はじめに
前回の豆知識では、台風に伴う高波や高潮を取り上げました。今回は、海上の波の情報が記載された「沿岸波浪図」をテーマとします。
一般の天気図では、波浪をもたらす海上風や高・低気圧(気圧配置)、前線の動向を知ることはできますが、波そのものの情報は示されていません。一方、沿岸波浪図では、日本近海および沿岸海域の波浪の状況を詳しく把握することができます。
なお、波に関しては前回「波高」と「周期」を紹介しました。今回はそれに加えて「波向」についても触れます。波向は風向と密接な関係があるため、まずは風向および風速(豆知識4)について簡単におさらいしておきましょう。
風向と波向
風向・風速(矢羽根表示)
天気図における風の情報は、矢羽根、矢印(ベクトル)、流線などで表示されます(豆知識4)。今回は、沿岸波浪図で用いられる「矢羽根表示」についておさらいします。
図1をご覧ください。これは豆知識4に掲載した図に、一部加筆したものです。赤の矢印は、風が吹いて行く方向(風が進む方向)を示しています。②を例にとると、風は北から南へ吹いています。風向は、「風が吹いて来る方向」を指すため、この場合の風向は「北」となります。
青の矢羽根では、羽が付いている側が風上(風が吹いて来る方向)と決められています。②を例にとると、羽は北向きとなります。このように、赤の矢印(吹いて行く方向)と青の矢羽根(吹いて来る方向)では向きが逆になる点に注意が必要です。
風速の単位はノット(1ノットは、約0.5m/s)であり、5ノットで短い線が1つ(短矢羽根)、10ノットで長い線が1つ(長矢羽根)、50ノットで旗が1つ(旗矢羽根)として記入されます(図1)。

図1 風向・風速の矢羽根表示(豆知識4で用いた図に加筆し再掲載)
注)図の上が北。青が矢羽根表示。赤の矢印は風が進む方向。本図では、天気記号の丸い円の外側に矢羽根(青色)を記入しているが、沿岸波浪図や850hPa風・相当温位図(豆知識19)のように、矢羽根のみが表示される場合もある。
沿岸波浪図における風向と波向
図2をご覧ください。これは、先ほどの図1に波が進む方向(白抜きの矢印)を加筆したものです。②を例にとると、波は北から南に進んでいます。波向とは、「波が来る方向」を指すため、②の波向は「北」となります。

図2 風向・風速の矢羽根表示(青)、風が進む方向(赤の矢印)、波が進む方向(白抜きの矢印)の例(模式図)
注)①~④には風向と波向が一致する例を示すが、実際はうねりの影響などで風向と波向が大きく異なる場合がある(詳細は後述)。
沿岸波浪図(後述)では、風の情報は矢羽根、波の情報は白抜きの矢印で表現されます。このため少し紛らわしいのですが、図2②のように、風向(風が来る方向)と波向(波が来る方向)がともに「北」の場合、
・矢羽根の向き(風が来る方向)は北
・白抜き矢印の向き(波が行く方向)は南
となり、両者の向きが逆になる点に注意が必要です。
沿岸波浪実況図
気象庁が発表する主な沿岸波浪図には、「沿岸波浪実況図(解析図)」と「沿岸波浪24時間予想図」があります。まず「沿岸波浪実況図」を紹介します。図3-1は、2026年9月3日9時の沿岸波浪実況図です。

図3-1 2026年9月3日9時の沿岸波浪実況図(気象庁)
注)オレンジ、緑、青、赤色の枠は、筆者が加筆。
風向・風速、波向、周期
風向・風速、波向については、先ほど述べたとおりです。
波の周期は、白抜き矢印の側に数字で示されます(図3-2)。単位は秒です。実際の海上では、多方向から進んできた大小様々な波が重なり合うことがよくあります。そのような場合、波向や周期は、その海域で最も卓越していると考えられる波の向きや周期を示しています。
図3-2の例では、波向(波が来る方向)は東南東、風向(風が来る方向)も東南東、風速は35ノット、周期は9秒を表しています。

図3-2 図3-1のオレンジ色の枠内を拡大したもの
波の高さ(波高)
波高は、等波高線による分布で表示されます(図3-3)。等波高線は、1メートルごとに実線で示され(①)、この実線は4メートルごとに太線になります(②)。さらに、4メートル未満の領域については、0.5メートルごとの補助線が表示されます(③)。
なお、波浪図に表示される波の高さは「有義波高」(豆知識56)です。 実際の個々の波は、有義波高より高い波が含まれるため注意が必要です。

図3-3 図3-1の緑色の枠内を拡大したもの
注)一部、筆者が加筆。
沿岸代表点の位置と推定値
沿岸波浪図実況図では、波浪の分布状況に加え、全国の沿岸を代表する32地点(沿岸代表点)の波や風の値が推定値として記載されています。沿岸代表点の位置は、A~Z、a〜fのアルファベットで示されています(図3-4)。

図3-4 図3-1の青色の枠内を拡大したもの
注)一部、筆者が加筆。
波や風の推定値は、図の左側中段の「WAVE ANALYSYS」表に示されています。
・”WAVE“の列には、波向(方位)・周期(秒)・波高(メートル)
・”WIND“の列には、風向(方位)・風速(ノット)
が示されています。波高(波の高さ)は、有義波高で示され、風が弱い場合には、”WIND”列に”CALM” と記載されます。
図3-5の例では、”A”地点の波向が北北東、周期9秒、波高0.8メートル、南東の風6ノットと推定されることを表しています。

図3-5 図3-1の赤色の枠内を拡大したもの
沿岸波浪24時間予想図
次に「沿岸波浪24時間予想図」を紹介します。沿岸波浪24時間予想図は、1日2回、日本時間の午前9時と午後9時の観測値を基に、それぞれ24時間後の予想図を作成して配信されます。
図4-1は、2026年9月13日9時の沿岸波浪予想図です。

図4-1 2026年9月13日9時の沿岸波浪予想図(気象庁)
注)9月12日9時の観測値を基にした24時間後の予想図。赤、紫色の枠は筆者が加筆。
風向・風速、波向、周期、波高
これらの表示方法は、先ほどの実況図と同じです。
沿岸代表点の位置と予想値
実況図と同じ沿岸代表点について、波や風の予想値が記載されています。
これらの予想値は、図の左側中段にある「WAVE FORECAST」表に表示されています。図4-2の例では”A”地点の波向は北北西、周期2秒、波高0.2メートル、南南東の風3ノットと予想されることを示しています。

図4-2 図4-1の赤色の枠内を拡大したもの
流れで波が険しくなる海域
沿岸波浪予想図には、波高が1.0m以上で、波と逆向きの流れによって波高が5%以上増大する海域を縦線でマークしています(図4-3)。
波は海流・潮流の影響を受けます。波と逆向きの流れがある海域では、波高が増大するだけでなく、波の変化が急で険しくなり、船の揺れが大きくなります。

図4-3 図4-1の紫色の枠内を拡大したもの
注)一部、筆者が加筆。
過去の気象予報士の試験問題
過去の気象予報士試験において、「沿岸波浪実況図」「沿岸波浪24時間予想図」などに関する問題が出された例を、以下に紹介します。
第58回気象予報士試験実技2
実技2では、XX年11⽉17⽇から11月18日頃にかけての⽇本付近における気象について問われました(ちなみに、XX年は2019年です)。この期間、低気圧が日本海を発達しながら北東進しました。
図5は11月17日21時の地上天気図です。図6は11月18日9時を対象とした地上気圧・降水量・風の予想図です。(地上気圧・降水量・風の予想図の詳細は、豆知識33で紹介しています)
実技2問3では、この頃の波高の予想と実況などについて問われました。

図5 地上天気図(XX年11月17日21時(12UTC))
注)実線・破線:気圧(hPa) 。矢羽:風向・風速(ノット)(短矢羽:5ノット、長矢羽:10ノット、旗矢羽:50ノット)。今回の豆知識のテーマに絞るため、実際の図の一部を省略している。

図6 地上気圧・降水量・風 12時間予想図(初期時刻 XX年11月17日21時(12UTC))
注)実線:気圧(hPa)、破線:予想時刻前12時間降水量(mm)。矢羽:風向・風速(ノット)(短矢羽:5ノット,長矢羽:10ノット,旗矢羽:50ノット)。今回の豆知識のテーマに絞るため、実際の図の一部を省略している。


図7 第58回実技2問3

図8 ブレットシュナイダーの風浪の関係式に基づく風浪推算の図
注)横軸:吹走距離(海里)、縦軸:風速(ノット)。青の実線:波高(m)、赤の破線:周期(s)、緑の破線:吹続時間(h)。

図9 沿岸波浪24時間予想図(初期時刻 XX年11月17日21時(12UTC))
注)矢羽:風向・風速(ノット)(短矢羽:5ノット、長矢羽:10ノット、旗矢羽:50ノット)。実線および破線:波高(m)、白抜き矢印:卓越波向(矢印が示す方向へ波が進む)、数字(細):卓越波の周期(s)。網掛け域:海流で波が変形し険しくなった領域。
【問3(1)①】
図10は、設問の風浪推算図(図8) に、答えを導くうえでヒントとなる情報を、私が書き込んだものです。風速(34ノット)と吹続時間(12時間、24時間)の交点(オレンジ色の丸印)から、それぞれの波高を読み取ります。
そうすると解答は、
12時間後:4.2m
24時間後:5.5m (気象業務支援センターの解答例では5.6mも可)
となります。

図10 問3(1)①の解答を導くうえでヒントとなる情報
注)設問の図8に、風速(34ノット)と吹続時間(12時間、24時間)の交点などを書き込んだもの。
【問3(1)②】
図11をご覧ください。風速(34ノット、48ノット)と波高(6m)の交点(オレンジ色の丸印)を通る吹走時間を、それぞれ読み取ります。
そうすると解答は、
34ノットの風:30時間 (気象業務支援センターの解答例では31時間も可)
48ノットの風:8時間 (気象業務支援センターの解答例では9時間も可)
となります。

図11 問3(1)②の解答を導くうえでヒントとなる情報
注)設問の図8に、風速(34ノット、48ノット)と波高(6m)の交点などを書き込んだもの。
【問3(2)①】
図9に示された矢羽根(図9の注釈や豆知識4参照)から、アとイの風速を読み取ると、それぞれ20ノット、25ノットとなります。次に図12をご覧ください。風速(20ノット、25ノット)と吹続時間(12時間)の交点(オレンジ色の丸印)から、それぞれの波高を読み取ります。
そうすると解答は、
地点ア:1.8m
地点イ:2.6m
となります。

図12 問3(2)①の解答を導くうえでヒントとなる情報
注)設問の図8に、風速(20ノット、25ノット)と吹続時間(12時間)の交点などを書き込んだもの。
【問3(2)②】
設問の風浪推算図(図9)の実線および破線から設問の地点の波高を読み取ると、地点アが3.3m、地点イが2.5mとなります。前述のとおり、問3(2)①での波高の推算値は、地点アが1.8m、地点イが2.6mでした。よって、地点アの方がその差は大きいです。
この理由として、図6を見ると、地点イでは18日9時までは風はまだ弱い一方で、地点アでは18日9時の時点で北よりの風が強まると予想されおり、地点アの吹続時間ほうが地点イのそれより長い点が考えられます。
つまり解答は、
地点:ア
理由:地点イでは18日9時まで風が弱く、地点アではそれ以前に北北西(北)の風が吹き出すと予想
されるため。(気象業務支援センターの解答例)
となります。
【問3(3)①】
豆知識6で述べたとおり、緯度10度あたりの距離は、約1110kmであると同時に、600海里に相当します。よって、北緯35~40度の距離は300海里となります。これを念頭に、問題を解いてみましょう。
図13をご覧ください。地点ウでは西の風が吹いており、その西側には三陸海岸があります。よって、吹走距離は三陸海岸までの距離を計算することになります。図上において2地点間の長さを実測した場合、北緯35~40度の長さが39mm、地点ウから三陸海岸までの長さが8mmであったとします。
北緯35~40度(図上で39mm)の実際の距離は300海里であることから、地点ウ~三陸海岸(図上で8mm)の実際の距離は、300海里×8mm/39mm=約62海里となります。設問では「10海里刻みで答えよ」とされているので
解答は、
60海里(気象業務支援センターの解答例では50海里、70海里も可)
となります。

図13 問3(3)①の解答を導くうえでヒントとなる情報
注)設問の図9の拡大図に、地点ウからその風上に位置する沿岸まで距離などを書き込んだもの。
【問3(3)②】
図9において、地点ウの風速(矢羽根)は25ノットです。次に図14をご覧ください。風速(25ノット)と吹走距離(60海里)の交点(オレンジ色の丸印)を通る波高を読み取ると約2.2mとなります。設問では「0.1m刻みで答えよ」とされているので
解答は、
2.2m(気象業務支援センターの解答例では2.1m、2.3m、2.4mも可)
となります。

図14 問3(2)②の解答を導くうえでヒントとなる情報
注)設問の図8に、風速(25ノット)と吹続時間(60海里)の交点などを書き込んだもの。
第49回気象予報士試験実技1

図15 第49回実技1問5(2)

図16 沿岸波浪実況図(XX年1月24日21時12UTC)
【問5(2)①】
風向・風速、波向については図2と図3-2、周期については図3-2、波高については図3-3をそれぞれ用いて、読み取り方を述べました。
これらを踏まえると、問5(2)①の解答は、風向が北西、風速が30ノット、波高は整数値で示すよう指示されているため6m、卓越周期は9秒、卓越波向は風向よりやや北寄りとなっているため北北西となります。
【問5(2)②】
豆知識56で述べたとおり、風が強いほど、長く吹き続けるほど、風が吹く距離が長いほど波は高くなります。
本設問の場合、地点ア、地点イともに北西風30ノットであり、イはアよりも風下側になり、風が吹いている水平距離(吹走距離)が長くなります。
よって解答は、
イの方が海上での風の吹走距離が長いため。(気象業務支援センターの解答例)
となります。
第43回気象予報士試験実技1

図17 第43回実技1問5(3)
豆知識56で述べたとおり、吸い上げ効果によって、気圧が1 hPa下がると海面は約1 cm上昇します。
本設問では、標準気圧が1013hPa、苫小牧の気圧が963hPaとされているので、その差は50hPa。1 hPa下がると1 cm上昇するので、吸い上げ効果は50cmとなります。
苫小牧の潮位偏差が150cmとあるので、吹き寄せ効果は150cmと50cmの差、すなわち100cmとなります。
次に気圧が973hPa、風速が26m/sとしたときに推定される潮位偏差を考えます。
まず、吸い上げ効果については、1013hPa(標準気圧)-973hPa=40hPaであるので、40cmとなります。
次に、吹き寄せ効果です。豆知識56で述べたとおり、吹き寄せ効果による海面上昇は、風速の2乗に比例します。前述のとおり風速20m/sで吹き寄せ効果が100cmであったことを考慮すると、
吹き寄せ効果については、100cm×(26m/s)2/(20m/s)2=169cmとなります。
以上のことから、潮位偏差については、吸い上げ効果+吹き寄せ効果=40cm+169cm=209cmとなります。設問では「10cm刻みで答えよ」とされているので、解答は210cmとなります。
第41回気象予報士試験実技2
実技2では、XX年2⽉11⽇から13日にかけての⽇本付近における気象について問われました(ちなみに、XX年は2011年です)。
図18は2月11日21時の地上天気図です。図19、図20、図21はそれぞれ2月12日9時、12日21時、13日9時を対象とした地上気圧・降水量・風の予想図です。
実技2問5では、この頃の沿岸波浪予想図に関して問われました。

図18 地上天気図(XX年2月11日21時(12UTC))
注)実線:気圧(hPa) 。矢羽:風向・風速(ノット)(短矢羽:5ノット、長矢羽:10ノット、旗矢羽:50ノット)。

図19 地上気圧・降水量・風 12時間予想図(初期時刻 XX年2月11日21時(12UTC))
注)実線:気圧(hPa)、破線:予想時刻前12時間降水量(mm)。矢羽:風向・風速(ノット)(短矢羽:5ノット,長矢羽:10ノット,旗矢羽:50ノット)。今回の豆知識のテーマに絞るため、実際の図の一部を省略している。

図20 地上気圧・降水量・風 24時間予想図(初期時刻 XX年2月11日21時(12UTC))
注)図の注釈は図19を参照。

図21 地上気圧・降水量・風 36時間予想図(初期時刻 XX年2月11日21時(12UTC))
注)図の注釈は図19を参照。

図22 第41回実技2問5



図23 沿岸波浪12・24・36時間予想図(初期時刻 XX年2月11日21時(12UTC))
注)T=で示す数値は予想時間。×印で示す網掛け域:海氷域。
【問5(1)】
図23(T=12)の点Pの卓越波向(波が進んでくる方向)は、白抜き矢印が進んでくる方向なので、8方位では北東となります。他の時刻の卓越波向についても図23から読み取ると、T=24では北東、T=36では西となります。
図23(T=12)の点Pの波高については、2mの等波高線が点Pの近くにあり、「最も近い整数値で述べよ」とされているので、2mとなります。他の時刻の波高についても図23から読み取ると、T=24では5m、T=36では6mとなります。
よって解答(気象業務支援センターの解答例)は、
12時間後~24時間後:卓越波向は北東で変化がないが、波高は2mから5mに高まる。
24時間後~36時間後:卓越波向は北東から西に変化し、波高は5mから6mに高まる。
となります。
【問5(2)】
図19の12時間予想図において低気圧(L)は三陸沖にあり、点P付近では25ノットの北東風が吹いています。図23(T=12)の点P付近の風も、北東風(25ノット)です。
図20の24時間予想図では、低気圧は北海道南東海上に進み(点Pに接近し)、点P付近では35ノットの北東風が吹いています。図23(T=24)の点P付近の風は、北東風(25ノット)です。
図21の36時間予想図では、低気圧は点P付近を通過して北海道東海上に進み、点P付近では45ノットの西が吹いています。その近くには北西風50ノットの地点もあります。図23(T=36)の点P付近の風は、西風(50ノット)です。
よって解答(気象業務支援センターの解答例)は、
12時間後~24時間後:低気圧が接近し、25~35ノットの北東風が持続するため。
24時間後~36時間後:低気圧が通過し、風向が北東から西に変化して最大50ノットの暴風が吹くた
め。
となります。
第39回気象予報士試験実技1
実技1では、XX年12⽉3⽇から4日にかけての⽇本付近を発達しながら北東進した低気圧について問われました(ちなみに、XX年は2011年です)。
図24は12月3日9時の地上天気図です。
実技1問5(1)では、その24時間後の沿岸波浪予想図に関して問われました。

図24 地上天気図(XX年12月3日9時(00UTC))
注)実線:気圧(hPa) 。矢羽:風向・風速(ノット)(短矢羽:5ノット、長矢羽:10ノット、旗矢羽:50ノット)。

図25 第39回実技1問5(1)

図26 沿岸波浪24時間予想図(初期時刻 XX年12月3日9時(00UTC))
【問5(1)①】
図4-1、図4-2を用いて述べたとおり、沿岸波浪24時間予想図では、左上の表に沿岸代表点の波や風の値を予想値として記載しています。
よって、図26の沿岸波浪予想図の表からB点で予想される値を読み取ると、波高は4.3m、卓越波向は南東、卓越周期は10秒となります。
【問5(1)②】
図26の沿岸波浪予想図の表を見ると、A点の卓越周期は6秒です。このため、卓越周期が長い点は、Bです。その原因は、低気圧によって生じた波浪が伝播して波長、周期が長くなった「うねり」によるものです。
よって解答は、
原因:うねりがある(気象業務支援センターの解答例)
となります。
第38回気象予報士試験実技2
実技2では、XX年9⽉20⽇から22日にかけての⽇本に接近・上陸した台風について問われました(ちなみに、XX年は2011年です)。
図27は9月20日21時の地上天気図です。
実技2問6(2)では、その24時間後の沿岸波浪予想図に関して問われました。

図27 地上天気図(XX年9月20日21時(12UTC))
注)実線:気圧(hPa) 。矢羽:風向・風速(ノット)(短矢羽:5ノット、長矢羽:10ノット、旗矢羽:50ノット)。今回の豆知識のテーマに絞るため、実際の図の一部を省略している。

図28 第38回実技2問6(2)

図29 沿岸波浪24時間予想図(初期時刻 XX年9月20日21時(12UTC))
【問6(2)①】
豆知識56で述べたとおり、しけの程度は波の高さによって区分され、4mをこえ6mまでが「しけ」、6mをこえ9mまでが「大しけ」、9mをこえると「猛烈なしけ」とされています。
図29の沿岸波浪予想図における等波高線を見ると、関東海域には8mをこえ、9m未満のエリアが確認できます。また、日本海中部には4mをこえ、5m未満のエリアが広がっています。すなわち、最大の波高から海域の状態を表す表現としては、関東海域が「大しけ」、日本海中部が「しけ」となります。
よって解答は、
関東海域:ウ
日本海中部:イ
となります。
【問6(2)②】
図29の沿岸波浪予想図で、8mをこえる波高が予想されている関東海域での波の周期は16秒です。その特徴は周期が長いことです。
【問6(2)③】
関東海域での波の周期が16秒と長いのは、台風によって生じた波浪が伝播して波長、周期が長くなった「うねり」によるものです。
よって解答は、
うねりがある(気象業務支援センターの解答例)
となります。
なお、台風に伴う「うねり」については、豆知識56の「風浪、うねり、波浪」の項目をご参照ください。
第36回気象予報士試験実技2
実技2では、XX年12⽉2⽇から3日頃にかけて⽇本付近を発達しながら北東に進んだ低気圧について問われました
図30は12月2日21時の地上天気図です。
実技2問5では、2日21時の波浪の実況図、及びその12時間、36時間後の予想図に関して問われました。

図30 地上天気図(XX年12月2日21時(12UTC))
注)実線:気圧(hPa) 。矢羽:風向・風速(ノット)(短矢羽:5ノット、長矢羽:10ノット、旗矢羽:50ノット)。

図31 第36回実技2問5

図32 波浪実況図(XX年12月2日21時(12UTC))

図33 波浪12時間予想図(初期時刻 XX年12月2日21時(12UTC))

図34 波浪36時間予想図(初期時刻 XX年12月2日21時(12UTC))
【問5(1)】
12時間予想図(図33)のA点(秋田県沿岸)とB点(岩手県沿岸)に注目します。初期時刻(図32)では、両点とも約20ノットの南南東の風が吹いており、波高はA点で0.5~1m、B点で1~1.5mと大差はありません。しかし、12時間予想図(図33)では、両点とも35ノットの南東風が予想されているのに対し、波高はA点が約1.5m、B点が約4mと大きく異なっています。
豆知識56で述べたとおり、風が吹く距離(吹走距離)が長いほど波は高くなります。そこで、両点の風上側の海域に注目すると、A点の南東側は陸地が近いため、吹走距離が短くなっています。一方、B点の南東側では広い海域にわたって南東風が吹くため、吹走距離が長くなっています。
したがって、B点ではA点よりも吹走距離が長く、波が発達するため、波高が高くなると予想されます。
よって解答は、
両点とも初期時刻から12時間後にかけて南東の風が吹いているが、B点の方が吹走距離が長いため波
高が高くなる。(気象業務支援センターの解答例)
となります。
【問5(2)①】
12時間予想図(図33)のCのマークのすぐ南に着目すると、風向は南西であるのに対して、波向(波が進んでくる方向)は東南東であり、両者はほぼ直角で大きな違いがあります。枠内の他の点を見ても、風向と波向に大きな角度の差があることが確認できます。
よって解答は、
風向と波向が大きな角度で交差している。(気象業務支援センターの解答例)
となります。
【問5(2)②】
36時間予想図(図34)のCのマークのすぐ南では、風向は西北西、波向も西北西となっています。他の点では、風向が西北西、波向が西となっているなど、少しずれているところもありますが、両者は概ね一致しています。
よって解答は、
風向と波向がほぼ同じになっている。(気象業務支援センターの解答例)
となります。
【問5(2)③】
12時間予想図(図33)を見ると、枠で囲った海域Cでは、枠内の中央~東側の関東南海上で風向が南寄り、枠内の西側の紀伊半島南海上で西となっており、前線の通過に伴って風向が変化することを示唆しています。その後、36時間後(図34)には、海域C全体で風向が西~北西となることが予想されています。
つまり、12時間後以降36時間後にかけて、同じ西~北西の風が吹き続けることにより波が成長し、波向が風向と同じ方向になっていくと考えられます。
よって解答は、
風向が変化してから波が成長して波高が風向と同じになるには吹走時間が必要である。(気象業務支
援センターの解答例)
となります。
第33回気象予報士試験実技2
実技2では、XX年2⽉2⽇から3日にかけて、日本の南海上を東北東進した低気圧について問われました。
図35は2月2日9時の地上天気図です。図36は2月3日9時を対象とした地上気圧・降水量・風の予想図です。
実技2問3(3)では、2月3日9時を対象とした沿岸波浪予想図に関して問われました。

図35 地上天気図(XX年2月2日9時(00UTC))
注)実線:気圧(hPa) 。矢羽:風向・風速(ノット)(短矢羽:5ノット、長矢羽:10ノット、旗矢羽:50ノット)。

図36 地上気圧・降水量・風 24時間予想図(初期時刻 XX年2月2日9時(00UTC))
注)実線:気圧(hPa)、破線:予想時刻前12時間降水量(mm)。矢羽:風向・風速(ノット)(短矢羽:5ノット,長矢羽:10ノット,旗矢羽:50ノット)。今回の豆知識のテーマに絞るため、実際の図の一部を省略している。

図37 第33回実技2問3(3)

図38 沿岸波浪24時間予想図(初期時刻 XX年2月2日9時(00UTC))
【問3(3)①】
図38を見ると、点Xは3mの等波高線上にあるので、波高は3mです。卓越周期については、点Xの右上に示された数値を読み取り、7秒となります。また、白抜き矢印から卓越波向(波が進んで来る方向)を読み取ると、南南西となります。
【問3(3)②】
図38を見ると、点Xでは、風向と卓越波向がともに南南西であり、点Yでは、風向が南西、卓越波向が南南西です。
したがって、両地点に共通して、風向と卓越波向がほぼ同じであるといえます。
よって解答は、
風向と卓越波向がほぼ同じである。(気象業務支援センターの解答例)
となります。
【問3(3)④】
図38の波高の極大域(点X、Y付近)と、図36の低気圧の中心の位置を比較すると、波高の極大域は、低気圧の中心の南側に位置していることが分かります。
したがって、解答は、低気圧の中心の南側となります。
第30回気象予報士試験実技1
実技1では、XX年12⽉28⽇から30日にかけて発達する二つ玉低気圧(豆知識31)について問われました。
図39は12月28日21時の地上天気図です。図40、図41、図42はそれぞれ12月29日9時、29日21時、30日21時を対象とした地上気圧・降水量・風の予想図です。
実技1問5では、12月30日9時の沿岸波浪実況図に関して問われました。

図39 地上天気図(XX年12月28日21時(12UTC))
注)実線:気圧(hPa) 。矢羽:風向・風速(ノット)(短矢羽:5ノット、長矢羽:10ノット、旗矢羽:50ノット)。

図40 地上気圧・降水量・風 12時間予想図(初期時刻 XX年12月28日21時(12UTC))
注)実線:気圧(hPa)、破線:予想時刻前12時間降水量(mm)。矢羽:風向・風速(ノット)(短矢羽:5ノット,長矢羽:10ノット,旗矢羽:50ノット)。今回の豆知識のテーマに絞るため、実際の図の一部を省略している。

図41 地上気圧・降水量・風 24時間予想図(初期時刻 XX年12月28日21時(12UTC))
注)図の注釈は図40を参照。

図42 地上気圧・降水量・風 48時間予想図(初期時刻 XX年12月28日21時(12UTC))
注)図の注釈は図40を参照。

図43 第30回実技1問5

図44 沿岸波浪実況図(XX年12月30日9時(00UTC))
【問5(1)】
図44から、三陸沖のJと日本海中部のKについて、風向、波高、卓越周期、卓越波向を読み取ります。設問の指示に従って風向と卓越波向は16方位、波高は0.5m刻み、卓越周期は1秒刻みで答えます。
まず、三陸沖のJについて、風向は矢羽根から読み取り、西南西となります。波高は2.5mの等波高線に近いので2.5mです。卓越周期は、J付近に記載された数値から10秒です。また、白抜き矢印から卓越波向(波が進んで来る方向)を読み取ると、南東となります。
日本海中部のKについても図から読み取ると、風向が西、波高は5.0m、卓越周期は10秒、卓越波向は西北西となります。
【問5(2)】
問5(1)で読み取ったように、Jの風向は西南西、卓越波向は南東であり、Kの風向は西、卓越波向は西北西です。したがって、風向と卓越波向が互いに大きく異なっている地点は、Jです。
図41(29日21時)と図42(30日21時)を見ると、太平洋沿岸を低気圧が発達しながら北上しています。図41(29日21時)から、地点Jでは、29日21時頃までは南または南東の風が卓越していたとみられます。図40(29日9時)を加味すると、低気圧は東北地方の沿岸を北上したとみられるため、30ノット以上の南東風が29日9時~21時頃に吹き続けたと考えられます。このため、Jでは南東風によって生じた波が、30日9時の卓越波向(図44)に影響を及ぼしたと考えられます。
ここで風向に関しては、30日9時の時点では低気圧や前線がすでに地点Jを通過したとみられ、風向は西南西に変化しています(図44)。しかし、低気圧や前線の通過前に南東風によって生じた波は、風向が変化した後もすぐには消滅せず、南東からのうねりとしてJに到達したと考えられます。
よって、図44(30日9時)のJの風向と卓越波向が互いに大きく異なった理由に対する解答は、
低気圧が通過するまでの強い南東風による南東の波向のうねりが卓越しているが、風向は低気圧(前
線)の通過により西寄りに変わったため。(気象業務支援センターの解答例)
となります。
なお、豆知識56で「うねりは、波長が100m以上、周期が8秒以上のものが多いとされています」と述べました。図44(30日9時)のJの卓越周期は10秒であり、この、うねりの条件に当てはまります。
さいごに
豆知識4で「風向とは、風の吹いて行く方向ではなく、風が吹いて来る方向をいう」「それは風の性質が、行く方向ではなく、来る方向によって決まるからである」「例えば、冬に肌を刺すような冷たい北風は、寒い北(ユーラシア大陸)から吹いて来る」ことを述べました。
今回の豆知識で述べたように、波向も、波が行く(進む)方向ではなく、波が来る方向を指します。波がその場の風だけで発生するのであれば、風向と波向は常に一致するのかもしれません。しかし実際には、遠方から伝わってくるうねりの影響などによって、風向と波向が大きく異なる場合があります。
沿岸波浪図の沿岸代表点で、このような「不一致」が見られた場合には、波向、すなわち波が来る方向に、うねりを引き起こすような気象現象がなかったか、他の天気図と照らし合わせて考えてみるのも興味深いでしょう。そうすることで、沿岸波浪図に描かれた波の情報を、より深く読み解くことができると思います。
今回の豆知識で参考にした図書等
●浅井冨雄,内田英治,河村 武 監修(1999)増補 気象の事典,平凡社
●気象業務支援センターのwebサイト
●気象庁のwebサイト
●気象庁(2026)第1章 基礎編1.7.12 波浪モデル(全球・沿岸),令和7年度数値予報解説資料集(数値予報課),気象庁情報基盤部,173-184
●気象庁(2026)波浪予測の概要と高波事例の検証,各分野別資料集(波浪予測・高潮予測),気象庁大気海洋部 環境・海洋気象課海洋気象情報室
●下山紀夫(2023) 気象予報のための天気図のみかた(増補改訂新装版),東京堂出版
●杉本悟史,近澤昌寿(2008)気象庁沿岸波浪観測に基づく日本沿岸の波浪特性の調査,測候時報75特別号: S77-S95
●高野洋雄(2011)有義波法による波浪推算-現業での利用を目的として-,測候時報78: 185-201
●高野洋雄,山根彩子(2018)「航行に危険な荒れた海域情報」の波浪予想図への追加,測候時報85: 1-12
●中島俊夫(2019)イラスト図解 よくわかる気象学 専門知識,ナツメ社
●峯松宏明(2009)気象庁で現業運用している波浪モデル,天気56: 669-674
●吉田久美,三浦大輔,高野洋雄(2012)沿岸波浪モデルの統計的検証と改善について,測候時報79特別号: S73-S82

