【豆知識17】雲の高さを知るには?|エマグラムや気象衛星画像が有効です

はじめに

 豆知識15では「低気圧の前面(東側)の上昇流域では雲域が広がり、低気圧後面(西側)の下降流域では雲域がほとんど見られないこと」「前線付近の上昇流域でも雲域が広がること」を、気象衛星画像から確認しました。
 また、豆知識16では、「エマグラムにおいて、気温と露点温度の差(湿数)が小さいところを読み取れば、雲の概ねの発生高度を知ることができる」ことを述べました。
 今回は、「低気圧の前面」や「前線付近」で広がる雲域を、エマグラムから読み取る(推定する)ことができるのか、実際に確認してみましょう。

低気圧の前面及び後面の地点でのエマグラム

 一般的に、850hPa(高度約1500m)と700hPa(高度約3000m)は大気下層、500hPa(高度約5500m)は大気中層、300hPa(高度約9000m)は大気上層に区分されます。700hPaは、大気中層と下層の中間に位置付ける場合もあります。
 これらをふまえ、低気圧の前面(東側)と後面(西側)における雲域とエマグラムとの関連を考えてみます。

2024年3月12日9時の事例

 図1のうち地上天気図(①)、700hPa 高度・湿度・風 予想図(②)、気象衛星による可視画像(③)及び赤外画像(④)は、豆知識15で紹介した図です。前線を伴った低気圧が四国沖にあり(①)、低気圧の前面(東側)では湿潤域、低気圧の後面(西側)では乾燥域があります(②)。低気圧の前面(東側)を中心に雲域が広がっています(③、④)。一方、低気圧の後面(西側)の東シナ海では、雲域はほとんど確認されません。

 この時の4つの高層気象観測地点におけるエマグラム(⑤~⑧)を、今回新たに掲載しました。以下で、地点ごとに、その特徴をみていきます。

図1  2024年3月12日9時の地上実況天気図(①)、700hPa 高度・湿度・風 予想図(②)、気象衛星による可視画像(③)及び赤外画像(④)、各地点のエマグラム(⑤~⑧)
注)①は気象庁提供。②は、欧州中期予報センターの数値予報モデルによる予測値(Windy.comのwebサイトより入手)。③と④の画像は高知大学気象情報頁 (http://weather.is.kochi-u.ac.jp/) による。⑤~⑧は、ワイオミング大学のwebサイト(https://weather.uwyo.edu/upperair/sounding.html)から入手。
①:今回利用したエマグラムの観測地点(⑤~⑧)を、青字で書き込んだ。
②:実線は等高度線。細く途切れた線は、風の流れ。湿度の分布は、色を変えて表示。
①~④:注目する低気圧の中心位置に、矢印を記入した。

館野(茨城県つくば市、低気圧の前面に位置している)

 豆知識13で述べたとおり、700hPa(高度約 3000m)の湿潤域は、低気圧や前線に伴う組織的な雲域を形成する中層雲や下層雲の広がりと対応しています。そのことを念頭に図1②をみると、館野の700hPaでは、湿潤域となっています。
 これは⑤のエマグラムにおいて、700hPa湿数(気温-露点温度)が小さい(3℃未満である)ことに対応しています。つまり、この高度では雲が発生していると考えられます。

 気象予報において重要であるのは、もちろん700hPa高度の雲域だけではありません。雲頂高度が300hPa(約9000m)を超えることがある積乱雲のような、対流雲の監視も重要です。
 そこで次に、気象衛星画像をみてみましょう。可視画像で白い(明るい)雲は厚い雲、暗め(灰色)の雲は薄い雲です。赤外画像で白い(明るい)雲は雲頂高度が高い雲、暗め(灰色)の雲は雲頂高度が低い雲です。
 そのことを念頭に③、④をみると、館野付近では、可視画像(③)、赤外画像(④)ともに白く、厚くて雲頂高度の高い雲が確認できます。これはエマグラム(⑤)において、約300~900hPaの各高度の湿数が小さいことに対応しています。
 つまり、館野では700hPaに限らず、各高度(上層、中層、下層)において雲が発生していると考えられます。

八丈島(東京都八丈島八丈町、低気圧の前面に位置している)

 豆知識13において、湿数3℃未満の領域は、気温によって少し変動するものの、おおよそ湿度80%以上の領域に相当することを述べました。このことを念頭に図1②をみると、八丈島付近の700hPaの湿度は、館野の値よりわずかに低いものの、湿潤域となっています。
 これはエマグラム(⑥)において、八丈島の700hPa湿数は、館野の値よりわずかに大きいものの、3℃未満となっていることに対応しています。つまり、この高度では雲が発生している可能性が高いと考えられます。

 八丈島付近の衛星画像をみると(③、④)、一部で海面が薄く透けて見えるところがありますが、可視、赤外画像ともに全般的に白く、ある程度厚みがあり、雲頂高度の高い雲が発生していると考えられます。これはエマグラム(⑥)において、約300~850hPaの各高度において、湿数が小さい傾向にあることに対応しています。

福岡(福岡県福岡市、低気圧の後面に位置している)

 700hPaの湿度(図1②)をみると、福岡付近は乾燥域となっています。これはエマグラム(⑦)において700hPaの湿数が大きいことに対応しています。つまり、この高度では雲が発生していないと考えられます。
 福岡付近の衛星画像をみると、可視(③)では暗めに写り(一部透けて見える)、赤外(④)では不明瞭であることから、厚みがなく雲頂高度が低い雲(下層雲)が発生していると考えられます。これはエマグラム(⑦)において、750hPaよりも低い高度だけで、湿数が小さいことに対応しています。

鹿児島(鹿児島県鹿児島市、低気圧の後面に位置している)

 700hPaの湿度(図1②)をみると、鹿児島付近は乾燥域となっています。これはエマグラム(⑧)において700hPaの湿数が大きいことに対応しています。つまり、この高度では雲が発生していないと考えられます。
 鹿児島付近の衛星画像をみると、可視(④)では暗めに写り(一部透けて見える)、赤外(⑤)では不明瞭であることから、厚みがなく雲頂高度が低い雲(下層雲)が発生していると考えられます。ただし、赤外(⑤)をよく見ると、鹿児島は、不明瞭な部分と白い部分のちょうど境目付近となっています。よって、一部、雲頂高度が高い雲が発生している可能性もあります。
 これらはエマグラム(⑧)において、350hPa付近及び800hPaよも低い高度で湿数が小さいことに対応している可能性があります。

2024年6月21日9時の事例

  図2の事例でも、低気圧の中心付近や、低気圧の前面(東側)に雲域が広がっています。以下で、地点ごとに、その特徴をみていきます。

図2  2024年6月21日9時の地上実況天気図(①)、700hPa 高度・湿度・風 予想図(②)、気象衛星による可視画像(③)及び赤外画像(④)、各地点のエマグラム(⑤~⑧)
注)図の注釈は図1参照。

潮岬(和歌山県東牟婁郡串本町、低気圧の中心付近に位置している)

 700hPaの湿度(図2②)をみると、潮岬付近は湿潤域となっています。これはエマグラム(⑤)において700hPa湿数が小さいことに対応しています。つまり、この高度では雲が発生していると考えられます。
 衛星画像をみると可視(③)、赤外(④)ともに白く、厚くて雲頂高度の高い雲が確認できます。これはエマグラム(⑤)において、約250~900hPaの各高度の湿数が小さいことに対応しています。
 つまり、潮岬では700hPaに限らず、各高度(上層、中層、下層)において雲が発生していると考えられます。

館野(低気圧の前面に位置している)

 700hPaの湿度(図2②)をみると、乾燥域となっています。これはエマグラム(⑥)において700hPaの湿数が3℃以上であることに対応しています。つまり、この高度では雲が発生している可能性は低いと考えられます。
 衛星画像をみると、可視(③)では暗めに写り、赤外(④)では白いことから、やや厚みがあり、雲頂高度の高い雲が発生している可能性が考えられます。これはエマグラム(⑥)において、約250~600hPaにおいて、湿数が小さいことに対応しています。

松江(島根県松江市、低気圧の後面に位置している)

 衛星画像(図2③、④)をみると、松江付近では、ほとんど雲域が確認されません。これはエマグラム(⑦)において、各高度における湿数が大きいことに対応しています。

福岡(低気圧の後面に位置している)

 松江と同様に、衛星画像(図2③、④)で雲域はほとんど確認されず、これは、エマグラム(⑧)で各高度の湿数が大きいことに対応しています。

前線付近の地点、前線から離れた地点におけるエマグラム

 次に、停滞前線が解析されるときの雲域とエマグラムとの関連を考えてみます。図3~6の①~④についても、豆知識15で紹介した図です。⑤~⑧(エマグラム)を、今回新たに記載しました。

2024年4月6日9時の事例

 図3のとおり、前線が華南~南西諸島を通って日本の南にのびており(①)、前線付近では、700hPaの湿潤域があり(②)、そのエリアを中心に雲域があります(③、④)。以下で、地点ごとに、その特徴をみていきます。

図3 2024年4月6日9時の地上実況天気図(①)、700hPa 高度・湿度・風 予想図(②)、気象衛星による可視画像(③)及び赤外画像(④)、各地点のエマグラム(⑤~⑧)注)図の注釈は図1参照。ただし、図1では低気圧の中心位置に矢印を記入したが、図3の場合、①では注目する前線の位置を実線で囲い、②~④には、その前線の位置を書き込んだ。

名瀬(鹿児島県奄美市、前線付近に位置している)

 700hPaの湿度(②)をみると、名瀬付近は湿潤域となっています。これはエマグラム(⑤)において700hPa湿数が小さいことに対応しています。つまり、この高度では雲が発生していると考えられます。
 衛星画像では、可視(③)、赤外(④)ともに白く、厚くて雲頂高度の高い雲が確認できます。これはエマグラム(⑤)において、約300~950hPaの各高度の湿数が小さいことに対応しています。
 つまり、名瀬では700hPaに限らず、各高度(上層、中層、下層)において雲が発生していると考えられます。

館野(前線からやや離れている)

 700hPaの湿度(②)をみると、館野付近は乾燥域となっています。これはエマグラム(⑥)において700hPaの湿数が大きいことに対応しています。つまり、この高度では雲が発生していないと考えられます。
 館野付近の衛星画像をみると、可視(③)では暗めに写り(一部透けて見える)、赤外(④)では不明瞭であることから、厚みなく雲頂高度が低い雲(下層雲)が発生していると考えられます。これはエマグラム(⑥)において、750hPaよりも低い高度だけで、湿数が小さいことに対応しています。

福岡(前線からやや離れている)

 700hPaの湿度(②)をみると、乾燥域となっています。これはエマグラム(⑦)において700hPaの湿数が大きいことに対応しています。つまり、この高度では雲が発生していないと考えられます。
 福岡付近の衛星画像をみると、可視(③)では暗めに写り(一部、透けて見える)、赤外(④)では白いことから、厚みがなく雲頂高度が高い雲(上層雲)が発生していると考えられます。これはエマグラム(⑦)において、約350~450hPaだけで、湿数が小さいことに対応しています。

秋田(秋田県秋田市、前線から遠く離れている)

 衛星画像(③、④)をみると、秋田付近では、ほとんど雲域が確認されません。これはエマグラム(⑧)において、各高度における湿数が大きいことに対応しています。

2024年6月15日9時の事例

 この事例(図4)でも、前線付近に雲域が広がっています。以下で、4つの高層気象観測地点におけるエマグラムの特徴をみていきます。

図4 2024年6月15日9時の地上実況天気図(①)、700hPa 高度・湿度・風 予想図(②)、気象衛星による可視画像(③)及び赤外画像(④)、各地点のエマグラム(⑤~⑧)注)図の注釈は図1と図3を参照。

名瀬(前線付近に位置している)

 700hPaの湿度(②)をみると、湿潤域となっています。これはエマグラム(⑤)において700hPa湿数が小さいことに対応しています。つまり、この高度では雲が発生していると考えられます。
 衛星画像をみると可視(③)、赤外(④)ともに白く、厚くて雲頂高度の高い雲が確認できます。これはエマグラム(⑤)において、約250~950hPaの各高度の湿数が小さいことに対応しています。
 つまり、名瀬では700hPaに限らず、各高度(上層、中層、下層)において雲が発生していると考えられます。

鹿児島(前線付近に位置している)

 700hPaの湿度(②)をみると、湿潤域となっています。これはエマグラム(⑥)において700hPa湿数が小さいことに対応しています。つまり、この高度では雲が発生していると考えられます。
 衛星画像では可視(③)、赤外(④)ともに暗めに写っていることから、やや厚みがあり、雲頂高度が中程度の雲が発生している可能性が考えられます。これはエマグラム(⑥)において、約500~950hPaにおいて、湿数が小さいことと、大まかに対応しています。

館野(前線からやや離れている)

 700hPaの湿度(②)をみると、やや乾燥しているエリアとなっています。これはエマグラム(⑦)において700hPaの湿数が約7~8℃であることに対応しています。つまり、この高度では雲が発生している可能性は低いと考えられます。
 衛星画像(③、④)をみると、館野付近では、ほとんど雲域が確認されません。これはエマグラム(⑦)において、各高度における湿数が大きいことに対応しています。

福岡(前線からやや離れている)

 700hPaの湿度(②)をみると、やや乾燥しているエリアとなっています。これはエマグラム(⑧)において700hPaの湿数が約5℃であることに対応しています。つまり、この高度では雲が発生している可能性は低いと考えられます。
 衛星画像をみると、可視(③)では暗めに写り(一部、透けて見える)、赤外(④)では暗めに(一部白く)写っていることから、厚みがなく、雲頂高度が高いか中程度の雲が発生していると考えられます。これはエマグラム(⑧)において、約450hPa前後の高度だけで、湿数が小さいことと、大まかに対応しています。

2024年6月28日9時の事例

 この事例(図5)でも、前線付近に雲域が広がっています。以下で、4つの高層気象観測地点におけるエマグラムの特徴をみていきます。

図5 2024年6月28日9時の地上実況天気図(①)、700hPa 高度・湿度・風 予想図(②)、気象衛星による可視画像(③)及び赤外画像(④)、各地点のエマグラム(⑤~⑧)注)図の注釈は図1と図3を参照。

館野(前線付近に位置している)

 700hPaの湿度(②)をみると、湿潤域となっています。これはエマグラム(⑤)において700hPa湿数が小さいことに対応しています。つまり、この高度では雲が発生していると考えられます。
 衛星画像では可視(③)、赤外(④)ともに白く、厚くて雲頂高度の高い雲が確認できます。これはエマグラム(⑤)において、約250~1000hPaの各高度において概ね湿数が小さいことに対応しています。つまり、館野では700hPaに限らず、各高度(上層、中層、下層)において雲が発生していると考えられます。

鹿児島(前線からやや離れている)

 700hPaの湿度(②)とエマグラム(⑥)の湿数の値から、この高度では雲が発生していると考えられます。
 衛星画像をみると可視(③)、赤外(④)ともに白く団塊状をなし、厚くて雲頂高度の高い対流雲が確認できます。これはエマグラム(⑥)において、約250~1000hPaの各高度において湿数が小さいことに対応しています。つまり、鹿児島では700hPaに限らず、各高度(上層、中層、下層)において雲が発生していると考えられます。

札幌(北海道札幌市、前線から遠く離れている)

 700hPaの湿度(②)をみると、概ね乾燥域となっています。これはエマグラム(⑦)において700hPaの湿数が大きいことに対応しています。つまり、この高度では雲が発生していないと考えられます。
 衛星画像(③、④)をみると、札幌付近では、ほとんど雲域が確認されません。これはエマグラム(⑦)において、各高度における湿数が大きいことに対応しています。

名瀬(前線から遠く離れている)

700hPaの湿度(②)とエマグラム(⑧)の湿数の値から、この高度では雲が発生していないと考えられます。
 衛星画像(③、④)をみると、名瀬付近では、ほとんど雲域が確認されません。これはエマグラム(⑧)において、各高度において湿数が概ね大きいことに対応しています。

2024年7月14日9時の事例

 この事例(図6)でも、前線付近に雲域が広がっています。以下で、4つの高層気象観測地点におけるエマグラムの特徴をみていきます。

図6 2024年7月14日9時の地上実況天気図(①)、700hPa 高度・湿度・風 予想図(②)、気象衛星による可視画像(③)及び赤外画像(④)、各地点のエマグラム(⑤~⑧)注)図の注釈は図1と図3を参照。

松江(前線付近に位置している)

 700hPaの湿度(②)をみると、湿潤域となっています。これはエマグラム(⑤)において700hPa湿数が小さいことに対応しています。つまり、この高度では雲が発生していると考えられます。
 衛星画像をみると可視(③)、赤外(④)ともに白く、厚くて雲頂高度の高い雲が確認できます。これはエマグラム(⑤)において、約250~800hPaの各高度において概ね湿数が小さいことに対応しています。
 つまり、松江では700hPaに限らず、各高度(上層、中層、下層)において雲が発生していると考えられます。

福岡(前線付近に位置している)

 700hPaの湿度(②)とエマグラム(⑥)の湿数の値から、この高度では雲が発生していると考えられます。
 衛星画像をみると可視(③)、赤外(④)ともに白く、厚くて雲頂高度の高い雲が確認できます。これはエマグラム(⑥)において、約250~800hPaの各高度において概ね湿数が小さいことに対応しています。
 つまり、福岡では700hPaに限らず、各高度(上層、中層、下層)において雲が発生していると考えられます。

秋田(前線からやや離れている)

 700hPaの湿度(②)をみると、概ね乾燥域となっています。これはエマグラム(⑦)において700hPaの湿数が大きいことに対応しています。つまり、この高度では雲が発生していないと考えられます。
 衛星画像をみると、可視(③)では暗めに写り(一部、透けて見える)、赤外(④)では白いことから、厚みがなく雲頂高度が高い雲(上層雲)が発生していると考えられます。これはエマグラム(⑦)において、300~330hPaと400hPa付近だけで、湿数が小さいことに対応しています。

名瀬(前線から遠く離れている)

 700hPaの湿度(②)とエマグラム(⑧)の湿数の値から、この高度では雲が発生していないと考えられます。
 衛星画像(③、④)をみると、名瀬付近では、ほとんど雲域が確認されません。これはエマグラム(⑧)において、各高度において湿数が概ね大きいことに対応しています。

おわりに

 今回は、「低気圧の前面」や「前線付近」で広がる雲域に着目しました。そのうえで、「気象衛星画像から推定した、それらの雲の厚さや雲頂高度」と「エマグラムの湿数の値から推定した、雲の発生高度」は、概ね対応していることを確認しました。
 気象衛星画像は、ほぼリアルタイムで一日中(可視画像は除く)、面的に広いエリアの現象を同時に把握できる長所があります。しかし、気象衛星画像は、上空(宇宙)一方向からの画像であり、雲の立体構造を詳細には把握できない短所があります。エマグラムは、各高度の観測結果に基づいて作成されるので、雲の発生高度の詳細を推定できる長所があります。しかし、対象時刻(観測時刻)が1日2回(9時と21時)に限られ観測地点も限られる短所があります。このような、気象衛星画像とエマグラムの特性を理解したうえで、両者を併用することが大切かと思います。
 なおエマグラムにおける気温の高度分布については、局所的に気温が高度とともに高くなっている場所があります。これを、逆転層と言います。逆転層が生じる原因やその事例を、次回の豆知識で取り上げたいと思います。

今回の豆知識で参考にした図書等

・岩槻秀明(2017) 気象学のキホンがよ~くわかる本(第3版),秀和システム
・気象衛星センター(2022)気象衛星画像の解析と利用(2022改訂版),気象衛星センター技術報告 特別号(2022)
・気象庁のwebサイト
・中島俊夫(2019)イラスト図解 よくわかる気象学 専門知識編,ナツメ社
・中島俊夫(2022)イラスト図解 よくわかる気象学 実技編,ナツメ社
・長谷川隆司,上田 文夫,柿本 太三(2006)気象衛星画像の見方と使い方,オーム社
・Windy.comのwebサイト
・ワイオミング大学のwebサイト

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