【豆知識49】ポーラーロウ(寒気場内小低気圧)|ミニ台風、冬の台風と呼ばれることもあります

はじめに

 ポーラーロウ(polar low)とは、直訳すると「極域の低気圧」を意味し、ベーリング海、アラスカ湾、グリーンランド近海、ノルウェー海、バレンツ海、北海などの高緯度海域で観測されます。
 ポーラーロウは、これらの海域よりも低緯度に位置する日本海においても、冬季に大陸から寒気が吹き出す時に観測されることがあります。
 この低気圧は、温帯低気圧や台風と比べると規模は小さいものの、主に冬季の海上で急速に発達します。暴風や高波、大雪などを伴うため、海上交通などに大きな影響を及ぼし、「ミニ台風」あるいは「冬の台風」と呼ばれることもあります。
 ポーラーロウの構造には未解明な点もありますが、観測結果などから典型的な特徴は明らかになっています。今回の豆知識では、それらの特徴や過去の事例を紹介し、関連する気象予報士試験の問題についても取り上げます。

ポーラーロウとは

 地球規模でみたときに、高緯度帯の寒気団と日本を含む中緯度帯の気団との間に、大規模な前線が形成されることがあります。この前線を寒帯前線と呼び、上層の圏界面付近には寒帯前線ジェット気流が形成されます。

 ポーラーロウは、冬季寒帯前線の寒気側(寒気内)の海上において、温帯低気圧の後面に発生する小さな低気圧です(図1)。寒帯気団内(小)低気圧、寒気内メソ低気圧、寒気内低気圧とも呼ばれます。総観規模(豆知識6)の低気圧より小規模で、水平スケールは200~1000km程度です。明瞭な前線は伴いません

図1  総観規模の温帯低気圧とポーラーロウの模式図

 日本付近で発生するポーラーロウとしては、石狩湾の小低気圧(北海道西岸小低気圧)がよく知られています。近年の研究によれば、日本海のポーラーロウは主に、①北海道西方海上を東進するタイプ、②同海域を南進するタイプ、③中部日本海を東進するタイプ、④西部日本海を東進するタイプの4種類に分類されると報告されています(Yanase et al., 2016)。

ポーラーロウの特徴

 気象衛星画像でポーラーロウに伴う雲域を見ると、(スパイラル)状のミニ台風のような事例と、コンマミニ温帯低気圧のような事例の大きく2つに大別されます。しかし、両者の特徴が混在して明瞭に区別しにくい事例もあります。
 以下では、渦状の雲域については2025年2月8日の事例を、コンマ状の雲域については2015年1月30日の事例を用いて、それぞれの特徴を紹介します。

 渦(スパイラル)状の雲域

 まず、渦状の雲域を伴うポーラーロウの事例です。図2①は、2025年2月8日9時の地上天気図です。黄色の矢印で示した、前線を伴わない小さな低気圧がポーラーロウです。
 この低気圧付近の気象衛星の赤外画像(図2②)と可視画像(図2③、④)をみると、渦状の雲域が確認できます。この例のように、渦状の雲域は、赤外画像と可視画像の両方で明るく(白く)写っており、主に積乱雲(対流雲群)からできています。
 このタイプのポーラーロウは、傾圧性(水平方向の温度差)が小さいときに、台風のように組織化した積雲対流が放出する凝結熱豆知識16)をエネルギー源として発達します。つまり、冬季の日本海上では大陸から北西の季節風が吹き、相対的に暖かい海面から大気下層へ大量の熱と水蒸気が輸送されることで(豆知識23)、積雲対流が活発になります。
 このため、眼(渦の中心の雲のない部分)を伴って発達したポーラーロウでは、眼の中の気温は周囲より高くなります。すなわち、中心付近の下層では、相対的に暖気核構造を示します。
 2月8日9時の事例においても850hPa(図2⑤)、925hPa(図2⑥)において、ポーラーロウの中心付近で相対的に周辺より気温が高いエリアが確認できます。また、850hPa(図2⑦)において周辺より暖かく湿った高相当温位(豆知識19)のエリアが確認できます。

 また、寒冷渦(豆知識12)や寒冷トラフの南下に伴い500hPaでおよそ-36℃以下の強い寒気が日本海に流入してくると、大気の状態はさらに不安定となり、ポーラーロウが発達しやすくなります。2月8日9時の事例においても、500hPaでおよそ-40℃の強い寒気が確認できます(図2⑧)。

図2  2025年2月8日9時の地上天気図(①)、気象衛星による赤外画像(②)と可視画像(③、④)、850hPa 気温・風予想図(⑤)、925hPa 湿度・気温・風予想図(⑥)、850hPa 風・相当温位予想図(⑦)、500hPa 気温・風予想図(⑧)
注)対象時刻は④のみ10時(他は全て9時)。①と⑦:気象庁提供(①では注目した低気圧の位置に黄色の矢印を記入、⑦-2では注目した高相当温位のエリアを色塗り)、②~④:高知大学気象情報頁 (http://weather.is.kochi-u.ac.jp/) による(注目したエリアを黄色の線で囲んだ)。⑤、⑧:欧州中期予報センターの数値予報モデルによる予測値(Windy.comのwebサイトより入手)。⑥:気象庁のメソモデルによる予測値(Windy.comのwebサイトより入手)。

コンマ状の雲域

 次に、コンマ状の雲域を伴うポーラーロウについて紹介します。このタイプは、傾圧性(水平方向の温度差)が大きいときに、温帯低気圧のように位置エネルギーを運動エネルギーに変換して(豆知識9)発達します。つまり、大陸・海氷上の冷たい大気と海洋上の暖かい大気との間の水平温度傾度の中で発達します。
 図3①は、2015年1月30日21時の地上天気図です。黄色の矢印で示した、前線を伴わない小さな低気圧がポーラーロウです。同日23時の気象衛星の赤外画像(図3②)では、記号の「,」に似たコンマ状の雲域が確認できます。

図3  2015年1月30日21時の地上天気図(①)、同日23時の気象衛星による赤外画像(②)
注)図の注釈は、図2を参照。

ポーラーロウの事例(渦状雲域13例、コンマ状雲域2例)

 上記以外のポーラーロウの事例について、気象衛星の赤外画像と地上天気図を紹介します。日中の場合は可視画像、さらに、対象時刻が9時あるいは21時前後の場合は、850hPa 風・相当温位予想図も加えています。

渦状の雲域(13例)

1)2011年2月12日6時頃

図4  2011年2月12日6時の地上天気図(①)、同日6時の気象衛星による赤外画像(②)と同日8時の可視画像(③)
注)図の注釈は、図2を参照。

2)2012年1月31日15時

図5  2012年1月31日15時の地上天気図(①)、同日15時の気象衛星による赤外画像(②)と可視画像(③)
注)図の注釈は、図2を参照。

3)2012年2月17日15時

図6  2012年2月17日15時の地上天気図(①)、同日15時の気象衛星による赤外画像(②)と可視画像(③)
注)図の注釈は、図2を参照。

4)2012年11月7日9時

図7  2012年11月7日9時の地上天気図(①)、同日9時の気象衛星による赤外画像(②)と可視画像(③)、同日9時の850hPa 風・相当温位予想図(④)
注)図の注釈は、図2を参照。

5)2012年11月27日9時

図8  2012年11月27日9時の地上天気図(①)、同日9時の気象衛星による赤外画像(②)と可視画像(③)、同日9時の850hPa 風・相当温位予想図(④)
注)図の注釈は、図2を参照。

6)2013年12月20日12時

図9  2013年12月20日12時の地上天気図(①)、同日12時の気象衛星による赤外画像(②)と可視画像(③)
注)図の注釈は、図2を参照。

7)2015年3月4日15時

図10  2015年3月4日15時の地上天気図(①)、同日15時の気象衛星による赤外画像(②)と可視画像(③)
注)図の注釈は、図2を参照。

8)2016年2月15日15時

図11  2016年2月15日15時の地上天気図(①)、同日15時の気象衛星による赤外画像(②)と可視画像(③)
注)図の注釈は、図2を参照。

9)2017年2月11日9時頃

図12  2017年2月11日9時の地上天気図(①)、同日9時の気象衛星による赤外画像(②)、同日9時の可視画像(③)と10時の可視画像(④)、同日9時の850hPa 風・相当温位予想図(⑤)
注)図の注釈は、図2を参照。

10)2018年1月11日12時

図13  2018年1月11日12時の地上天気図(①)、同日12時の気象衛星による赤外画像(②)と可視画像(③)
注)図の注釈は、図2を参照。

11)2018年2月6日12時

図14  2018年2月6日12時の地上天気図(①)、同日12時の気象衛星による赤外画像(②)と可視画像(③)
注)図の注釈は、図2を参照。

12)2021年1月8日15時

図15  2021年1月8日15時の地上天気図(①)、同日15時の気象衛星による赤外画像(②)と可視画像(③)
注)図の注釈は、図2を参照。

13)2022年1月18日12時

図16  2022年1月18日12時の地上天気図(①)、同日12時の気象衛星による赤外画像(②)と可視画像(③)
注)図の注釈は、図2を参照。

コンマ状の雲域(2例)

1)2010年2月18日15時

図17  2010年2月18日15時の地上天気図(①)、同日15時の気象衛星による赤外画像(②)と可視画像(③)
注)図の注釈は、図2を参照。

2)2012年3月11日9時

図18  2012年3月11日9時の地上天気図(①)、同日9時の気象衛星による赤外画像(②)と可視画像(③)、同日9時の850hPa 風・相当温位予想図(④)
注)図の注釈は、図2を参照。

過去の気象予報士の試験問題

 過去の気象予報士試験において、「ポーラーロウ」に関連する問題が出された例を、以下に紹介します。なお、設問中に「ポーラーロウ」と明記されていないものの、ポーラーロウと考えられる低気圧を扱った問題についても取り上げます。

第54回気象予報士試験 学科

図19 第54回学科 専門知識問9

 (a)に関しては、「ポーラーロウの特徴」の項目で述べたとおり、多くのポーラーロウは、コンマ状や渦状の雲域、(渦の中心の雲のない部分)を伴います。よって、問題文(a)は、正しいです。
 (b) 「ポーラーロウの特徴」の項目で述べたとおり、ポーラーロウは、寒冷渦の南下に伴って発達しやすくなります。また、「ポーラーロウとは」の項目で述べたとおり、総観規模(豆知識6)の低気圧より小規模です。よって、問題文(b)は、正しいです。
 (c)に関しては、「はじめに」の項目で述べたとおり、ポーラーロウは、温帯低気圧や台風と比べると規模は小さいものの、暴風・高波・大雪を伴うことがあります。よって、問題文(c)は、正しいです。
 (d)に関しては、「ポーラーロウの特徴」の項目で述べたとおり、眼の中の気温は周囲より高いです。よって、問題文(d)は、正しいです。

第47回気象予報士試験実技2

 実技2では、XX年1⽉30⽇から2月1日頃にかけての⽇本付近における気象について問われました(ちなみに、XX年は2015年です)。図20は、1月30日9時(00UTC)の地上天気図、図21は同時刻の解析資料です。日本海にある低気圧は、設問中に明記されていないものの、図3(2015年1月30日)で紹介したポーラーロウと考えられます。そこで、この低気圧に関する設問の中から抜粋して紹介します。

 なお、本試験問題に用いられている「500hPa高度・渦度」の図については豆知識10、「500hPa気温,700hPa湿数」の図については豆知識13、「850hPa気温・風,700hPa鉛直流」の図については豆知識14、「地上気圧・降水量・風」の図については豆知識33を、それぞれご覧いただけると幸いです。

図20 地上天気図(XX年1月30日9時(00UTC)) 
注)実線は気圧(hPa) 。矢羽は風向・風速(ノット)(短矢羽:5ノット、長矢羽:10ノット、旗矢羽:50ノット)。

図21  500hPa高度・渦度解析図(上) 、850hPa気温・風,700hPa鉛直流解析図(下) (XX年1月30日9時(00UTC))
注)上図:太実線は高度(m)。破線および細実線は渦度(10-6/s)(網掛け域:渦度>0)。図中のAの表示に関しては、今回の豆知識では取り扱わない。下図:太実線は850hPa気温(℃)。破線および細実線は700hPa鉛直p速度(hPa/h)(網掛け域:負領域)。矢羽は850hPa風向・風速(ノット)(短矢羽:5ノット、長矢羽:10ノット、旗矢羽:50ノット) 。

図22 第47回実技2問2(1)①、③

図23      500hPa高度・渦度12時間予想図(上)、地上気圧・降水量・風12時間予想図(中) 、850hPa気温・風,700hPa鉛直流12時間予想図(下) (初期時刻はXX年1月30日9時(00UTC))
注)中図:実線は気圧(hPa)。破線は予想時刻前12時間降水量(mm)。矢羽は風向・風速(ノット)(短矢羽:5ノット、長矢羽:10ノット、旗矢羽:50ノット)。図中のL1、L2の表示に関しては、今回の豆知識では取り扱わない。上・下図:注釈は、図21を参照。

図24      500hPa高度・渦度24時間予想図(上) 、地上気圧・降水量・風24時間予想図(中) 、850hPa気温・風,700hPa鉛直流24時間予想図(下) (初期時刻はXX年1月30日9時(00UTC))
注)中図:図中のX、Yの表示に関しては、今回の豆知識では取り扱わない。その他の注釈は、図21、23を参照。

 まず、問2(1)①です。図25は、500hPa高度・渦度12時間予想図(図23上) に、答えを導くうえでヒントとなる情報を、私が書き込んだものです。トラフ(上空の気圧の谷)Bは12時間後には深まって、+169×10-6/sの正渦度極大値を持ちます。ここを通る等高度線の値は、5280mです。

図25 問2(1)①の解答を導くうえでヒントとなる情報
注)図23上(12時間予想図)に、トラフBの位置、日本海の低気圧の地上の位置(×)、注目する等高度線の値を書き込んだもの。

以上のことから問2(1)①の解答は、

B:5280 m となります。

 次に、問2(1)③です。上空と地上の気圧の谷の位置関係(豆知識9)、700hPaの上昇流域(豆知識14)なども考慮して、先ほどの図25(12時間予想図)をみてみましょう。トラフBは、日本海の低気圧の西側に位置しています。また、図23(下)の12時間予想図では、日本海の低気圧付近で、700hPaで-82hPa/hの上昇流が予想され、低気圧性循環も顕著になっています。つまり、12時間後のトラフBは低気圧の発達に寄与しています。

 図26は、500hPa高度・渦度24時間予想図(図24上) に、答えを導くうえでヒントとなる情報を、私が書き込んだものです。トラフBの位置をみると(図26)、日本海の低気圧より先行していることが分かります。また、図24(下)の24時間予想図では、日本海の低気圧付近で、700hPa鉛直流は-41hPa/hで12時間前より弱まっています。つまり、24時間後のトラフBは低気圧の発達に寄与していないと考えられます。

図26 問2(1)③の解答を導くうえでヒントとなる情報
注)図24上(24時間予想図)に、トラフBの位置、日本海の低気圧の地上の位置(×)を書き込んだもの。

以上のことから問2(1)③の解答は、

[初期時刻~12時間後]
トラフBの位置関係の変化:トラフBは低気圧の西側から接近する
発達への寄与:

[12時間後~24時間後]
トラフBの位置関係の変化:トラフBは低気圧を追い越す
発達への寄与:
となります(気象業務支援センターの解答例)。

 なお、この日本海の低気圧は、三陸沖で発達中の総観規模低気圧(図23中、図24中)の後面の寒気場内に形成されるポーラーロウ(寒気場内小低気圧)と考えられます。「ポーラーロウの特徴」の項目で説明した下層の暖気を、図24(下)でも確認できます。つまり、850hPaでポーラーロウの中心付近の温度にW(暖気の中心)の表示がみられます。

第43回気象予報士試験実技2

 実技2では、XX年12⽉19⽇から21日にかけての⽇本付近における気象について問われました(ちなみに、XX年は2013年です)。

 図27は、12月19日9時(00UTC)の地上天気図、図28は同時刻の解析資料です。山陰沖にある低気圧は、設問中に明記されていないものの、図9(2013年12月20日)で紹介したポーラーロウと考えられます。そこで、この低気圧に関する設問の中から抜粋して紹介します。

図27 地上天気図(XX年12月19日9時(00UTC)) 
注)実線は気圧(hPa) 。矢羽は風向・風速(ノット)(短矢羽:5ノット、長矢羽:10ノット、旗矢羽:50ノット)。

図28  500hPa高度・渦度解析図(上) 、850hPa気温・風,700hPa鉛直流解析図(下) (XX年12月19日9時(00UTC))
注)上図:太実線は高度(m)。破線および細実線は渦度(10-6/s)(網掛け域:渦度>0)。下図:太実線は850hPa気温(℃)。破線および細実線は700hPa鉛直p速度(hPa/h)(網掛け域:負領域)。矢羽は850hPa風向・風速(ノット)(短矢羽:5ノット、長矢羽:10ノット、旗矢羽:50ノット) 。

図29 第43回実技2問2(3)

図30 500hPa高度・渦度12時間予想図(上)、地上気圧・降水量・風12時間予想図(下) (初期時刻はXX年12月19日9時(00UTC))
注)下図:実線は気圧(hPa)。破線は予想時刻前12時間降水量(mm)。矢羽は風向・風速(ノット)(短矢羽:5ノット、長矢羽:10ノット、旗矢羽:50ノット)。上図:注釈は、図28を参照。

図31 500hPa高度・渦度24時間予想図(上)、地上気圧・降水量・風24時間予想図(下) (初期時刻はXX年12月19日9時(00UTC))
注)上図:注釈は図28を参照。下図:注釈は図30を参照。

図32      500hPa高度・渦度36時間予想図(上)、地上気圧・降水量・風36時間予想図(下) (初期時刻はXX年12月19日9時(00UTC))
注)上図:注釈は図28を参照。下図:注釈は図30を参照。

図33  500hPa気温,700hPa湿数12時間予想図(上)、850hPa気温・風,700hPa鉛直流12時間予想図(下) (初期時刻はXX年12月19日9時(00UTC))
注)上図:太実線は500hPa気温(℃)。破線および細実線は700hPa湿数(℃)(網掛け域:湿数≦3℃)。下図:注釈は図28を参照。

図34  500hPa気温,700hPa湿数24時間予想図(上) 、850hPa気温・風,700hPa鉛直流24時間予想図(下) (初期時刻はXX年12月19日9時(00UTC))
注)上図:注釈は図33を参照。下図:注釈は図28を参照。

 図35は、500hPa高度・渦度24時間予想図(図31上) に、答えを導くうえでヒントとなる情報を、私が書き込んだものです。つまり、初期時刻に山陰沖にある低気圧に対する500hPa面の低気圧の初期時刻(00)、12時間後(12)、24時間後(24)、36時間後(36)の位置を、図28上、図30上、図31上、図32上から読み取って、Lの記号を記入しました。
 また、地上の低気圧の初期時刻(00)、12時間後(12)、24時間後(24)の位置を、図27、図30下、図31下から読み取って、×印を記入しました。さらに、各時刻の地上低気圧の中心気圧を図27、図30下、図31下から読み取ると、1012hPa(00)、1000hPa(12)、996hPa(24)となっています。

図35 問2(3)①の解答を導くうえでヒントとなる情報
注)図31上(500hPa高度・渦度24時間予想図)に、500hPa面の低気圧の初期時刻(00)、12時間後(12)、24時間後(24)、36時間後(36)の位置をL、地上の低気圧の初期時刻(00)、12時間後(12)、24時間後(24)の位置を×で書き込んだもの。

 ここで、図35のLと×の位置関係と、中心気圧の低下に注目すると、
この低気圧は、初期時刻から24時間後にかけて(①西側から接近する500hPa面の低気圧と結びついて急速に(②発達することが分かります。

 500hPaの低気圧は、その後(36時間後)、能登半島沖に東進します(図32上のL、又は図35の36時間後のL)。これに対応する地上低気圧はみられず、日本海東部の能登半島沖が1004hPaの気圧の谷となっています(図32下)。つまり、

 36時間後は、500hPaの低気圧と重なって急速に(③衰弱しながら東進します。

 図28下で、850hPa面の温度分布をみると、初期時刻には地上低気圧付近の(④南東側に暖気、(⑤北西側に寒気があって、低気圧中心付近の(⑥温度傾度が大きくなっています。

 図33下の12時間後の予想図、図34下の24時間後の予想図で、850hPa面の温度分布をみるとWで示されているように低気圧の中心に(⑦暖気核が形成されています。

図36 第43回実技2問4(1)①

図37      レーダーエコー合成図 (XX年12月20日22時(13UTC)、23時(14UTC)、21日0時(20日15UTC))注)塗りつぶし域:降水強度(mm/h)(凡例のとおり)

 図37のレーダーエコー合成図を見ると、日本海南部の低気圧に対応する明瞭な渦パターンが確認できます。20日22時の渦の中心位置が×印で示されています(図37上)。この渦の中心は、北側から西側に回り込んでいる帯状のエコー域の東側にあります。
 これにならって21日0時の時点でも西側に回りこんでいる帯状エコーの東に渦の中心があると考え、その中心に×印を記入すると、図38の解答例の位置となります。

図38 第43回実技2問4(1)① の解答例(気象業務支援センター)

第42回気象予報士試験 学科

図39 第42回学科 専門知識問11

 (a)に関しては、「ポーラーロウの特徴」で述べたとおり、渦状の雲域は、主に積乱雲群(対流雲群)からできています。よって、(a)は「積乱雲」となります。
 (b)、(c)に関しては、「ポーラーロウの特徴」で述べたとおり、渦状の雲域を伴うポーラーロウは、傾圧性(水平方向の温度差)が小さいときに発達し、前線を伴いません。よって、(b)は「水平」、(c)は「前線」となります。

第41回気象予報士試験実技2

図40 第41回実技2問1

図41 地上天気図(XX年2月11日21時(12UTC)) 
注)実線は気圧(hPa) 。矢羽は風向・風速(ノット)(短矢羽:5ノット、長矢羽:10ノット、旗矢羽:50ノット)。

図42 500hPa天気図(XX年2月11日21時(12UTC)) 
注)実線は高度(m)、破線は気温(℃)。矢羽は風向・風速(ノット)(短矢羽:5ノット、長矢羽:10ノット、旗矢羽:50ノット)。

図43 気象衛星画像(XX年2月11日21時(12UTC))赤外画像(上)、水蒸気画像(下)

図44 状態曲線(XX年2月11日21時(12UTC))輪島、松江のいずれか(ア)、(イ)
注)実線は気温(℃)。破線は露点温度(℃)。

図45 日別海面水温解析図(XX年2月11日)
注)等値線は海面水温(℃)。

 実技2では、XX年2月11日から13日にかけての⽇本付近における気象について問われました(ちなみに、XX年は2011年です)。

 図41は、2月11日21時(12UTC)の地上天気図、図42は同時刻の500hPa天気図です。山陰沖西部の低気圧Bは、設問中に明記されていないものの、図4(2011年2月12日)で紹介したポーラーロウと考えられます。そこで、この低気圧Bに関連する設問を紹介します。

 まず、問1(1)です。図41の地上低気圧Bの特徴を考えます。図42の500hPa天気図で、寒帯前線ジェット気流に対応する強風帯は5400mの等高度線にほぼ沿っており、このジェット気流の北側の日本海沿岸部を-30℃線が通っています。よって、低気圧Bは寒帯前線ジェット気流の北側の(④寒気場内にある低気圧といえます。
 この低気圧はポーラーロウであることを認識したうえで、図43の気象衛星の赤外画像を見ると、雲域は(⑥状を呈していることが分かります。ちなみに、図43は2011年2月11日21時の気象衛星画像ですが、図4②の2011年2月12日6時の気象衛星画像をみると、より明瞭な渦状の雲域を確認できます。

 次に、問1(2)①です。図44の(ア)、(イ)のいずれかの地点にあたる輪島、松江付近の海面水温については、図45をみると、両方とも10℃以上です。また、図44の(ア)と(イ)の地上気温は、それぞれ約4℃と約1℃。よって、どちらの地点も海面水温が地上気温より高いことが確認できます。

 以上のことから、解答は「海面水温が地上気温よりもかなり高く、海面から水蒸気が供給されるため。」(気象業務支援センター解答例)となります。

 問1(2)②の湿潤層については、一般的に気温と露点温度の差が3℃未満を考えることが多いです(豆知識13)。図44の(ア)、(イ)において、気温と露点温度の「差が3℃未満の層」と「差が大きくなった層」の境目が湿潤層の上端の高度にあたります。よってこの高度は(ア)が640hPa(イ)が870hPaとなります。

 問1(2)③については、図41の松江と輪島における地上観測値を見ると、それぞれ4℃と1℃です。また、前述のとおり図44から地上気温を読み取ると(ア)は約4℃、(イ)は約1℃。よって、松江に対応する地点はです。
 次に、図43(上)を見ると、松江付近の方が輪島付近に比べて明るく(白く)写っているので、雲頂高度が高い。問1(2)①より(ア)、(イ)は下層で湿っており、問1(2)②より湿潤層の上端は(ア)が640hPa、(イ)が870hPaで、その上は乾燥しています。つまり、湿潤層は雲の厚みで、その上端が雲頂であるとすれば、雲頂高度が高いほど湿潤層の高度が高いと考えられます。

 以上のことから、解答は「松江付近の方が明るくて雲頂高度が高いので、湿潤層の高度が高い(ア)のほうが対応する。」(気象業務支援センター解答例)となります。

 なお、地上観測値(国際式天気記号)については豆知識27、エマグラムにおける状態曲線と雲域の対応については豆知識16豆知識17をご覧ください。

図46 第41回実技2問4

図47 500hPa高度・渦度12時間予想図(上)、地上気圧・降水量・風12時間予想図(下) (初期時刻はXX年2月11日21時(12UTC))注)上図:太実線は高度(m)。破線および細実線は渦度(10-6/s)(網掛け域:渦度>0)。下図:実線は気圧(hPa)。破線は予想時刻前12時間降水量(mm)。矢羽は風向・風速(ノット)(短矢羽:5ノット、長矢羽:10ノット、旗矢羽:50ノット)。

図48 500hPa気温,700hPa湿数12時間予想図(上)、850hPa気温・風,700hPa鉛直流12時間予想図(下) (初期時刻はXX年2月11日21時(12UTC))
注)上図:太実線は500hPa気温(℃)。破線および細実線は700hPa湿数(℃)(網掛け域:湿数≦3℃)。下図:太実線は850hPa気温(℃)。破線および細実線は700hPa鉛直p速度(hPa/h)(網掛け域:負領域)。矢羽は850hPa風向・風速(ノット)(短矢羽:5ノット、長矢羽:10ノット、旗矢羽:50ノット) 。

図49 松江の状態曲線(XX年2月12日9時(00UTC))
注)実線は気温(℃)。破線は露点温度(℃)。

 まず、問4(1)です。図48(上)を見ると、低気圧B上空の気温は-36℃で、北からの寒気場内にあります。また、図47(上)を見ると、Lを含む上空の気圧の谷(トラフ)となっています。さらに、図48(下)の気温分布を見ると、低気圧B上空には、Wで示す-9℃以上の暖気が確認できます。

 すなわち、500hPa 温度場・高度場では、(-36)℃の(寒気)を伴う(トラフ)となっており、850hPa 温度場では、(-9)℃以上の(暖気)が存在しています。

 問1(2)③の解答のとおり、松江に対応する地点は(ア)です。図44(初期時刻)の(ア)の状態曲線において、気温は1000hPaでは約3℃、500hPaでは約-30℃であり、その差は33℃です。一方、図49(12時間後)の松江の状態曲線において、気温は1000hPaでは約3℃、500hPaでは約-36℃であり、その差は39℃です。このことは、上空に寒気が入り、1000hPaと500hPaの温度差が大きくなり、安定度が悪くなったことを意味します。

 以上のことから問4(2)解答は、「1000hPaと500hPaの温度差が(ア)より大きくなり、安定度が悪くなった。」(気象業務支援センター解答例)となります。

第40回気象予報士試験実技1

図50 第40回実技1問2(3)

図51 500hPa高度・渦度36時間予想図(上)、地上気圧・降水量・風36時間予想図(下) (初期時刻はXX年11月25日21時(12UTC))
注)上図:太実線は高度(m)。破線および細実線は渦度(10-6/s)(網掛け域:渦度>0)。下図:実線は気圧(hPa)。破線は予想時刻前12時間降水量(mm)。矢羽は風向・風速(ノット)(短矢羽:5ノット、長矢羽:10ノット、旗矢羽:50ノット)。

図52 500hPa気温,700hPa湿数36時間予想図(上)、850hPa気温・風,700hPa鉛直流36時間予想図(下) (初期時刻はXX年11月25日21時(12UTC))
注)上図:太実線は500hPa気温(℃)。破線および細実線は700hPa湿数(℃)(網掛け域:湿数≦3℃)。下図:太実線は850hPa気温(℃)。破線および細実線は700hPa鉛直p速度(hPa/h)(網掛け域:負領域)。矢羽は850hPa風向・風速(ノット)(短矢羽:5ノット、長矢羽:10ノット、旗矢羽:50ノット) 。

図53 850hPa相当温位・風36時間予想図 (初期時刻はXX年11月25日21時(12UTC))
注)実線は相当温位(K)。矢羽は風向・風速(ノット)(短矢羽:5ノット、長矢羽:10ノット、旗矢羽:50ノット)。実際の試験問題には掲載されていた12、24、48時間予想図は省略した。

 実技1では、XX年11月25日から27日にかけての⽇本付近における気象について問われました(ちなみに、XX年は2012年です)。本試験では、11月25日21時(12UTC)を初期値とした各種気象図が用いられています。この内、問2(3)では、36時間後の予想図(11月27日9時)における北海道東部のじょう乱(低気圧)がテーマとなっています。

 この低気圧は、設問中に明記されていないものの、図8(2012年11月27日)で紹介したポーラーロウと考えられます。そこで、この低気圧に関連する設問を紹介します。
 図54は、図51~53の一部を拡大し、答えを導くうえでヒントとなる情報を、私が書き込んだものです。

図54 問2(3)の解答を導くうえでヒントとなる情報
注)図51~53の一部を拡大し、注目する箇所を丸で囲むか、矢印で示した。

まず、問2(3)①では、「850hPaの相当温位と風速の分布」について問われています。図54Aを見ると、288Kの等相当温位線(赤の矢印)が北海道東部に袋状に入っています。また、丸で囲んだエリア付近では風速50~70ノットの風となっています。

 以上のことから問2(3)①の解答は、「じょう乱付近で相当温位が高く、南側では50ノット以上の風が吹いている。」(気象業務支援センター解答例)となります。

 問2(3)②では、「700hPaの鉛直流と湿数の分布」について問われています。図54Bを見ると、北海道は網掛け域(負領域)で示される上昇流域となっています。特に北海道の西岸付近には-70hPa/hの上昇流極値があります(赤の矢印)。
 一方、じょう乱域の南東側(青の矢印付近)は下降流域(網掛けではない、白色の領域)となっています。さらに、図54Cを見るとじょう乱付近より北西側から南側(丸で囲んだエリア)に網掛け域で示される湿潤域があります。

 以上のことから問2(3)②の解答は、「北西側に強い上昇流、南東側に下降流があり、北西側から南側に湿潤域がある。」(気象業務支援センター解答例)となります。

 問2(3)③では、「500hPaの正渦度極大域との位置関係」について問われています。図54Dを見ると、じょう乱付近の位置に+272×10-6/sの正渦度極大域(赤の矢印)があります。 

 よって問2(3)③の解答は、「地上じょう乱と同じ位置に正渦度極大域がある。」(気象業務支援センター解答例)となります。

 問2(3)④では、「500hPaの温度場の谷との位置関係」について問われています。図54Cを見ると、北海道の西に寒気の谷(青の矢印付近)があります。 

 よって問2(3)④の解答は、「地上じょう乱の西に温度場の谷がある。」(気象業務支援センター解答例)となります。

 なお、「850hPa 風・相当温位」の図(図54 A)は豆知識19、「850hPa 気温・風,700hPa鉛直流」の図(図54 B)は豆知識14、「500hPa 気温,700hPa 湿数」の図(図54 C)は豆知識13、「500hPa 高度・渦度」の図(図54 D)は豆知識10を、それぞれご覧いただけると幸いです。

第27回気象予報士試験 学科

図55 第27回学科 専門知識問7

 (a)に関しては、「はじめに」の項目で述べたとおり、ポーラーロウ(寒気内のメソ低気圧)は、規模は小さいものの、暴風や高波、大雪を伴います。よって、問題文(a)は、正しいです。

さいごに

 ポーラーロウが発達する海外の高緯度海域と比べると、日本海はより低い緯度に位置しています。それにもかかわらず日本海でポーラーロウが発達するのは、冬季にユーラシア大陸から吹き出す強い寒気が、黒潮系暖水の一部が流入して比較的暖かい日本海へ流れ込むことで、他の高緯度海域と似た環境条件が整うためと考えられます。
 ポーラーロウは、地上天気図上では寒冷前線も温暖前線もない、泡のような小さな低気圧として表示されます。しかし、小さいからといって油断はできません。暴風や高波、大雪などを伴うことがあり、過去には大型船舶の遭難や鉄橋からの列車転落事故を引き起こした例もあります。
 冬季に日本海でこのような低気圧が現れたら、気象庁などが発表する情報に十分注意しましょう。

今回の豆知識で参考にした図書等

●浅井冨雄(1993)4.冬季日本海上に発生する帯状雲と小低気圧の数値実験,天気40: 388-392
●浅井冨雄(1998) ローカル気象学(第2版),東京大学出版会
●浅井冨雄,内田英治,河村 武 監修(1999)増補 気象の事典,平凡社
●遊馬芳雄,柳瀬 亘(2002)「第8回ヨーロッパ地球物理学会ポーラーロウ会議」参加報告,天気49: 287-288
●岩槻秀明(2017)気象学のキホンがよ~くわかる本(第3版),秀和システム
●小倉義光(1994) お天気の科学-気象災害から身を守るために-,森北出版
●気象庁のwebサイト
●気象業務支援センターのwebサイト
●北畠尚子 (2025) 総観気象学 基礎編(改訂版),気象庁
●木下 仁(2011)今月のひまわり画像―2011年2月,山陰沖で急発達したポーラーロウ,天気58: 332
●高知大学のwebサイト(気象情報項)
●下山紀夫(2023) 気象予報のための天気図のみかた(増補改訂新装版),東京堂出版
●中島俊夫(2022)イラスト図解 よくわかる気象学 実技編,ナツメ社
●新野 宏(2020)大気中の多様な渦・乱流現象等の普遍的理解を目指して―2019年度藤原賞受賞記念講演―,天気67: 207-224
●西 峰雄(2021)今月のひまわり画像―2021年1月,北海道に上陸したポーラーロウ,天気68: 168
●新田 尚,稲葉征男,土屋 喬,二宮洸三,(2004)天気図の使い方と楽しみ方,オーム社
●長谷川隆司,上田 文夫,柿本 太三(2006)気象衛星画像の見方と使い方,オーム社
●原 基(2014)今月のひまわり画像―2013年12月,日本海で反時計回りのループを描いたポーラーロウ,天気61: 102
●八木正允,由田建勝,前田紀彦,鴨志田 章,田中康夫,菊池弘明,中島 尚(1979)北海道西岸に出現した小低気圧の解析,天気26: 87-97
●柳瀬 亘(2010)ポーラーロウの理想化実験―2009年度山本・正野論文賞受賞記念講演―,天気57: 371-381
●Yanase, W., Niino, H., Watanabe, S. I., Hodges, K., Zahn, M., Spengler, T. and Gurvich, I. A. (2016) Climatology of polar lows over the Sea of Japan using the JRA-55 reanalysis, Journal of Climate, 29: 419-437
●Windy.comのwebサイト

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