はじめに
豆知識43では、局地的な気象現象の一つとして「竜巻」を取り上げました。今回は引き続き、積乱雲に伴って発生する現象として「ダウンバースト」を扱います。
ダウンバーストとは、積乱雲内で生じた強い下降気流が地表に達し、周囲へ一気に吹き出す現象です。短時間のうちに風向や風速が急変するため、しばしば突発的な被害をもたらします。
今回は、積乱雲の発達段階を整理したうえで、ダウンバーストの発生メカニズムや規模の違い、発生時に観測される気象要素の特徴などについて、図を用いながらお話します。あわせて、ダウンバーストに関連する過去の気象予報士試験の問題も紹介します。
積乱雲の3つのステージ
生物の組織が細胞からできているのと同じように、雷雲という一つの「組織」を構成している要素としての積乱雲のことを、降水細胞、あるいは降水セルと呼ぶことがあります。
前回の豆知識では、スーパーセル(組織化され、発達した特殊な積乱雲)を取り上げましたが、本来は単一セルの積乱雲(一般的な積乱雲)について先に触れておくほうが適切でした。
そこで今回の豆知識では、まず一般的な積乱雲の一生、すなわち「3つのステージ」を整理します。図1をご覧ください。
積乱雲には、一般的に発達期(成長期)、成熟期(最盛期)、衰弱期(消滅期)という3つの段階(ステージ)がみられます(図1)。発達期の段階の雲は10種雲形(豆知識28)に当てはめると、積雲に相当すると考えることもできます。
発達期は、雲が上方に延びていく段階で、雲の中はほぼすべて上昇気流です(図1①)。雲のなかでは、降水粒子をつくる過程が進みます。降水粒子は粒径が大きくなると、やがて上昇気流に打ち勝って落下し始めます。このとき周囲の空気をいっしょに引きずり下ろし、中層付近から下降気流が始まります。この下降流の出現が成熟期の始まりです。この段階でも、雲のなかにはまだ上昇気流があるので、成熟期は上昇気流と下降気流が共存する時期といえます(図1②)。

図1.積乱雲の3つのステージ(模式図)
注)赤の矢印は上昇気流、青の矢印は下降気流を示す。
その後、上昇気流は次第に弱まり、最終的に消滅して衰弱期の始まりとなります(図1③)。発達期から成熟期にかけては、下層の空気が上昇し、水蒸気が凝結する際に放出される凝結熱(豆知識16)によって浮力が生じ、上昇気流が維持されていました。しかし、中層から下層にかけて下降気流が広がると、上昇気流はもはや保てなくなります。その結果、降水を生み出していた雲の活動は弱まり、雲内は次第に全体が下降気流に支配される状態となります。残っていた降水粒子は弱い雨として降るか、途中で蒸発し、最終的に雲は消えていきます。
なお、前回の豆知識で取り上げたスーパーセルは、風の鉛直シアーが強い環境で発達し、その寿命は数時間に及ぶことがあります。
一方で、先ほど述べた単一セルの積乱雲(一般的な積乱雲)は、風の鉛直シアーが弱い環境で発達し、寿命は通常30~60分程度です。単一の降水セル(孤立した降水セル)が短命なのは、上昇気流が発達していた領域の下層で下降気流が強まり、結果として上昇気流の供給が断たれてしまうためです。
ダウンバーストとは
発生メカニズム
ここからは、今回の豆知識の本題であるダウンバーストに話を進めます。まず、図2を見ながら、その発生メカニズムを見ていきましょう。
発達期の積乱雲の内部では上昇気流が卓越しているため、ダウンバーストが発生するのは、積乱雲が成熟期に入ってから(衰弱期にかけて)です。
すなわち、積乱雲が成熟期に入ると、雲の内部で降水粒子(氷粒子や雨粒など)が落下し始めます。落下する降水粒子が空気を下方へ押し下げること、さらに、落下する粒子が周囲の空気を抗力(巻き込み)によって引きずり下ろすことで、下降気流が発生し、また、強化されます(図2①)。
このとき、雹や霰などの氷粒子が混じっている場合、落下中に氷粒子が融解し、その相変化に伴う潜熱(豆知識16)が周囲の空気から奪われます。その結果、空気が冷却され、下降気流はいっそう強まります(図2②)。(稀に氷粒子が昇華することもありますが、その冷却効果は融解に比べて小さいです)

図2.ダウンバーストの発生メカニズム(模式図)
さらに、積乱雲の雲底下が乾燥している場合、落下してきた雨粒は蒸発(氷粒子の場合は昇華)しやすくなります。このときの相変化に伴う潜熱が周囲の空気から奪われることで、空気が冷却され、下降気流はさらに強まります(図2③)。
こうして発達した冷たく重い下降気流が、地表付近で四方に広がる冷気外出流(コールド・アウトフロー)となる現象がダウンバーストです(図2④)。つまり、ダウンバーストとは、積乱雲内で生じた強い下降気流が地表に到達し、水平方向に広がるまでの一連の過程を指します。
なお、雲が組織化され発達した特殊な積乱雲(スーパーセル)である場合は、大気中層の乾いた風が積乱雲に流れ込み、下降気流とともに地面に達します(豆知識43の図3)。このように、上空の運動量が下向きに運ばれる効果も加わり、ダウンバーストはさらに強化されることになります。
大きさや湿り具合
ダウンバーストは積乱雲からの下降気流によって生じるので、その水平方向の広がりは、積乱雲と同程度かやや大きく、数百mから十数km程度です。また、ダウンバーストの大きさは、地上における被害域の広がりや、レーダーで観測された風の発生パターンによって分類されます。水平スケールが4km以上のものをマクロバースト、4km未満をマイクロバーストと呼びます。一般に、マイクロバーストの方が、より強い風を伴うことが多いとされています。
また、大気下層が湿っており地上で降水を伴うものをウェットバースト、下層が乾燥しており降水を伴わない(もしくは降水があったとしても非常に弱い)ものをドライバーストと区別することもあります。
日本では雲底が低く、雲底下の空気が湿っていることが多いため、発生するダウンバーストのほとんどはウェットバーストです。
日本で発生したダウンバースト
過去に日本で発生したダウンバーストのうち、15の事例を表1に整理しました。同一日に複数発生した場合は、代表的な事例のみを掲載しています。例えば、No.3、10、12、13では、別のダウンバーストが比較的近い地点で、時間的に接近したタイミングで確認されています。
表1には、被害や関連する気象の特徴なども記載しました。この点については、後ほどお話します。


発生時に観測される気象要素の特徴
地上天気図
先ほどの15事例(表1)に対応する地上天気図を、図3に示します。
一般に、ダウンバーストは停滞前線や寒冷前線などの前線に伴って発生しやすいことが知られています。一方で、地上天気図に2000~数千km規模の総観規模擾乱(豆知識6)が明瞭に現れない状況で発生する例も、比較的多く見られます。
図3を見ると、停滞前線(図3の11)や寒冷前線(図3の7)が確認できるケースがあります。一方で、地上天気図上では総観規模の擾乱が確認できないケースも見られます(図3の5、8、9など)。これらの事例では、主に雷雨(いわゆる熱雷)に伴ってダウンバーストが発生しています(表1)。




図3 ダウンバーストが発生した頃の地上実況天気図(15事例)
注)1~15:気象庁提供の日本周辺域 地上天気図(速報天気図)。図3の各番号(1~15)は、表1の番号(1~15)と対応する。ダウンバーストが発生した地点(表1)に、赤の矢印を記入。ただし、図3の天気図の時刻と、表1に示した竜巻発生時刻との間には、多少のずれがある。
地上で観測される気温や風などの特徴
ダウンバースト発生時に地上で観測される、気温や風などの特徴を、竜巻との比較として表2に示します。
まず、風の音についてです。ダウンバーストの場合、竜巻の時にしばしば聞かれるような「ゴー」という轟音はほとんど発生しません。これは、竜巻では渦の中で空気が非常に速い速度で回転し、その結果として低く唸るような連続音が生じるのに対し、ダウンバーストでは空気の回転運動がほとんどなく、空気が一方向に吹き出す現象であるためです。

次に、風・気圧・気温・湿度といった各要素について、表2に示された特徴が、実際の気象観測データにどのように現れているかを確認してみましょう。表3~8は、それぞれ表1に示したNo.4、6、9、10、14、15のダウンバーストの事例において、発生地点周辺で観測された気象データです。
これらの観測地点は、必ずしもダウンバーストの発生地点そのものではないため、表2に示した特徴がすべて明瞭に現れているとは限りません。その点を踏まえたうえで、各気象要素を一つずつ見ていきます。
「強風の吹き始めから終わりまで、風向がほぼ一定である」点と、「気温が下降する」点については、表3~8の赤字で示したデータから確認できます。気圧と湿度の両方が観測されているのは、表5および表6の地点です。このうち、「湿度の上昇」は表5および表6の赤字のデータから、「気圧の上昇」は表5の赤字のデータから、それぞれ確認できます。
なお、表2には示していませんが、湿ったダウンバーストの場合には、強風とほぼ同時に短時間の強い雨が降るという特徴がみられます。この点は、表4、5、7、8の赤字のデータから確認できます。






気象衛星画像と気象レーダー画像の特徴
ダウンバーストの発生時には、その付近に活発な積乱雲が存在することが知られています。また、ダウンバーストの発生時に、レーダー画像では、しばしば強い降水エコーが観測されます。
これらの特徴を、2018年7月16日16時55分に茨城県常陸大宮市で発生したダウンバースト(表1のNo.5)の事例で確認してみましょう。
まずは、雲の特徴です。図4は、同日17時の気象衛星画像です。オレンジ色の矢印で示したダウンバーストの発生地点付近において、可視画像(①)、赤外画像(②)ともに白く、厚くて雲頂高度の高い雲(積乱雲)が確認できます。


図4 2018年7月16日17時の気象衛星による可視画像(①)及び赤外画像(②)
注)①と②:気象衛星画像は高知大学気象情報頁(http://weather.is.kochi-u.ac.jp/) による。画像の見方は、豆知識17を参照。7月16日16時55分にダウンバーストが発生した地点(茨城県常陸大宮市)にオレンジ色の矢印を記入。
次に降水エコーです。図5は、同日17時に気象レーダーで観測された雨雲(レーダーエコー強度)です。赤の+印で示されたダウンバーストの発生地点付近では、強い降水エコーが確認できます。

図5 2018年7月16日17時のレーダーエコー強度
注)水戸地方気象台の現地災害調査報告(2018)の中から抜粋して引用。ダウンバーストが発生した地点に、赤の+印が記入されている。
なお、前掲の表1の15事例のダウンバーストについては、いずれも発生時にレーダー画像で降水エコーが確認されています。また、表には示していませんが、これらのエコーの多くは、比較的強いものでした。
ダウンバーストによる被害
ダウンバーストによる被害の特徴を、竜巻との比較として表9に示します。
竜巻の被害地域は前回の豆知識でも述べたとおり、細い帯状となることが多いです。一方、ダウンバーストの場合、下降気流が地面に衝突し、放射状に周囲へ発散するため、被害地域は「面的」に広がることが多くなります。
積乱雲(親雲)がほとんど移動しない場合、被害の広がりはおおむね円状となります。一方、積乱雲が移動している場合は、地表で外向きに吹き出す風と、積乱雲を移動させている周囲の空気の流れの向きが一致することが多く、その場合、進行方向側で強い風が生じやすく、被害は進行方向に楕円状に広がります。

「ダウンバーストの水平方向の広がりは、数百mから十数km程度」と、前に述べました。実際の被害地域の長さについても、前掲の表1の15事例をみると、500mから18kmの範囲となっています。
また、前回の豆知識で述べたとおり、気象庁では竜巻やダウンバーストなどに伴う突風の風速評定に、2016年3月までは藤田スケール(Fスケール)を用い、2016年4月以降は日本版改良藤田スケール(JEFスケール)を用いています。
前掲の表1には、過去に発生した15事例のダウンバーストについて、JEFスケール(またはFスケール)による評定結果を示しています。改めてご参照いただけると幸いです。
ちなみに「藤田スケール」の考案者である藤田博士は、「ダウンバースト」という用語の命名者でもあります。
過去の気象予報士の試験問題
過去の気象予報士試験において、ダウンバーストに関する問題が出された例を、以下に紹介します。
第63回気象予報士試験 学科

図6 第63回学科 専門知識問11
(a)に関しては、図2と表9を用いて述べたとおり、ダウンバーストは強い下降気流が地表に達して周囲に広がる現象のことで、被害地域は円形あるいは楕円形など⾯的に広がります。よって、問題文(a)は、正しいです。
(b)に関しては、「大きさや湿り具合」の項目で述べたとおり、ダウンバーストの水平方向の広がりは、数百mから十数km程度です。よって、問題文(b)は、誤りです。
(c)に関しては、図2を用いて述べたとおり、降水粒子が蒸発すると空気が冷却され、下降気流が強まり、ダウンバーストが発生しやすくなります。よって、問題文(c)は、誤りです。
(d)に関しては、「ダウンバーストによる被害」の項目で述べたとおり、ダウンバーストに伴う突風の風速評定についても、日本版改良藤田スケール(JEFスケール)を用いています。よって、問題文(d)は、正しいです。
第58回気象予報士試験 学科

図7 第58回学科 専門知識問10
表2や表9などを用いて述べた内容を考慮すると、竜巻の場合、倒れている方向は(a)、聞き取り結果は(イ)となります。また、ダウンバーストの場合、倒れている方向は(b)、聞き取り結果は(ウ)となります。よって、これらの組み合わせとして適切なものは②となります。
第57回気象予報士試験 学科

図8 第57回学科 一般知識問10
(a)に関しては、図2を用いて述べたとおり、ダウンバーストが発生するのは、積乱雲が成熟期に入ってからです。よって、問題文(a)は、誤りです。
(b)に関しては、図2を用いて述べたとおり、氷粒子は落下する際に周囲の空気を引きずり下ろし、下降気流を発生させます。また、融解すると周囲の空気を冷却して下降気流を強めます。よって、問題文(b)は、正しいです。
(c)に関しては、図2を用いて述べたとおり、降水粒子が蒸発すると空気が冷却され、下降気流が強まり、ダウンバーストが発生しやすくなります。よって、問題文(c)は、誤りです。
第54回気象予報士試験 学科

図9 第54回学科 一般知識問7
図10は、答えを導くうえでヒントとなる情報を整理したものです。円柱の図は、ポイントを絞って簡略化しています。
緑の部分に、上から補給される空気の量は、
500×500×π×20・・・A
1000m(R)の地点での風速をv (m/s) とすると、黄色の部分から外側に流れ出す空気の量は、
2×1000×π×50×v・・・B
Aの補給される空気の量と、Bの流れ出す空気の量が等しくなるので、
500×500×π×20=2×1000×π×50×v
よって、vは50 (m/s) となり、本問の解答は③となります。

図10 第54回学科試験(一般知識問7)の答えを導くうえでヒントとなる情報
第52回気象予報士試験 学科

図11 第52回学科 専門知識問9
(a)に関しては、表9を用いて述べたとおり、被害地域の形状は、円形や楕円形となる特徴があります。よって、問題文(a)の下線部は、正しいです。
(b)に関しては、「大きさや湿り具合」の項目で述べたとおり、ダウンバーストの水平方向の広がりは、最大で十数km程度に達することもあります。よって、問題文(b)の下線部は、誤りです。
(c)に関しては、図2を用いて述べたとおり、積乱雲の雲底下が乾燥している場合、下降気流はさらに強まります。よって、問題文(c)の下線部は、誤りです。
第45回気象予報士試験 学科

図12 第45回学科 専門知識問9
(a)に関しては、表2や表5を用いて述べたとおり、短時間に地上の気圧が変化することが多いです。よって、問題文(a)の下線部は、正しいです。
(b)に関しては、「大きさや湿り具合」の項目で述べたとおり、ダウンバーストの水平方向の広がりは、数百mから十数km程度です。よって、問題文(b)の下線部は、誤りです。
(c)に関しては、表9を用いて述べたとおり、被害地域の形状は、円形や楕円形となる特徴があります。よって、問題文(c)の下線部は、正しいです。
第39回気象予報士試験 学科

図13 第39回学科 専門知識問10
(d)に関しては、表9を用いて述べたとおり、被害地域の形状は、円形や楕円形となる特徴があります。よって、問題文(d)は、正しいです。
第38回気象予報士試験 学科

図14 第38回学科 一般知識問9
(a)に関しては、図2を用いて述べたとおり、ダウンバーストが発生するのは、積乱雲が成熟期に入ってから(衰弱期にかけて)です。よって、問題文(a)は、正しいです。
(b)に関しては、図2を用いて述べたとおり、降水粒子は落下する際に周囲の空気を引きずり下ろし、下降気流を発生させます。また、氷粒子が融解すると周囲の空気を冷却して下降気流を強めます。よって、問題文(b)は、正しいです。
(c)に関しては、図2を用いて述べたとおり、降水粒子が蒸発すると空気が冷却され、下降気流が強まります。よって、問題文(c)は、誤りです。
(d)に関しては、「大きさや湿り具合」の項目で述べたとおり、ダウンバーストの水平方向の広がりは、最大で十数km程度に達することもあります。よって、問題文(d)は、誤りです。
第28回気象予報士試験 学科

図15 第28回学科 専門知識問9
(c)には、表9を用いて述べた内容を考慮すると、“円状または楕円状” の語句が入ります。
第27回気象予報士試験 学科

図16 第27回学科 一般知識問8
(a)に関しては、「積乱雲の3つのステージ」の項目で述べたとおり、単一セルの積乱雲の寿命は通常30~60分程度です。よって、問題文(a)の下線部は、誤りです。
(b)に関しては、図2を用いて述べたとおり、氷粒子は融解すると周囲の空気を冷却して下降気流を強めます。よって、問題文(b)の下線部は、正しいです。
(c)に関しては、図2を用いて述べたとおり、ダウンバーストは強い下降気流が地表に達して周囲に広がる現象のことです。よって、問題文(c)の下線部は、正しいです。
第19回気象予報士試験 学科

図17 第19回学科 専門知識問8
①に関しては、図2を用いて述べたとおり、摩擦(抗力、巻き込み)によって周囲の空気を引きずり下ろすことで下降気流が発生します。よって、問題文①の下線部は、正しいです。
②に関しては、図2を用いて述べたとおり、氷粒子が融解し、その相変化に伴う潜熱が周囲の空気から奪われます。よって、問題文②の下線部は、正しいです。
③と④に関しては、図2を用いて述べたとおり、乾燥している場合、落下してきた雨粒は蒸発(氷粒子の場合は昇華)しやすくなります。よって、問題文③と④の下線部は、どちらも正しいです。
⑤に関しては、「ダウンバーストによる被害」の項目で述べたとおり、ダウンバーストの場合、下降気流が地面に衝突し、放射状に周囲へ発散するため、被害地域は面的に広がることが多くなります。よって、問題文⑤の下線部は、誤りです。
第4回気象予報士試験 学科

図18 第4回学科 一般知識問8
図19は、答えを導くうえでヒントとなる情報を整理したものです。
緑の部分に、上から補給される空気の量は、
1000×1000×π×20・・・A
2000mの地点での風速をv (m/s) とすると、黄色の部分から外側に流れ出す空気の量は、
2×2000×π×100×v・・・B
Aの補給される空気の量と、Bの流れ出す空気の量が等しくなるので、
1000×1000×π×20=2×2000×π×100×v
よって、vは50 (m/s) となり、本問の解答は②となります。

図19 第4回学科試験(一般知識問8)の答えを導くうえでヒントとなる情報
さいごに
今回の豆知識では、積乱雲の発達段階を整理したうえで、ダウンバーストの発生メカニズムや、発生時に観測される気象要素の特徴などについてお話しました。
ダウンバーストは、地上の建築物に被害を及ぼすだけでなく、航空機の離着陸に深刻な影響を与えることもある、きわめて危険性の高い現象です。一方で、その水平スケールは小さく、寿命も短いため、数値予報やレーダー観測技術が高度化した現在においても、発生の把握や予測は容易ではありません。
ダウンバーストの発生時には、強風に加えて降雹(ひょう)が観測されることもあります。例えば、1996年に茨城県で発生したダウンバーストでは、最大直径8cmの雹が確認されたとの報告があります。
こうした局地的かつ突発的な現象が生じ、その予測が容易でないこと。それは、積乱雲に伴う気象現象がいかに多様で複雑であるかを改めて示していると言えるでしょう。
今回の豆知識で参考にした図書等
●岩槻秀明(2017) 気象学のキホンがよ~くわかる本(第3版),秀和システム
●上田 博(2001)航空機の離着陸に影響する下層風の構造と発生機構,日本航空宇宙学会誌49: 306-310
●大野久雄(1993)マイクロバースト/ダウンバースト,天気40: 63-67
●大野久雄,鈴木 修,楠 研一(1996)日本におけるダウンバーストの発生実態,天気43: 101-112
●小倉義光(1994) お天気の科学-気象災害から身を守るために-,森北出版
●小倉義光(1999) 一般気象学(第2版),東京大学出版会
●加藤輝之(2017) 図解説 中小規模気象学,気象庁
●気象庁のwebサイト
●気象庁(2015)日本版改良藤田スケールに関するガイドライン(2024年最終改正),気象庁
●気象業務支援センターのwebサイト
●高知大学のwebサイト(気象情報項)
●小林文明(2021)新訂 竜巻 メカニズム・被害・身の守り方,成山堂書店
●竹見哲也(2012)ダウンバーストとガスとフロント:積乱雲による突風現象,日本風工学会誌37: 172-177
●中島俊夫(2022)イラスト図解 よくわかる気象学 実技編,ナツメ社
●村松貴有,川村隆一(2012)日本におけるダウンバースト発生の環境場と予測可能性,天気59: 827-845
●水戸地方気象台(2018)平成30年7月16日に茨城県常陸大宮市で発生した突風について,平成30年9月28日 現地災害調査報告
●Fujita, T.T. (1985) The downburst: Microburst and macroburst, Report No. UCP/GS-85-1, University of Chicago, Department of Geophysical Sciences
●文字信貴,小元敬男(1985)ダウンバーストとその被害,日本風工学会誌23: 37-51
