【豆知識58】台風の移動距離・速度の計算方法|1海里は1.852km、1ノットは0.514m/sです

はじめに

 台風関連のお話をした豆知識51~56のうち、豆知識56では台風に伴う高波・高潮を取り上げました。その流れで豆知識57では沿岸波浪図をテーマとしました。今回からは、再び台風の話題に戻ります。
 豆知識51では「台風の暴風域と強風域」「台風の大きさと強さ」などを取り上げました。今回の豆知識では、気象予報士の実技試験問題で用いられる「アジア太平洋域 地上天気図」(豆知識25)においてこれらの台風情報を読み取る方法を中心にお話しします。
 「アジア太平洋域 地上天気図」では、距離の単位として「海里」、速度の単位として「ノット」が用いられます。そこで海里(豆知識6)とノット(豆知識4)について、最初に簡単におさらいしておきましょう。

距離の単位「海里」と速度の単位「ノット」

距離の単位「海里」

 歴史的には「地球の緯度1分の弧の長さ≒ 1海里」という考え方から海里が生まれました(緯度1度=60分)。ただし地球は完全な球体ではないため、厳密には、緯度10度相当の距離は緯度によってわずかに異なります。
 現在、国際海里は地球の形状とは無関係に「距離(長さ)の単位」として「1海里=1.852km」と定義されています(図1上)。
 なお、豆知識6で述べたとおり地球の一周の長さは4万kmなので、緯度1度あたりの距離は約111km(40,000÷360)となります。よって、図2の関係性が成り立ちます。ここで、図2を見ると、天気図上での長さは、赤の幅 > 緑の幅 > 青の幅、の順になっています。これは、球体である地球と平面である天気図の違いによるものです(豆知識6)。天気図上で長さを実測し、台風の移動距離や台風の大きさを推定するような場合は、この点に注意が必要です(後述)。

図1  距離の単位「海里」と速度の単位「ノット」

図2  気象庁の地上実況天気図(2024年5月19日9時、特定の2地点間に距離を加筆)
注)豆知識6で用いた図に加筆。緯度10度相当の距離は緯度によってわずかに異なるが、ここでは一律に1110kmと表示した。

速度の単位「ノット」

 豆知識4で述べたとおり、1時間に1海里 (1.852km) 進む速さが1ノット(kt)であるので、
①ノット表示と時速表示との間には「1ノット=1.852km/h」の関係が成り立ちます(図1下)。
また、3600秒で1852m進む速さが1ノットなので、
②ノット表示と秒速表示との間には「1ノット=0.514m/s」の関係が成り立ちます(図1下)。

実技試験で対象となった台風

 今回紹介する気象予報士の実技試験で対象となった台風は、2016年の台風16号(第63回実技2)、2018年の台風6号(第60回実技2)、2015年の台風15号(第54回実技2)、2015年の台風17号、18号(第52回実技1)です。
 そこで試験問題を解く前に、これらの台風が日本に接近・上陸した頃の地上天気図を紹介します。
 気象庁が作成する代表的な地上天気図として、「日本周辺域 地上天気図」(豆知識24)と「アジア太平洋域 地上天気図」(豆知識25)があります。気象予報士試験で用いられるのは「アジア太平洋域 地上天気図」の方ですが、今回は比較のため両方の図を取り上げます。

2016年の台風16号

 2016年9月19日に台風16号が九州に接近し、9月20日には鹿児島県に上陸しました。2016年9月19日21時の台風の位置を、図3(日本周辺域 地上天気図)と図4(アジア太平洋域 地上天気図)に示します。

図3 日本周辺域 地上天気図に描かれた2016年の台風16号
注)2016年9月19日21時の天気図(気象庁)。注目する台風に矢印を記入した。   

図4 アジア太平洋域 地上天気図に描かれた2016年の台風16号
注)2016年9月19日21時の天気図(気象庁の天気図の一部を拡大)。注目する台風に矢印を記入した。

2018年の台風6号

 2018年6月15日に台風6号が発生し、6月16日には沖縄本島付近を通過しました。2018年6月15日21時の台風の位置を、図5(日本周辺域 地上天気図)と図6(アジア太平洋域 地上天気図)に示します。

図5 日本周辺域 地上天気図に描かれた2018年の台風6号
注)2018年6月15日21時の天気図(気象庁)。注目する台風に矢印を記入した。   

図6 アジア太平洋域 地上天気図に描かれた2018年の台風6号
注)2018年6月15日21時の天気図(気象庁の天気図の一部を拡大)。注目する台風に矢印を記入した。

2015年の台風15号

 2015年8月24日に台風15号が九州に接近し、8月25日には九州に上陸、縦断しました。2015年8月24日21時の台風の位置を、図7(日本周辺域 地上天気図)と図8(アジア太平洋域 地上天気図)に示します。

図7 日本周辺域 地上天気図に描かれた2015年の台風15号
注)2015年8月24日21時の天気図(気象庁)。注目する台風に矢印を記入した。   

図8 アジア太平洋域 地上天気図に描かれた2015年の台風15号
注)2015年8月24日21時の天気図(気象庁の天気図の一部を拡大)。注目する台風に矢印を記入した。

2015年の台風17号、18号

 2015年9月9日に台風18号が愛知県に上陸しました。同じ9月9日に南鳥島の北には台風17号があり、北西に進みました。2015年9月9日9時のそれぞれの台風の位置を、図9(日本周辺域 地上天気図)と図10(アジア太平洋域 地上天気図)に示します。

図9 日本周辺域 地上天気図に描かれた2015年の台風17、18号
注)2015年9月9日9時の天気図(気象庁)。注目する台風に矢印を記入した。   

図10 アジア太平洋域 地上天気図に描かれた2015年の台風17、18号
注)2015年9月9日9時の天気図(気象庁の天気図の一部を拡大)。注目する台風に矢印を記入した。

過去の気象予報士の試験問題

 過去の気象予報士試験(実技試験)の中から、「アジア太平洋域 地上天気図」において「台風の暴風域と強風域」「台風の大きさと強さ」などの情報を読み取る問題が出された例を中心に、以下に紹介します。

第63回気象予報士試験実技2

 実技2では、XX年9⽉19⽇から20日にかけての⽇本付近における気象について問われました(ちなみに、XX年は2016年です)。
 図11は9月19日21時の地上天気図です。実技2問1(1)(①~⑥)では、この時刻に九州へ接近していた台風16号に関して問われました。

図11 地上天気図(XX年9月19日21時(12UTC)) 
注)実線、破線:気圧(hPa) 。四国の南から東海地方にかけての太実線:前線記号を省略した停滞前線の一部。矢羽:風向・風速(ノット)(短矢羽:5ノット、長矢羽:10ノット、旗矢羽:50ノット)。左下は台風周辺の拡大図(縮尺は2倍)。鹿児島は黒点で示し、等圧線は980hPa以上を表示している。図の中央から右上にかけての四角枠やA、B、Cの表示は今回の豆知識では対象としない。また、今回の図11では実際の図の一部を省略している。

図12 第63回実技2問1(1)

【問1(1)①】
 図13は、設問の地上天気図(図11) に、答えを導くうえでヒントとなる情報を、私が書き込んだものです。
 豆知識51で述べたとおり、台風の大きさは風速15m/s以上の半径で区分されます。ただし、方向によって半径が異なる場合はその平均値で決められます。
 図1のとおり「1ノット=0.514m/s」であるため、風速15m/sは約30ノットに相当します。風速15m/s以上の領域は、図13 ①の赤の枠内のOVER 30KT(約15m/s以上)を見ると、北西側180海里(NM)、他は140海里なので、その平均値は160海里です。図1のとおり「1海里=1.852km」であるため、160海里は296kmです。
 風速15m/s以上の半径が500km未満の台風の大きさは「表現しない」とされています。設問では「表現しない場合には−と答えよ」とされているので、解答は① -となります。

図13 問1(1)の解答を導くうえでヒントとなる情報
注)設問の図11の一部を切り取り、番号などを書き込んだもの。

【問1(1)②】
 図1のとおり「1ノット=0.514m/s」です。また、台風の強さは、最大風速で区分され(豆知識51)、33m/s(64ノット)以上 44m/s(85ノット)未満は “強い”、44m/s(85ノット)以上 54m/s(105ノット)未満は “非常に強い”、54m/s(105ノット)以上は “猛烈に強い” となります。
 図13 ②の青の枠内のMAX WINDS(最大風速)を見ると、85ノットと表示されています。よって、解答は② 非常に強いとなります。

【問1(1)③】
 台風の中心位置の確度は、その推定誤差で区分され、概ね55km(30海里)以下は “正確(GOOD)” 、概ね55km(30海里)超 概ね110km(60海里)以下は “ほぼ正確(FAIR)” 、概ね110km(60海里)超は ”不確実(POOR)” となります。
 図13 ③の緑色の枠内のPSN(位置の確度)を見ると、GOODと表示されています。よって、その推定誤差は概ね③ 30海里以下となります。

【問1(1)④】
 前述のとおり、図13 ②の青の枠内のMAX WINDS(最大風速)を見ると、85ノットと表示されています。よって、中⼼付近の最⼤⾵速は④ 85ノットとなります。

【問1(1)⑤】
 図13 ⑤のオレンジ色の枠内を見ると、60海里(NM)以内では風速50ノット以上と表示されています。よって、解答は⑤ 60海里以内となります。

【問1(1)⑥】
 この台⾵に対して発表されている警報は、図13⑥の灰色の枠内にTWと記載されていることから、⑥ 海上台風警報となります。
 
 なお、海上警報の種類や記号など「アジア太平洋域 地上天気図」に掲載された情報の読み取り方の詳細については、豆知識25をご参照ください。

第60回気象予報士試験実技2

 実技2では、XX年6⽉15⽇から17日にかけての⽇本付近における気象について問われました(ちなみに、XX年は2018年です)。
 図14は6月15日21時の地上天気図です。実技2問1(1)(①~⑥)では、この時刻に⽯垣島付近にあり、東北東へ進む台風6号に関して問われました。

図14 地上天気図(XX年6月15日21時(12UTC)) 
注)実線、破線:気圧(hPa) 。矢羽:風向・風速(ノット)(短矢羽:5ノット、長矢羽:10ノット、旗矢羽:50ノット)。今回の豆知識のテーマに絞るため、実際の図の一部を省略している。

図15 第60回実技2問1(1)

【問1(1)①】
 図16は、設問の地上天気図(図14) に、答えを導くうえでヒントとなる情報を、私が書き込んだものです。⽯垣島付近の台風の中⼼気圧は、①の緑色の枠内の数値を読み取り、① 994hPaとなります。

図16 問1(1)の解答を導くうえでヒントとなる情報
注)設問の図14の一部を切り取り、注目する2地点間の長さなどを書き込んだもの。

【問1(1)②】
 図2を用いて述べたように、緯度10度あたりの距離は、1110kmであると同時に、600海里に相当します。よって、北緯20~30度の距離は600海里となります。これを念頭に、問題を解いてみましょう。
 図16において、注目する地点間の長さを実測してみます。北緯20~30度の長さ(赤の矢印)が45mm、台⾵の24時間後の予報円の直径(青の矢印)が11.5mmであったとします。
 北緯20~30度(図上で45mm)の実際の距離は600海里であることから、予報円の直径(図上で11.5mm)の実際の距離は、600海里×11.5mm/45mm=約153海里となります。設問では「50海里刻みで答えよ」とされているので解答は、② 150海里となります。

【問1(1)③】
 豆知識54の「台風の進路予報」の項目で述べたとおり、台風の予報円は、予報した時刻に台風の中心が入る確率を70%と定義しています。よって、本設問の回答は、③ 70%となります。

【問1(1)④】
 台風の中⼼付近の最大風速は、④のオレンジ色の枠内の数値を読み取り、④ 35ノットとなります。

【問1(1)⑤】
 今後24時間以内に達すると予想されている最⼤⾵速は、⑤の紫色の枠内の数値を読み取り、⑤ 40ノットとなります。

【問1(1)⑥】
 この台⾵に対して発表されている警報は、⑥の灰色の枠内にGWと記載されていることから、⑥ 海上強風警報となります。

第54回気象予報士試験実技2

 実技2では、XX年8⽉24⽇から26日にかけての⽇本付近における気象について問われました(ちなみに、XX年は2015年です)。
 図17は8月24日21時の地上天気図です。実技2問1(1)(①~⑧)では、この時刻に九州へ接近していた台風15号に関して問われました。

図17 地上天気図(XX年8月24日21時(12UTC)) 
注)実線:気圧(hPa) 。矢羽:風向・風速(ノット)(短矢羽:5ノット、長矢羽:10ノット、旗矢羽:50ノット)。

図18 第54回実技2問1(1)

【問1(1)①】
 図19は、設問の地上天気図(図17) に、答えを導くうえでヒントとなる情報を、私が書き込んだものです。台風の中心は、鹿児島の ① 南西方向に位置しています。

図19 問1(1)の解答を導くうえでヒントとなる情報
注)設問の図17の一部を切り取り、注目する2地点間の長さなどを書き込んだもの。

【問1(1)②】
 図2を用いて述べたように、緯度10度あたりの距離は、1110km(600海里)に相当します。よって、北緯20~40度の距離は2220kmとなります。これを念頭に、問題を解いてみましょう。
 図19において、注目する地点間の長さを実測してみます。北緯20~40度の長さ(赤の矢印)が8cm、台⾵中心と鹿児島との長さ(青の矢印)が1cmであったとします。
 北緯20~40度(図上で8cm)の実際の距離は2200kmであることから、台風中心と鹿児島間(図上で1cm)の実際の距離は、2220km×1cm/8cm=278kmとなります。設問では「1の位の数字を四捨五入した10の倍数で答えよ」とされているので解答は、およそ② 280kmとなります。

 なお、図2を用いて述べたように、天気図上での北緯20~30度、北緯30~40度、北緯40~50度の長さは異なります。本設問のように台風が北緯30度付近にある場合は、天気図上での北緯20~40度分長さを利用することで、より精度の高い距離を推定することができます。

【問1(1)③、④】
 図19③、④の緑色の枠内の数値を読みとると、台風は、③ 20ノットの速さで、④ 北東へ進んでいます。

【問1(1)⑤】
 図1のとおり「1ノット=1.852km/h」であるため、台風の進行速度 20ノットは 37km/h に相当します。台風の中心は鹿児島のおよそ280kmの位置にあるため、到達までの時間は「280÷37=約7.6時間」と求められます。24日21時から約8時間後は 25日5時頃。したがって、中心が鹿児島に最も近づくのは25日の⑤ 5時頃となります。

 別の解き方として、図1のとおり「1海里=1.852km」であるため、鹿児島までの距離280kmは 151海里に換算できます。この距離を20ノットで進む場合の所要時間は「151÷20=約7.6時間」となり、同様に25日の⑤ 5時頃に到達します。

【問1(1)⑥】
 地上天気図の等圧線については、太い実線は1000hPaや1020hPaなど 20hPaごと、細い実線は4hPaごとに描き、必要に応じて2hPaごとの破線で補います(豆知識24、豆知識30)。
 まず、図19の沿海州北部にある等圧線(太実線)の値が、オレンジ色の枠内の数値のとおり1020hPaであることに注目します。細い実線の間隔は4hPaであることを考慮し、各等圧線の値を読み取ります(オレンジ色の数値)。そうすると、台風の最も外側にある閉じた等圧線(太い実線)の値は⑥ 1000hPaとなります。

【問1(1)⑦】
 前述のとおり、図19において北緯20~40度の長さ(赤の矢印)が8cmであったとします。このとき、中心の南東側での半径(紫色の矢印)を実測すると1.2cmとなります。
 北緯20~40度(図上で8cm)の実際の距離は1200海里であることから、南東側の半径(図上で1.2cm)の実際の距離は、1200海里×1.2cm/8cm=180海里となります。設問では「1の位の数字を四捨五入した10の倍数で答えよ」とされているので解答は、約⑦ 180海里となります。

【問1(1)⑧】
 図1のとおり「1ノット=0.514m/s」であるため、風速15m/sは約30ノットに相当します。風速15m/s以上の強風が吹いている可能性がある領域は、図19 ⑧の灰色の枠内のOVER 30KT(30ノット以上)の強風域に対応します。⑧の灰色の枠内には、中心の南東側半円は210海里(NM)、他(ELSEWHERE)は150海里と書かれています。よって解答は、南東側より北西側で⑧ 狭いとなります。

第52回気象予報士試験実技1

 実技1では、XX年9⽉9⽇から11日にかけての⽇本付近における気象について問われました(ちなみに、XX年は2015年です)。
 図20は9月9日9時の地上天気図です。実技1問1(1)(①~⑨)では、この時刻に本州付近にあった台風18号と、南鳥島の北に位置していた台風17号に関して問われました。

図20 地上天気図(XX年9月9日9時(12UTC)) 
注)実線:気圧(hPa) 。矢羽:風向・風速(ノット)(短矢羽:5ノット、長矢羽:10ノット、旗矢羽:50ノット)。今回の豆知識のテーマに絞るため、実際の図の一部を省略している。

図21 第52回実技1問1(1)

【問1(1)①、②】
 図22は、設問の地上天気図(図20) に、答えを導くうえでヒントとなる情報を、私が書き込んだものです。
 本州付近にある台風の中⼼気圧は、①における赤の枠内の数値を読み取り、① 990hPaとなります。
 また、②における青の枠内の数値を読み取ると、台風は② 14ノットの速さで北西へ進んでいることが分かります。

図22 問1(1)の解答を導くうえでヒントとなる情報
注)設問の図20に番号などを書き込んだもの。

【問1(1)③、④】
 中心付近の最大風速は、図22③における緑色の枠内の数値を読み取り、③ 45ノットとなります。
 最大瞬間風速は、図22④におけるオレンジ色の枠内の数値を読み取り、④ 65ノットとなります。

【問1(1)⑤、⑥、⑦】
 図22⑤における紫色の枠内の数値を読み取ると、中心の北東側⑤ 180海里以内では30ノット以上の強い風が吹いています。
 また、⑥、⑦における灰色の枠内の表示内容から、⑥ 南西側 ⑦ 90海里以内でも30ノット以上の強い風が吹いているといえます。なお⑥については、灰色枠内の表示を文字どおり読むと「他(ELSEWHERE)」となりますが、この場合は「北東側」に対する方向なので「⑥南西側」となります。

【問1(1)⑧、⑨】
 次に南鳥島の北の台風の大きさと強さについて考えます。豆知識51で述べたとおり、台風の大きさは風速15m/s以上の半径で区分されます。ただし、方向によって半径が異なる場合はその平均値で決められます。
 図1のとおり「1ノット=0.514m/s」であるため、風速15m/sは約30ノットに相当します。風速15m/s以上の領域は、図22⑧の茶色の枠内のOVER 30KT(約15m/s以上)を見ると、北東側240海里(NM)、南西側180海里なので、その平均値は210海里です。図1のとおり「1海里=1.852km」であるため、210海里は389kmです。風速15m/s以上の半径が500km未満の台風の大きさは「表現しない」とされています。設問では「該当する適切な語句がないときは、なしと記⼊せよ」とされているので、解答は⑧ なしとなります。
 図1のとおり「1ノット=0.514m/s」です。また、台風の強さは、最大風速で区分され(豆知識51)、33m/s(64ノット)以上 44m/s(85ノット)未満は “強い” 、44m/s(85ノット)以上54m/s(105ノット)未満は “非常に強い” 、54m/s(105ノット)以上は “猛烈に強い” となります。
 図22⑨のピンクの枠内のMAX WINDS(最大風速)を見ると、65ノットと表示されています。よって、解答は⑨ 強いとなります。

さいごに

 今回取り上げた 海里(距離) と ノット(速度) は、船舶や航空機の運航などで広く使われる基本的な指標です。
 例えば船舶の場合、使用する地図は「海図」であり、広い海上では地点を緯度・経度で表します。海図上で距離を求める際、緯度に対応した海里を使うと海図と一致するため非常に便利です。また、船の速度を表す単位がノットであることから、速度と航走距離を海図から容易に求められる点も、海里を用いる大きな利点です。
 前に述べたとおり、気象予報士試験の実技問題で用いられる「アジア太平洋域 地上天気図」でも、「海里」と「ノット」が使われています。これらの単位は日常生活ではあまり目にしないかもしれませんが、図1に整理した
・海里と km の関係
・ノットと①時速(km/h)②秒速(m/s)の関係 
を頭に入れておくと、問題をスムーズに解くことができると思います。
 なお、今回の豆知識は台風に関する内容でしたが、豆知識33では低気圧の移動距離(海里表示)や移動速度(ノット表示)などについても取り上げています。よろしければ、そちらもご参照いただけると幸いです。

今回の豆知識で参考にした図書等

●岩槻秀明(2024) 天気図の読み方がよ~くわかる本(第3版),秀和システム
●長田 栄治(2018)アジア太平洋地上天気図の標準的な解析手法(4.1はじめに),平成29年度予報技術研修テキスト, 気象庁予報部, 84-86
●気象業務支援センターのwebサイト
●気象庁のwebサイト
●北畠尚子 (2025) 総観気象学 基礎編(改訂版),気象庁
●下山紀夫(2023) 気象予報のための天気図のみかた(増補改訂新装版),東京堂出版
●仙石 新(2018)海図って何?-その役割と未来-,地図56(3): 19-26
●中島俊夫(2022)イラスト図解 よくわかる気象学 実技編,ナツメ社
●福地 章(2023)よくわかる高層気象の知識(2訂版),成山堂書店
●前田緑朗(2015)気象庁が行う航空気象業務と気象が航空機の運航に与える影響について,日本風工学会誌40: 29-35

この記事を書いた人
よほうし5823

気象予報士第5823号。博士(農学)。複雑な天気のしくみを、分かりやすく説明できるようになりたいです。そのために、日々勉強中です。

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