できます(d)。
 設問の台風経路図(図9)において、これらの(a)、(b)、(c)、(d)の全ての条件を満たす台風の経路は、① Cとなります。
 その理由としては、
 ② 風向の時系列:粟国は反時計回りの変化で経路の左側、久米島と名護は時計回りの変化で経路の右側と推定されるため。(気象業務支援センターの解答例)

 気圧の時系列:名護は久米島より最低気圧が低く、台風中心がより近くを通過したと推定されるため。(気象業務支援センターの解答例)
となります。

図11 問3 (4) の解答を導くうえでヒントとなる情報(その1)
注)設問の図10に番号などを書き込んだもの。

【問3(4)③】
 まず、台風がCの経路で久米島の北海上から名護の北海上へ進んだときの経過時間を計算します。最低海面気圧の観測から(図11青の矢印)、久米島の北海上を通過したのは8時30分頃、名護の北海上を通過したのは11時40分頃であるため、経過時間は3時間10分(≒3.17時間)となります。
 図12は、設問の台風経路図(図9) に、答えを導くうえでヒントとなる情報を私が書き込んだものです。
 久⽶島から名護までの距離は120kmとされています。その距離の移動時間が3.17時間であるので
 速度=距離÷時間=120 (km)÷3.17 (h)≒37.8 (km/h)
 ここで、「5km/h刻みで答えよ」とされているので、台風の移動の速さは③ 40(35) km/hとなります。

【問3(4)④】
 台風が久米島に最接近したのは8時30分でした。図12では、その30分後である9時の台風の位置が、赤の線(Cの経路)のどこにあるのか計算します。
 久米島と名護の図上の距離を実測すると、60mmであったとします。前述のとおり、この距離を台風は3時間10分(190分)かけて移動しました。したがって、30分間に図上を移動する長さは
60mm×30分/190分≒9mm
となります。この位置を図12では灰色の×で示しています。この×は、台風が久米島に最接近した青〇から見て、8方位で東にあたる位置にあります。
 また、前述のとおり、図上の60mmは実際の距離120kmに相当します。よって、図上の9mmに対応する実際の距離は
120km×9mm/60mm≒20km
となります(移動速度が約40km/hで、30分間に約20km進むという計算でも同じ結果になります)。
 以上のことから解答は、
④台風が久米島に最も近づいた地点の 東、20 kmとなります。

図12 問3 (4) の解答を導くうえでヒントとなる情報(その2)
注)設問の図9に、ヒントとなる情報を加筆。例えば、久米島を通る位置で赤の線(Cの経路)と垂直に交わる線を青の点線とし、その交点を青の○とした。また、名護を通る位置で同様に紫の点線と紫の〇を示した。さらに、青の〇から赤の線上に9mm進んだ地点を灰色の×とし、そこから垂直に灰色の点線を引いた。同様に、灰色の×から12mm進んだ地点をピンク色の×とし、そこから垂直にピンク色の点線を引いた。これらの補助線に対応する時刻も併せて記入している。

【問3(4)⑤、⑥】
 図11において、名護で6時〜15時における最⼤瞬間⾵速を観測した時刻は、9時40分です(オレンジの矢印)。図12において、この時刻の台風の位置は、9時の位置(灰色の×)からさらに40分(図上で12mm相当)東に進んだ地点となります(ピンク色の×)。
 一方、図11において、この台風が名護に最接近したのは、最低海面気圧が観測された11時40分と推定できます(青の矢印)。
 よって、図12において、台風の9時40分の位置(ピンク色の×)と名護の距離は、
 時間×速度=2 h×40(35)km/h= ⑤ 80(70)km となります。
 図11において最⼤瞬間⾵速を観測した時刻は、前述のとおり9時40分です(オレンジの矢印)。その値は約24.1m/s。この時刻の平均風速は約15.5m/s(黒の矢印)。
 突風率=最大瞬間風速÷平均風速=24.1 (m/s)÷15.5 (m/s) ≒ 1.55
ここで、「四捨五⼊により⼩数第1位までの数値で答えよ」とされているので、⑥ 1.6 (1.5) となります。

【問3(4)⑦】
 図11の粟国における最⼤1時間降⽔量は、6時50分から7時50分に観測されています(緑色の矢印)。この時間帯の10分間降水量の積算は、12.5+17.5+18.0+20.5+17.0+16.5=102.0 (mm) です。
 ここで「四捨五⼊により、10mm刻みの整数で答えよ」とされているので、最⼤1時間降⽔量は⑦ 100mm、となります。

第54回気象予報士試験実技2
 豆知識58で述べたとおり、実技2では、XX年8⽉24⽇から26日にかけての⽇本付近における気象について問われました(XX年は2015年です)。
 図13は8月24日21時の地上天気図です。実技2問3では、8月25日に九州を縦断した台風15号に関して問われました。

図13 地上天気図(XX年8月24日21時(12UTC)) 
注)実線:気圧(hPa) 。矢羽:風向・風速(ノット)(短矢羽:5ノット、長矢羽:10ノット、旗矢羽:50ノット)。

図14 第54回実技2問3

図15 大牟田における気象要素の時系列図   XX年8月25日3時(24日18UTC)~12時(25日03UTC)
注)大牟田の位置は図14に表示

図16 アメダス実況図 XX年8月25日5時(24日20UTC)、6時(24日21UTC)、7時(24日22UTC)、8時(24日23UTC)
注)矢羽:風向・風速(m/s)(短矢羽:1m/s、長矢羽:2m/s、旗矢羽:10m/s)

【問3(1)①~⑤】
 図17は、設問の時系列図(図15) に、答えを導くうえでヒントとなる情報を私が書き込んだものです。
 この図の瞬間風速を見ると、3時から6時頃にかけて増加傾向にあり、この時間帯に台風が接近していることが分かります。①では、台風の最接近前の風向(8方位)が問われています。そこで、図17の赤色の枠に注目すると、風向はおおむねN(北)とE(東)の中間。すなわち① 北東 となります。

図17 問3 (1) の解答を導くうえでヒントとなる情報
注)設問の図15に番号などを書き込んだもの。

 瞬間風速が断続的に20m/sを超えるようになったのは、図17の青の②の頃。「整数値で答えよ」とされているので、② 5 時頃から、となります
 最大10分間降水量は、図17の緑色の③の値を読み取ります(目盛りはグラフの右側に表示)。「0.5刻みの小数値で答えよ」とされているので、最大10分間降水量は③ 19.5 mmとなります
 最⼤1時間降⽔量は、5時10分から6時10分に観測されています(オレンジ色の矢印)。この時間帯の10分間降水量(目盛りはグラフの右側に表示)の積算は、4.5+7.0+10.5+13.0+19.5+7.0=61.5 (mm) です。「0.5刻みの小数値で答えよ」とされているので、最⼤1時間降⽔量は④ 61.5mmとなります。
 1時間降⽔量61.5mmは、表1(雨の強さと降り方)より、⑤ 非常に激しい雨に該当します。

【問3(1)⑥~⑨】
 風向が大きく変化したのは、図17に灰色の矢印で示すとおり6時30分頃です。「10分刻みで答えよ」とされているので、⑥ 6時30分となります。
 その時の10分間平均風速は、図17の灰色の⑦の値を読み取ります(目盛りはグラフの右側に表示)。「整数値で答えよ」とされているので、10分間平均風速は約⑦ 4 m/sとなります。
 その後、風向は西→南西→南南西へと変化(図17の紫色の枠)。つまり風向は、⑧ 反時計回りに変化しています。また、紫色の矢印部分のとおり、7時50分から3時間近くは、⑨ 南南西の風が続いています。

【問3(1)⑩~⑭】
 豆知識52(図24)で述べたとおり、台風がある地点の右側を進む(=その地点が台風の経路の左側に位置する)場合、風向は反時計回りに変化します。一方、台風がある地点の左側を進む(=その地点が台風の経路の右側に位置する)場合、風向は時計回りに変化します。
 前述のとおり、大牟田では風向が反時計回りに変化しているため、台風は大牟田の右側を通過しています。この台風は北上しています(図13、16)。よって、台風の中心は大牟田の⑩ 東側を通過したとみられます。
 問3(1)⑥⑦で述べたとおり、風向が大きく変わり、10分間平均風速が弱まったのは、6時30分です。よって、台風が大牟田に最も接近した時刻は、⑪ 6時30分です。
 6時30分より前と後で、瞬間風速・10分間降水量・気温を比較します(図17)。その結果、大牟田の風は台風の通過前より通過後の吹き返しのほうが ⑫弱く、雨は通過後のほうが ⑬弱く、気温は通過前のほうがやや ⑭高かった、となります。

【問3(2)】
 台風の中心位置は、気圧が最も低い地点に相当しますが、地上風から推定する場合には、風の回転中心を台風の中心位置とみなします。
 図18は、設問のアメダス実況図(図16) に、答えを導くうえでヒントとなる情報を私が書き込んだものです。
 地上風は地形の影響などを受けるため、風だけから台風の中心位置を正確に決めることは難しい場合があります。そこで図18では、推定される中心位置を赤い円で示しました。なお、8時の図には、5時・6時・7時・8時の中心位置を結んだ推定経路も書き込んでいます。

図18 問3 (2) の解答を導くうえでヒントとなる情報
注)設問の図16に推定される台風の中心位置などを書き込んだもの。

 この図を基に、台風は6時半頃に大牟田の東を通過したこと(問3(1)⑩)に留意しつつ、経路ができるだけジグザグにならないように中心位置を決めると、経路図は以下の解答例(図19)のようになります。

図19  第54回実技2問3 (2)の解答例(気象業務支援センター)

第45回気象予報士試験実技1
 実技1では、XX年7⽉9⽇から11日にかけての⽇本付近における気象について問われました(ちなみにXX年は2014年です)。
 図20は7月9日9時の地上天気図です。実技1問3(4)では、7月10日に鹿児島県阿久根市付近に上陸した台風8号に関して問われました。

図20 地上天気図(XX年7月9日9時(00UTC)) 
注)実線:気圧(hPa) 。矢羽:風向・風速(ノット)(短矢羽:5ノット、長矢羽:10ノット、旗矢羽:50ノット)。図の説明を一部省略している。

図21 第45回実技1問3(4)

図22 阿久根市の気象要素の時系列図   XX年7月9日24時(15UTC)~10日12時(03UTC)
注)矢羽:風向・風速(m/s)(短矢羽:1m/s、長矢羽:2m/s、旗矢羽:10m/s) 。瞬間風速は前10分間の最大値を、平均風速は前10分間の平均値を示す。

【問3(4)①】
 図23は、設問の時系列図(図22) に、答えを導くうえでヒントとなる情報を私が書き込んだものです。
 瞬間風速が最大となった時刻は、図23に赤の矢印で示すとおり1時50分頃です。「10分刻みで答えよ」とされているので、時刻:1時50分となります。
 1時50分の瞬間風速は、赤の矢印の値を読み取ると、約21.9m/s。「1m/s 刻みで答えよ」とされているので、風速:22m/sとなります。
 その時の風向は、青の矢印で示した矢羽根の向きを読み取ると、風向:南となります。
(矢羽根と風向については、豆知識4、豆知識57をご参照ください)
 1時50分の平均風速は約8.9m/sです(緑色の矢印)。瞬間風速の平均風速に対する比は
 瞬間風速÷平均風速=21.9 (m/s)÷8.9 (m/s) ≒ 2.45
または
 瞬間風速÷平均風速=22 (m/s)÷8.9 (m/s) ≒ 2.44
「四捨五入により小数第1位までの数値で答えよ」とされているので
 瞬間風速の平均風速に対する比:2.5 (2.4)となります。

図23 問3 (4) の解答を導くうえでヒントとなる情報
注)設問の図22に番号などを書き込んだもの。

【問3(4)②】
 台風が最も接近した時刻は、最低気圧を観測した時刻であり、図23にオレンジ色の矢印で示すとおり6時40分頃です。「10分刻みで答えよ」とされているので、時刻:6時40分となります。
 最接近の前後で風がどのように変化したかについては、図23の灰色の枠内の矢羽根の向き(風向)、紫色の枠内の平均風速に注目すると、
 風の変化:風向が南より(南南西)から北西(北北西、西北西)へと大きく変化し、風速が最も弱くなった。(気象業務支援センターの解答例)
となります。
 なお、「大きく」変化しの表現がなくても正解と判断される可能性があります。

第41回気象予報士試験実技1
 実技1では、XX年9⽉15⽇から17日にかけての⽇本付近における気象について問われました(ちなみにXX年は2012年です)。
 図24は9月15日9時の地上天気図です。実技1問3(1)では、9月16日に名護(沖縄県)付近を通過した台風16号に関して問われました。

図24 地上天気図(XX年9月15日9時(00UTC)) 
注)実線:気圧(hPa) 。矢羽:風向・風速(ノット)(短矢羽:5ノット、長矢羽:10ノット、旗矢羽:50ノット)。図の説明を一部省略している。

図25 第41回実技1問3(1)

図26 名護の地上観測の時系列図   XX年9月16日0時(15日15UTC)~12時(03UTC)

 図27は、設問の時系列図(図26) に、答えを導くうえでヒントとなる情報を私が書き込んだものです。
 暴風域は風速25m/s以上の範囲です(豆知識51)。図27を見ると、名護では7時前後に風速が急激に低下していますが、これは台風の眼に入ったためと考えられます。「風速は前10分間の平均風速」であることを考慮すると、風速25m/s以上を観測したのは、赤い矢印で示した4時50分から8時00分の3時間10分(≒3.17時間))です。
 「1ノット=1.852km/h」であるため(豆知識58)、20ノットは20×1.852km/hに相当します。
よって、暴風域の範囲(距離)は
 時間×速度=3.17(h)×20×1.852 (km/h) ≒ 117(km)
 設問で問われている暴風域の半径は、117÷2=58.5km
ここで、「1の位を四捨五入して10km刻みの値で求めよ」とされているので、半径は 60km となります。

図27 問3 (1) の解答を導くうえでヒントとなる情報
注)設問の図26に注目する時間帯を書き込んだもの。

第39回気象予報士試験実技2
 実技2では、XX年5⽉28⽇から29日にかけての⽇本付近における気象について問われました(ちなみにXX年は2011年です)。
 図28は5月28日21時の地上天気図です。実技2問3では、5月28日に久米島(沖縄県)付近を通過した台風2号に関して問われました。

図28 地上天気図(XX年5月28日21時(12UTC)) 
注)実線:気圧(hPa) 。矢羽:風向・風速(ノット)(短矢羽:5ノット、長矢羽:10ノット、旗矢羽:50ノット)。

図29 第39回実技2問3

図30 久米島の地上観測値時系列図   XX年5月28日9時(00UTC)~29日9時(00UTC)

【問3(1)】
 図31は、設問の時系列図(図30) に、問3(1)の答えを導くうえでヒントとなる情報を私が書き込んだものです。
 まず、気圧については、台風の中心が通過したと考えられる時刻、及びその前後2時間の値を比較してみます。中心が通過した21:20(図31の赤の矢印)の気圧は954hPaです。通過2時間前の19:20(青の矢印)の気圧は980hPa、通過2時間後の23:20(緑色の矢印)の気圧は997hPaです。
 このことから、通過前の2時間の気圧降下量は26hPa(980-954)であり、通過後の2時間の気圧上昇量は43hPa(997-954)です。
 したがって、通過前と通過後における気圧の下降・上昇の変化の違いについては、
 気圧:通過前の気圧下降よりも通過後の気圧上昇の方が急激である。
(気象業務支援センターの解答例)
となります。
 風速の極大値については、通過前は約22.5m/s(オレンジ色の矢印)、通過後は約26m/s(紫色の矢印)であり、通過後の方が大きくなっています。
 風速20m/s以上の継続時間については、「風速は前10分間の平均風速」であることを考慮すると、通過前は18:40~21:00頃(灰色の矢印)、通過後は21:30~22:30頃(茶色の矢印)であり、通過前の方が長くなっています。
 したがって、通過前と通過後における風速の極大値や20m/s以上の継続時間の違いについては、
 風速:極大値は通過後の方が大きいが、20m/s以上の継続時間は通過前の方が長い。
(気象業務支援センターの解答例)
となります。

図31 問3(1)の解答を導くうえでヒントとなる情報
注)設問の図30に注目する時間帯などを書き込んだもの。

【問3(2)】
 図32は、設問の時系列図(図30) に、問3(2)の答えを導くうえでヒントとなる情報を私が書き込んだものです。
 台風通過前(台風の前面)において、気圧が1000hPaとなった時刻は14:00(図32の赤の矢印)。気圧が最も低下した21:20(青の矢印)頃に台風の中心があると考えられるので、この間の時間(14:00~21:20)は7時間20分(≒7.33時間)となります。
 1時間に1海里進む速さが1ノットであり(豆知識58)、設問で台風の速度は21ノットとされています。
よって、台風の前面における1000hPaの半径(距離)は
 時間×速度=7.33(時間)×21(ノット) ≒ 154(海里)
 ここで、「1の位を四捨五入して10海里刻みの値で答えよ」とされているので、150海里となります。
 台風の前面において、気圧が980hPaとなった時刻は19:20(緑色の矢印)。台風の中心がある21:20(青の矢印)との時間差は2時間。
よって、台風の前面における980hPaの半径は
 時間×速度=2(時間)×21(ノット)= 42(海里)
 1の位を四捨五入して10海里刻みの値で答えると、40海里となります。
 台風通過後(台風の後面)において、気圧が1000hPaとなった時刻は24:20(オレンジ色の矢印)。台風の中心がある21:20(青の矢印)との時間差は3時間。
よって、台風の後面における1000hPaの半径は
 時間×速度=3(時間)×21(ノット)= 63(海里)
 1の位を四捨五入して10海里刻みの値で答えると、60海里となります。
 台風の後面において、気圧が980hPaとなった時刻は22:20(紫色の矢印)。台風の中心がある21:20(青の矢印)との時間差は1時間。
よって、台風の後面における980hPaの半径は
 時間×速度=1(時間)×21(ノット)= 21(海里)
 1の位を四捨五入して10海里刻みの値で答えると、20海里となります。

図32 問3(2)の解答を導くうえでヒントとなる情報
注)設問の図30に注目する時刻を書き込んだもの。

第38回気象予報士試験実技2
 豆知識57で述べたとおり、実技2では、XX年9⽉20⽇から22日にかけての⽇本付近における気象について問われました(XX年は2011年です)。
 図33は9月20日21時の地上天気図です。実技2問5では、9月21日に静岡県浜松市に上陸した台風15号に関して問われました。

図33 地上天気図(XX年9月20日21時(12UTC)) 
注)実線:気圧(hPa) 。矢羽:風向・風速(ノット)(短矢羽:5ノット、長矢羽:10ノット、旗矢羽:50ノット)。図の説明を一部省略している。

図34 第38回実技2問5

図35 地点および湾の位置図

図36 東海地方の2地点の地上風時系列図   XX年9月21日12時(03UTC)~18時(09UTC)
注)矢羽:風向・風速(m/s)(短矢羽:1m/s、長矢羽:2m/s、旗矢羽:10m/s)。

表2 浜松の地上観測値(海面気圧・風) XX年9月21日12時30分(0330UTC)~15時30分(0630UTC)

【問5(1)】
 豆知識52(図24)で述べたとおり、台風がある地点の右側を進む(=その地点が台風の経路の左側に位置する)場合、風向は反時計回りに変化します。一方、台風がある地点の左側を進む(=その地点が台風の経路の右側に位置する)場合、風向は時計回りに変化します。
 図36の矢羽根の向きの時系列変化に注目すると、地点アの風向は時計回りに変化し、地点イの風向は反時計回りに変化しています。
 台風は伊良湖の東側、すなわち右側を進んだので、風向は反時計回りに変化します。よって、伊良湖の地上風はイとなります。
 また、その理由は、
 風向が反時計回りに変化しているため。(気象業務支援センターの解答例)
となります。

【問5(2)①】
 表2において、最も低い海面気圧は949.3hPa。その値を観測した時刻は14時10分です。

【問5(2)②】
 表2において、14時10分の平均風速は19.6m/sです。その時の最大瞬間風速は34.4m/s。
 突風率=最大瞬間風速÷平均風速=34.4 (m/s)÷ 19.6 (m/s) ≒ 1.75
ここで、「小数第2位を四捨五入して小数第1位まで答えよ」とされているので、突風率は 1.8となります。

【問5(2)③】
 表2において、海面気圧が最低となった14時10分に平均風速19.6m/sであった風は、14時20分には平均風速6.9m/sと弱まり、この頃に台風の眼が通過したと考えられます。その後、風向は南西→西南西→西へと変化し、風は再び強まったことから、吹き返しの強い風が吹き始めたと考えられます。
 したがって、風速と風向が大きく変化した理由については、
 台風の眼が通過した後、吹き返しの強い風が吹き始めたため。(気象業務支援センターの解答例)
となります。

さいごに

 今回紹介した地上気象要素の時系列図のうち、図5、図10、図22では、風向は矢羽根で表示されていました。
 風向の表現方法はこれだけではなく、例えば図15のように、縦軸に E、N、W、S を示し、各時刻に対応する風向をプロットして表す場合もあります。
 このほか、 今回紹介した図にはありませんでしたが、風向を北から時計回りの360度方位で表現することもあります。この点については、豆知識4を参照いただけると幸いです。

今回の豆知識で参考にした図書等

●浅井冨雄,内田英治,河村 武 監修(1999)増補 気象の事典,平凡社
●気象業務支援センターのwebサイト
●気象庁のwebサイト
●気象庁(1998)気象観測の手引き(2007年最終改訂),気象庁
●北畠尚子 (2025) 総観気象学 基礎編(改訂版),気象庁
●桑形恒男(1993)大型台風にともなった気象官署の突風率の長期変化,天気40: 91-97
●中島俊夫(2019)イラスト図解 よくわかる気象学 専門知識,ナツメ社
●中島俊夫(2022)イラスト図解 よくわかる気象学 実技編,ナツメ社
●西澤利栄(2005) 気候のフィールド調査法,古今書院
●萩野谷成徳(2015)突風率から推定した地表面粗度の長期変化,天気62: 17-24
●林 里江,安達隆史(2008)近畿地方における突風率の推定法,教育実践学研究13: 31-52
●村上裕季,安達隆史(2008)関東地方における突風率の推定法,教育実践学研究13: 53-83
●毛利茂男(1990)新・気象観測の手引,日本気象協会
●山岸米二郎(1996)風速計の変更と突風率の変化,天気43: 623-626

この記事を書いた人
よほうし5823

気象予報士第5823号。博士(農学)。複雑な天気のしくみを、分かりやすく説明できるようになりたいです。そのために、日々勉強中です。

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