【豆知識43】竜巻の渦構造|フィギュアスケートのジャンプと共通する回転の秘密

はじめに

 豆知識39~42では、高気圧を取り上げました。今回からはテーマを変え、「局地的な気象現象」を取り上げます。
 その1回目は、「竜巻」です。具体的には、竜巻の発生メカニズム、被害の特徴、過去の発生事例などについて延べ、さらに竜巻に関連する過去の気象予報士試験の問題も紹介します。

竜巻とは(特徴やメカニズム)

竜巻、じん旋風、つむじ風

 竜巻、じん旋風、つむじ風の違いについて、気象庁のwebサイトでは、表1のように整理されています。
 竜巻は、積乱雲に伴う上昇流の渦であり、雲底から地面(海面)までつながったものをいいます。じん旋風は、広義には、つむじ風と同じですが、熱的な原因(地表面の加熱)で発生するものを指す場合もあります(表1)
 いずれにしろ、積乱雲に伴う「竜巻」と上空に雲を伴わない「じん旋風、つむじ風」とは学術的に明確に区分されます。

竜巻の特徴

 竜巻の風は非常に強く、アメリカでは、1999年5月3日に142m/sという驚異的な風速が測定された例もあります。
 それでは、なぜ竜巻では、強い風が吹くのでしょうか。どうして空気は、あれほど速く回転できるのでしょうか。回転が速くなる身近な例として、フィギュアスケートのジャンプがあります。スケーターは、回転中に両腕を体に引き寄せることで、回転速度を一気に速めます。
 回転の速さは、1秒間に回転する角度、すなわち角速度で表されます。物理学には角運動量保存則という法則があり、外から力が加わらない限り、

角運動量=質量 ×(回転の半径)² × 角速度

という関係が成り立ちます。

 この式から分かるように、回転の半径(フィギュアスケートでは腕の長さ)が短くなると、その長さの2乗に反比例して角速度が大きくなります。例えば、回転の半径が1/10になると、角速度は100倍にもなります。これが、竜巻が非常に激しい回転を示す物理的な理由です。
 このことを頭に入れたうえで、図1を見てみましょう。この図では、竜巻の基本的な発生メカニズムを表現しています。

図1 竜巻の基本的な発生メカニズム(イメージ図)

 まず、地表付近に何らかの要因により、竜巻の水平スケールよりも大きい(数km程度)、鉛直方向に軸をもつ弱い回転が存在していると仮定します(図1①)。このような環境下で、上空に積乱雲が発生・発達している状況を考えます。
 積乱雲が発達すると、雲の内部には強い上昇流が生じます(図1②)。この上昇流によって、積乱雲の直下の空気は次々と上空へ引き上げられます。その結果、地表付近では空気が積乱雲の下へ集まる収束の流れが生じます(収束については、豆知識7を参照)。
 地表付近に存在していた大きな渦も、この上昇流によって引き上げられ、鉛直方向に引き伸ばされます。すると、渦の直径は次第に小さくなります(図1③)。このとき、先に述べた角運動量保存則により、渦の回転速度は急激に増加し、竜巻のような激しい回転をもつ渦が形成されます。

 このように、竜巻の発生には、地表付近の渦積乱雲による強い上昇流が不可欠であり、これらが強いほど、発生する竜巻も激しくなります。

気圧傾度力・遠心力とのバランス

 一般的な風の吹き方については豆知識3で述べたように、「等圧線(等圧面天気図の等高度線)が平行な場合は、気圧傾度力とコリオリ力の2つの力が釣り合った地衡風」となり、「等圧線が曲率を持つ(例えば円形である)場合は、気圧傾度力、コリオリ力、遠心力の3つの力が釣り合った傾度風」となります。
 竜巻の場合、水平方向のスケールが数百メートル程度ととても小さいため、コリオリ力(地球の自転の影響)はほとんど無視できます。つまり、「気圧傾度力と遠心力の2つの力が釣り合った風となり、これを旋衡風」と言います。
 ここで、中心の気圧が低い場合を考えると、気圧傾度力は中心方向に、遠心力は外側に向かって働きます。この2つの力が釣り合う流れとして、反時計回りと時計回りの2通りの旋衡風が理論的に存在します(図2)。

 図2 竜巻における旋衡風の力のバランス(反時計回りと時計回りの流れの比較)

 北半球では、規模の大きい低気圧や台風の風は反時計回りです。竜巻は多くが反時計回りであるものの、一部には時計回りの渦も存在します。これは、旋衡風として両方の回転方向が成立し得るためです(図2)。その観測例として、1994年10月4日に土佐湾海上で発生した竜巻が、時計回りの渦であったことが報告されています(小林ら,1997)。
 一方で、中心付近の気圧が高い場合を仮定すると、気圧傾度力と遠心力はいずれも中心から外側に向かって作用することになります。この場合、両者は釣り合うことができず、旋衡風として安定した回転流は成立しません。つまり、一部には存在する時計回りの竜巻も、渦の中心気圧は周囲より低い低気圧性の渦である点に注意が必要です。

スーパーセル竜巻

発生メカニズム

 スーパーセル竜巻は、スーパーセル(supercell)という、組織化され発達した特殊な積乱雲によってもたらされます。
 スーパーセルとなる積乱雲の周辺では、地上付近で南風、中層(高度3~5km)で南西・西風、それより上空で西・北西風が吹くなど、風向・風速が高度によって大きく変化します(風の鉛直シアー豆知識7)。関東平野でも、太平洋、相模湾からの海風(南風)、西側の山地を越える南西風、上空の偏西風という環境は、スーパーセルの発生しやすい条件をもたらします。
 図3をご覧ください。これは、スーパーセルのイメージ図です。この条件下では、南東から入り込んだ多量の水蒸気を含んだ暖かい空気は、上昇して上空圏界面まで達し、その気流は前面(東側)に抜けます(図3①)。一方、中層で南西・西から積乱雲に入り込んだ乾いた気流は、上昇流の風下側を通るように、下降気流と一体となって地面に達します(図3②)。このように、周囲の風がねじれる影響で、積乱雲内部の気流もねじれるのです。その結果、スーパーセルは、雲自体が回転する特殊な積乱雲となります。

図3 スーパーセルのイメージ図(Browning, 1964を参考にして作図)
注)矢印(①、②)は気流を、③の回転はメソサイクロン、④の回転は竜巻を示す。

 また、スーパーセルでは、上昇流と下降流が住み分け、互いに干渉せず共存することで雲は著しく成長します。このため、上昇流と下降流が接する領域の近傍で竜巻が発生し、下降流域では、ダウンバーストや降雹、豪雨が観測されます(ダウンバーストは次回取り上げる予定)。
 前に述べたような高度による風の変化は、スーパーセルの発生にとって重要な役割を果たします。地上付近と上空で風向が異なると、この上下方向のずれは変形として表れ、回転成分が生まれます。イメージとしては、立てた本の上下を、それぞれ直角(90度)に異なる方向へ引っ張ったとき、回転軸が水平な渦(車輪のように回る)が生じるのと似ています(空気は流体なので本とは完全に同じではありません)。これが、雲の周囲に生じる、回転軸が水平な渦です。
 積乱雲の中に非常に強い上昇流が、周囲に存在していた水平軸の渦を持ち上げると、回転軸が次第に縦向き(垂直)へと変わります。つまり、積乱雲の強い上昇流が、渦を立ち上がらせるわけです。その結果、立ち上がった渦は、引き伸ばされて鉛直方向の軸をもつ回転成分が卓越し、雲内に存在します(図3③)。この雲内の回転は直径10kmのスケールを持ち、メソサイクロンと呼ばれます。スーパーセル竜巻は、雲内に存在するメソサイクロンが親渦となり、そこから発生します(図3④)。
 竜巻が発生する直前には、メソサイクロンの下では、地上付近にも回転を伴った気流が形成されていることが多く、この渦が収束して竜巻渦になります。

気象衛星画像と気象レーダー画像の特徴

気象衛星画像

 前に述べたとおり、竜巻は積乱雲に伴って発生する鉛直軸を持つ激しい渦巻です。実際の竜巻が発生した時の積乱雲を、気象衛星画像で確認してみましょう。
 まず、2013年9月2日14時00分に埼玉県さいたま市で発生した竜巻です(後に掲載する表3のNo.14の竜巻)。図4は、同日15時の気象衛星画像です。黄色の矢印で示した竜巻の発生地点付近において、可視画像(①)、赤外画像(②)ともに白く、厚くて雲頂高度の高い雲積乱雲)が確認できます。

図4  2013年9月2日15時の気象衛星による可視画像(①)及び赤外画像(②)
注)①と②:気象衛星画像は高知大学気象情報頁 (http://weather.is.kochi-u.ac.jp/) による。画像の見方は、豆知識17を参照。9月2日14時00分に竜巻が発生した地点(埼玉県さいたま市)に黄色の矢印を記入。

 次に、2012年5月6日12時35分に、茨城県常総市で発生した竜巻です(後に掲載する表3のNo.15の竜巻)。この場合も、図5を見ると、竜巻の発生地点付近において、厚くて雲頂高度の高い雲積乱雲)が確認できます。

図5  2012年5月6日13時の気象衛星による可視画像(①)及び赤外画像(②)
注)5月6日12時35分に竜巻が発生した地点(茨城県常総市)に黄色の矢印を記入。その他の図の注釈は、図4を参照。

気象レーダー画像

 スーパーセルを気象レーダーで観測すると(図6)、エコーフリー領域(図6①)が見られます。これは厳密にはエコーが完全に存在しないというより、エコーが極めて弱い領域で、この領域では極めて強い上昇流が存在しています。雲底付近で生成された雨粒は、レーダーで検出されるほど大きな降水粒子に成長する時間的余裕がないまま、対流圏上層へと運ばれてしまいます。
 このため、この上昇流域では降水がほとんど見られない一方で、その周囲には降雹域、さらにその外側には強雨域が存在します(図6)。

図6 スーパーセルのレーダーエコー水平分布の模式図(上から見た図)

 この結果、レーダーエコーの分布は、中央にエコーフリー領域があり、それを取り囲むように強エコーが分布する特徴的な形となり、全体としてかぎ針状(フック状)の形状を示します(図6②)。この特徴的なエコーパターンをフックエコーと呼びます。
 前に「スーパーセルは、雲自体が回転する」と述べましたが、フックエコーは、落下してきた雨粒が、この回転している気流(メソサイクロン)に巻き込まれることで、かぎ状のエコー分布を形成したものと考えられます。スーパーセルに伴って竜巻が発生する場合、その多くはフックエコーの付け根付近で発生します(図6③)。

 これらを念頭に、事例をみてみましょう。まず、2013年9月2日14時00分に埼玉県さいたま市で発生した竜巻です。図7をご覧ください。同日14時00分、丸で囲んだ位置にフックエコーが確認できます。また、2012年5月6日12時35分に茨城県常総市で発生した竜巻についても、フックエコーが確認できます(図8)。

図7 東京レーダーで捉えた埼玉県さいたま市付近の竜巻に伴う特徴的なエコー
注)気象庁のwebサイト(竜巻等の突風データベース、2013/09/02 14:00 埼玉県さいたま市で発生した竜巻)より引用。2013年9月2日14時00分。

図8  東京レーダーで捉えた常総市~つくば市の竜巻に伴う特徴的なエコー
注)気象庁のwebサイト(竜巻ポータルサイト、平成24年5月6日に発生した竜巻について)より引用。①2012年5月6日12時40分、②12時50分、③13時。フックエコーの位置を丸で囲った。

 なお、フックエコーは本来、アメリカ中西部で発達する典型的なスーパーセルにおける、明瞭なかぎ針状(フック状)の形状が教科書的なモデルとなっています。
 しかし、日本のスーパーセルはアメリカのものと比べて規模が小さいことが多く、フックの巻き込みが弱く、不明瞭に見える場合が少なくありません。また、レーダーからの距離や観測角度によっては、フックの細い部分がぼやけて見えることもあります。
 これらの理由から、日本の竜巻事例では、主降水域の南側に「し」の字のような弱い曲がりが現れるだけでも、フックエコーと判断されることが多いです。

非スーパーセル竜巻(局地前線に伴う竜巻)

 非スーパーセル竜巻は、寒冷前線などに代表されるように、風向や風速が線状の領域を境に水平方向で大きく変化する場所(局地前線)で発生します。図9は、非スーパーセル竜巻の発生メカニズムを表現したイメージ図です。
 前線に沿って地上付近で風がぶつかり、風向・風速の急激な変化によって水平シアー(図9の青の線)が生じます(シアーは豆知識7参照)。このシアーライン上では流れが不安定となり、地表付近にいくつもの渦が形成されます(図9A~D)。このとき、直径数km程度の渦が、一定の間隔で並ぶように形成されることが多いのが特徴です。

図9 非スーパーセル竜巻の発生メカニズムのイメージ図
注)Wakimoto and Wilson(1989)を基に作図

 前線上では、風の収束や温度差の影響により空気が持ち上げられ、積雲が発生します(図9-1①・②)。これらの雲が積乱雲へと発達すると(図9-2②・③ → 図9-3③・④)、雲内には強い上昇流が形成されます(図9-3⑤)。
 この強い上昇流(図9-3⑤)が、すでに地表付近に存在していた(図9-3C)重なることで、竜巻が発生しやすい状況が生じます。積乱雲の上昇流と地表の渦がカップリングすると、渦は上昇流によって引き伸ばされ急速に回転を強めて竜巻へと発達する可能性が高まるのです。

 このように非スーパーセル竜巻の発生には、地表付近に存在する渦と、積乱雲の強い上昇流とが、空間的・時間的に一致することが重要な条件となります。そのため条件がそろった場合には、複数の積乱雲がそれぞれ地表の渦と結びつき、複数の竜巻がほぼ同時に発生することもあります。
 雲内部に回転を生み出し、その上昇流によって竜巻を発生させるスーパーセルとは異なり、非スーパーセル竜巻は、外部で形成された渦を積乱雲が取り込む形で生じます。このため、その発生は、複数の条件が重なった結果として現れる現象といえるでしょう。

竜巻による被害(特徴、藤田スケール)

被害の特徴

 竜巻渦内部では、著しい気圧降下によって断熱膨張(断熱冷却)が起き、水蒸気が凝結(凝結については豆知識15参照)、漏斗雲が形成されます。また、竜巻渦は、漏斗雲に加え、巻き上げられた砂ぼこり、水しぶき、飛散物で次第に可視化されます(図10)。
 遠方から観測すると、雲底から地上に向けて次第に漏斗雲が降りてくるように見え、漏斗雲が地上に達した時点で、竜巻がタッチダウンしたと呼ぶことがあります。

 図10 竜巻と被害を受ける範囲の模式図

 竜巻の発生に伴い、地上では、気圧の急下降に加え、収束性で回転性の突風が観測され、短時間で狭い範囲に集中して甚大な被害をもたらします(図10)。被害域は帯状・線状となることが多く、その範囲は、一般的に幅は数十~数百mで長さは数kmの範囲に集中しますが、長さが数十kmに達することもあります。具体的な被害の規模については、後で取り上げる「過去に発生した竜巻の事例(表3)」も参照してください。
 なお、竜巻は、移動速度が非常に速い場合があります。過去の竜巻の中には、時速約90km(秒速25m)で移動したものもあります。

藤田スケールとは

 竜巻などの突風は水平規模が小さい現象であるため、地上に設置された既存の風速計から風速の実測値を得ることは困難です。このため、Fujita(1971)により、竜巻やダウンバーストなどの風速を、建築物等の被害状況から推定する「藤田スケール(以下、Fスケール)が考案されました。
 Fスケールは、その簡便性から、アメリカだけでなく日本を含め世界各国で広く利用されてきました。しかし、同スケールはアメリカにおける建築物等の被害を対象として作成されたものであることや、評定に用いるための被害指標が限られているなどの課題がありました。
 そこで気象庁では2013年から2015年にかけて専門家で構成される検討会を開催し、その結果、日本の建築物等の被害に対応するよう改良した日本版改良藤田スケール」(以下、JEFスケール)が策定されました(表2)。
 策定に当たっては、現象のスケールの評定結果が、FスケールとJEFスケールでできる限り同じ階級となるよう配慮されました。これにより、過去の統計との比較や継続的な統計値の算出が可能となっています。JEFは、2016年4月から用いられています。

日本で発生した竜巻(分布、要因など)

発生の分布図

 図11は、1961~2025年に気象庁が確認した竜巻の発生分布を示したものです(気象庁Webサイトより引用)。
 この図から、竜巻は日本全国で発生していることが分かりますが、特に多く見られるのは本土および離島の海岸線に近い沿岸部です。また、平野部での発生も比較的多く、なかでも関東平野のように広い平野が広がる地域では、発生件数が多い傾向が認められます。

図11 竜巻の発生分布図(1961~2025年)
注)気象庁のwebサイト(竜巻等の突風データベース)から引用(2016年1月15日更新のデータ)

竜巻発生の事例や、そのときの気象条件

 過去に発生した竜巻のうち、18事例について、発生推定時刻、被害の規模、発生要因などを、表3に整理しました。加えて、この18事例に対応する地上天気図を、図12に示します。

図12 竜巻が発生した頃の地上実況天気図(18事例)
注)1~18:気象庁提供の日本周辺域 地上天気図(速報天気図)。図12の各番号(1~18)は、表3の番号(1~18)と対応する。竜巻が発生した地点(表3)に、赤の矢印を記入。ただし、図12の天気図の時刻と、表3に示した竜巻発生時刻との間には、多少のずれがある。

 また、1991~2025年に発生した竜巻の確認件数を、発生要因(気象条件)別に整理したものが表4です(気象庁の資料を基に作成)。

 これらの図表に示すとおり、竜巻は、前線、寒気や暖気の移流等による大気の状態が不安定な場合に発生することが多いです。また、台風が要因となるケースも、比較的多くみられています。ちなみに、台風に伴う竜巻は、その中心の前方やや右寄りの領域に発生しやすいことが知られています。図12の1、4、5、8、11、12の地上天気図からも、その傾向が見て取れます。
 なお、表3の18事例のうちNo.15の竜巻については、気象庁の竜巻データベースに「スーパーセル竜巻」と記載されています。表3のNo.14、18の竜巻については、同データベースには明確な記載はありませんが、気象庁・気象研究所の解析などにより、スーパーセル竜巻と考えられます。

 ちなみに、図表には示しませんが、竜巻は、年間を通して発生しますが、7月から11月にかけて多く、特に台風シーズンの9月に多い傾向がみられます。

竜巻に関する情報

 気象庁では、竜巻発生確度ナウキャスト竜巻注意情報の発表を行っています。2つの情報は、積乱雲に伴い発生する顕著な突風を対象としています。具体的には竜巻、ダウンバースト及びガストフロントによる突風です。(ダウンバーストとガストフロントは今後の豆知識で取り上げる予定)。
 なお、突風に関する防災気象情報では,積乱雲に伴う激しい突風を代表して情報の名称などに「竜巻」を使用しています。これは,「激しい突風」をイメージしやすい言葉として「竜巻」を用いているためであり、ダウンバーストやガストフロントに対する注意も含まれています。
 以下で、竜巻発生確度ナウキャスト、竜巻注意情報についてお話します。

竜巻発生確度ナウキャスト

 竜巻発生確度ナウキャストは、10km四方の領域ごとに、竜巻などの激しい突風が発生しやすい状況を解析した結果を、気象庁が提供する情報です。実況に加えて、1時間先までの予測が示され、10分ごとに更新されます。
 激しい突風が発生する可能性の程度に応じて、発生確度1と発生確度2の2段階で表され、発生確度2は、より発生の可能性が高い状況を示します。詳しい解説については、気象庁のwebサイトをご参照ください。

竜巻注意情報

 竜巻注意情報は、積乱雲の下で発生する竜巻、ダウンバーストなどの激しい突風に対して注意を呼びかける情報で、雷注意報を補足する情報として、気象庁から発表されます。名称は「竜巻注意報」ではなく「竜巻注意情報」です。
 竜巻注意情報は、竜巻発生確度ナウキャストで発生確度2が現れた地域に発表しているほか、目撃情報が得られて竜巻等が発生するおそれが高まったと判断した場合にも発表しており、有効期間は発表から約1時間です。注意すべき情報がそれ以上続く場合には、再度発表されます。
 なお、本情報は、発表後すみやかに防災機関や報道機関へ伝達されます。

雷注意報と竜巻注意情報の発表例

 先ほど「竜巻注意情報は、雷注意報を補足する情報として発表される」と述べました。その具体例を、図13に示します。

図13 雷注意報と竜巻注意情報の発表例

過去の気象予報士の試験問題

 過去の気象予報士試験において、竜巻に関する問題が出された例を、以下に紹介します。

第61回気象予報士試験 学科

図14 第61回学科 一般知識問9

 (a)に関しては、表1を用いて述べたとおり、竜巻の上空には積乱雲があります。よって、問題文(a)は、誤りです。
 (b)に関しては、表3を用いて述べたとおり、被害の長さ(移動距離)が5km以上となった事例が報告されています。よって、問題文(b)は、誤りです。
 (c)に関しては、図6を用いて述べたとおり、竜巻はフックエコー付近で発生することが多いです。よって、問題文(c)は、正しいです。
 (d)に関しては、図2を用いて述べたとおり、いずれの回転方向の竜巻も中心の気圧は周囲よりも低いです。よって、問題文(d)は、正しいです。

第55回気象予報士試験 学科

図15 第55回学科 専門知識問11

 (a)に関しては、図10を用いて述べたとおり、ろうと雲の形成には、断熱膨張により気温が低下して水蒸気が凝結することが関係します。よって、問題文(a)は、正しいです。
 (b)に関しては、図2を用いて述べたとおり、一部には時計回りの渦も存在します。よって、問題文(b)は、誤りです。
 (c)に関しては、表3や図10を用いて述べたとおり、被害域の長さが数十kmに達することもあります(表3の最大は19km、表3以外には2012年5月に栃木県真岡市で発生した竜巻の32kmの例もある)。よって、問題文(c)は、正しいです。
 (d)に関しては、表2を用いて述べたとおり、0から5まで6階級あり、数字が大きくなるに従って風速は大きくなります。よって、問題文(d)は、正しいです。

第49回気象予報士試験 学科

図16 第49回学科 一般知識問9

 (a)に関しては、図10を用いて述べたとおり、漏斗雲は、渦の中心の気圧低下によって断熱冷却が起き、水蒸気が凝結することによって生じます。よって、問題文(a)は、正しいです。
 (b)に関しては、竜巻は「大気水象」に分類される大気現象ですが、じん旋風は「大気じん(塵)象」に分類されるので、竜巻とは別の現象です。また、表1を用いて述べたとおり、積乱雲に伴う「竜巻」と上空に雲を伴わない「じん旋風」とは学術的に明確に区分されます。よって、問題文(b)は、誤りです。
 (c)に関しては、表3と4、及び図12を用いて述べたとおり、台風に伴って発生する竜巻は確認されています。よって、問題文(c)は、誤りです。
 (d)に関しては、「日本で発生した竜巻(分布、要因など)」の項目で述べたとおり、特に台風シーズンの9月に多い傾向がみられます。よって、問題文(d)は、誤りです。

第49回気象予報士試験 学科

図17 第49回学科 専門知識問10

 (a)に関しては、表3や図10を用いて述べたとおり、被害域の長さが数十kmに達することもあります。よって、問題文(a)の下線部は、正しいです。
 (b)に関しては、図11を用いて述べたとおり、沿岸部で多く観測されます。よって、問題文(b)の下線部は、正しいです。
 (c)に関しては、表2を用いて述べたとおり、日本版改良藤田スケールは、日本の建築物等の被害に対応させています。よって、問題文(c)の下線部は、正しいです。
 (d)に関しては、「竜巻に関する情報」の項目で述べたとおり、⻯巻発⽣確度ナウキャストおよび⻯巻注意情報の対象に含まれています。よって、問題文(d)の下線部は、正しいです。

第41回気象予報士試験 学科

図18 第41回学科 一般知識問9

 (a)に関しては、「スーパーセルによる竜巻(発生メカニズム)」の項目で述べたとおり、風の鉛直シアーが強い状況で発達します。よって、問題文(a)は、正しいです。
 (b)に関しては、図6を用いて述べたとおり、強い上昇流がある所には反射強度が弱い領域があります。よって、問題文(b)は、正しいです。
 (c)に関しては、図6を用いて述べたとおり、この上昇流域では降水がほとんど見られません。よって、問題文(c)は、誤りです。
 (d)に関しては、図6を用いて述べたとおり、竜巻はフックエコー付近で発生することが多いです。よって、問題文(d)は、正しいです。

第39回気象予報士試験 学科

図19 第39回学科 専門知識問10

 (c)に関しては、図10を用いて述べたとおり、ろうと雲は、渦の中心の気圧低下によって断熱膨張(断熱冷却)が起き、水蒸気が凝結することによって生じます。よって、問題文(c)は、正しいです。

第37回気象予報士試験 学科

図20 第37回学科 一般知識問11

 (a)に関しては、表1を用いて述べたとおり、竜巻は積乱雲に伴って発生します。また、表3と4を用いて述べたとおり、竜巻は、前線、寒気や暖気の移流等による大気の状態が不安定な場合に発生することが多く、また、台風が要因となるケースも比較的多くみられています。よって、問題文(a)は誤りです。
 (b)に関しては、図10を用いて述べたとおり、漏斗雲は、渦の中心の気圧低下によって断熱冷却が起き、水蒸気が凝結することによって生じます。よって、問題文(b)は、正しいです。
 (c)に関しては、図2を用いて述べたとおり、一部には時計回りの渦も存在します。よって、問題文(c)は、誤りです。

第34回気象予報士試験 学科

図21 第34回学科 専門知識問13

 (a)に関しては、「竜巻に関する情報」の項目で述べたとおり、雷注意報と竜巻注意情報で注意を呼び掛けます。よって、問題文(a)は、正しいです。
 (b)に関しては、「竜巻に関する情報」の項目で述べたとおり、竜巻注意情報は、今まさに、竜巻などの激しい突風が発生しやすい状況であることを知らせる情報であり、その有効期間は発表から約1時間です。よって、問題文(b)は、誤りです。

第32回気象予報士試験 学科

図22 第32回学科 専門知識問10

 (a)に関しては、図10を用いて述べたとおり、漏斗雲は、渦の中心の気圧低下によって断熱膨張(断熱冷却)が起き、水蒸気が凝結することによって生じます。よって、問題文(a)は、正しいです。
 (b)に関しては、図2を用いて述べたとおり、中心付近の風は、近似的に気圧傾度力と遠心力が釣り合って吹く旋衡風となっています。よって、問題文(b)は、誤りです。
 (c)に関しては、表3と4を用いて述べたとおり、竜巻は、台風が要因となるケースも比較的多くみられるものの、前線、寒気や暖気の移流等による大気の状態が不安定な場合に発生することが多いです。よって、問題文(c)は、誤りです。
 (d)に関しては、「日本で発生した竜巻(分布、要因など)」の項目で述べたとおり、発生が最も多く確認されているのは9月です。よって、問題文(d)は、正しいです。

第30回気象予報士試験 学科

図23 第30回学科 一般知識問9

 (a)に関しては、表1を用いて述べたとおり、漏斗あるいは柱状に垂れ下がる雲を伴うことが多いです。よって、問題文(a)は、正しいです。
 (d)に関しては、「日本で発生した竜巻(分布、要因など)」の項目で述べたとおり、発生が最も多く確認されているのは9月です。よって、問題文(d)は、誤りです。

第25回気象予報士試験 学科

図24 第25回学科 一般知識問10

 (a)、(b)、(c)に関しては、図2を用いて述べた内容を考慮すると、(a)には “気圧傾度力”、(b)には “遠心力”、(c)には “旋衡風” の語句がそれぞれ入ります。

第18回気象予報士試験 学科

図25 第18回学科 専門知識問9

 (a)に関しては、図1を用いて述べたとおり、強い上昇流と雲底付近の鉛直軸周りの回転が必要とされています。よって、問題文(a)は、正しいです。
 (b)に関しては、図2を用いて述べたとおり、竜巻の場合、コリオリ力(地球の自転の影響)は、ほとんど無視できます。よって、問題文(b)は、誤りです。
 (c)に関しては、図10を用いて述べたとおり、漏斗雲は、渦の中心の気圧低下によって断熱膨張(断熱冷却)が起き、水蒸気が凝結することによって生じます。よって、問題文(c)は、正しいです。

第3回気象予報士試験 学科

図26 第3回学科 一般知識問6

 ②に関しては、図2を用いて述べたとおり、竜巻の場合、コリオリ力(地球の自転の影響)は、ほとんど無視できます。よって、問題文②は、正しいです。

さいごに

 竜巻は短時間かつ局所的に発生するので、その構造を直接観測することは困難を極めます。
 竜巻の発生メカニズムは、まだ完全に解明されたわけではありませんが、ひとたび竜巻が発生すると、甚大な被害を及ぼします。建物等の被害を防ぐのは困難ですが、私たちの身の安全を守るための対策は可能です。
 気象庁は、竜巻の可能性に応じた段階的な情報発表を行っています(図13)。「今日は、大気の状態が不安定となり・・・」といった予報が出ている場合は、特に、その後の情報をこまめにチェックするようにしましょう。

今回の豆知識で参考にした図書等

●岩槻秀明(2017) 気象学のキホンがよ~くわかる本(第3版),秀和システム
●小倉義光(1994) お天気の科学-気象災害から身を守るために-,森北出版
●小倉義光(1999) 一般気象学(第2版),東京大学出版会
●気象庁のwebサイト
●気象庁(2015)日本版改良藤田スケールに関するガイドライン(2024年最終改正),気象庁
●気象庁,気象研究所,東京管区気象台,仙台管区気象台(2012)平成24年5月6日に発生した竜巻について(報告),平成24年6月8日 報道発表資料
●気象研究所(2006)佐呂間町で発生した竜巻をもたらした積乱雲の再現実験(雲解像モデルによる)においてスーパーセルを確認,平成18年11月17日 報道発表資料
●気象研究所(2013)平成25年9月2日の越谷市・野田市等に被害をもたらした竜巻について,平成25年10月7日 報道発表資料
●気象業務支援センターのwebサイト
●高知大学のwebサイト(気象情報項)
●小林文明(2021)新訂 竜巻 メカニズム・被害・身の守り方,成山堂書店
●小林文明,千葉 修,松村 哲(1997)1994年10月4日土佐湾海上で発生した竜巻群の形態と構造,天気44: 19-34
●小元敬男(1982)台風に伴う竜巻について,天気29: 967-980
●下瀬健一(2017)竜巻の発生メカニズムと事例,安全工学56: 482-489
●新野 宏(2007)竜巻,天気54: 933-936
●Suzuki, S., Maesaka, T., Iwanami, K., Shimizu, S., and Kieda, K. (2018) X‑band dual‑polarization radar observations of the supercell storm that generated an F3 tornado on 6 May 2012 in Ibaraki prefecture, Japan, Journal of the Meteorological Society of Japan 96A: 25–33
●瀧下洋一(2011)竜巻発生確度ナウキャスト・竜巻注意情報について-突風に関する防災気象情報の改善-,測候時報78: 57-93
●Nishihashi, M., Matsui, T., Sato, K., Iwao, S., and Okamoto, K. I. (2015) Characteristics of lightning jumps associated with a tornadic supercell on 2 September 2013, Scientific Online Letters on the Atmosphere 11: 18–22
●Fujita, T.T. (1971) Proposed characterization of tornadoes and hurricanes by area and intensity, Satellite and Mesometeorology Research Project Report 91, University of Chicago 
●Browning, K. A. (1964) Airflow and precipitation trajectories within severe local storms which travel to the right of the winds, Journal of the Atmospheric Sciences 21: 634-639
●Wakimoto, R. M. and Wilson, J. W. (1989) Non-supercell tornadoes, Monthly Weather Review 117: 1113–1140

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