【豆知識45】ガストフロント|ガスト(gust)は突風、フロント(front)は前線を意味し、突風前線とも呼びます

はじめに

 寒冷前線を英語でコールドフロント(cold front)と呼ぶように、気象分野ではフロント前線のことを指します。今回のテーマは、「ガストフロント」です。ガスト(gust)は突風を意味し、ガストフロントを直訳すると突風前線となります。
 ガストフロントは、積乱雲からの下降気流が地面に衝突し、水平に発散する冷気外出流の先端部分に形成される現象です。以下では、ガストフロントの発生メカニズム、発生時に観測される気象要素の特徴などについて、図を用いながらお話します。
 また、ガストフロント上でしばしば発生する、アーク雲と呼ばれる特殊な雲についても触れます。さらに、ガストフロントに関連する過去の気象予報士試験の問題も紹介します。

ガストフロントとは

ガストフロントとアーク雲

ガストフロント

 豆知識44では、「ダウンバーストとは、発達期から衰弱期の積乱雲内で生じた強い下降気流が地表に到達し、冷気外出流として水平方向に広がる過程を指す」と述べました。
 ガストフロントは、このような冷気外出流の先端部に形成されます(図1)。よって、ダウンバーストとガストフロントは密接に関連しています。
 では、ガストフロントの形成はすべてダウンバーストに起因するのでしょうか。気象庁のウェブサイトでのガストフロントの説明では、「積乱雲」や「冷たい(重い)空気の塊」などの用語が使われていますが、「ダウンバースト」という言葉は登場しません。
 このように、ガストフロントの形成は積乱雲に伴う冷気外出流全般に起因しており、必ずしもダウンバーストのような猛烈な風に限定されるわけではありません。それでも、「ダウンバースト」と「ガストフロント」が一緒に語られることが多い点には留意する必要があります。

図1 ガストフロントとアーク雲(断面図)

 もう少し詳しくガストフロントを見ていきましょう(図1)。
 冷気外出流の先端では、冷気の塊と周囲の暖湿気との間に局地的な前線の一種が形成され、その部分がガストフロントです。冷気(重い)が暖気(軽い)の下に潜り込むので、ガストフロントは寒冷前線(豆知識37)と似た構造を示します。
 ガストフロントでは、冷気外出流が反転する鉛直循環(ヘッドの循環)が形成されます。このヘッドと呼ばれる部分は、冷気外出流の層の厚さの約2倍に達することもあり、特徴的な構造を示します。

アーク雲

 ガストフロント付近では、冷気(重い)が暖気(軽い)の下に潜り込むので、強い上昇気流が発生し、灰色から黒っぽく見える「アーク雲と呼ばれる特殊な雲がしばしば発生します(図1、2)。一般的に冷気外出流は地表に沿って放射状に広がるので、その先端で水平方向に曲がった弓の形(arc:アークの雲が形成されやすいのです。 
 ガストフロント上空のアーク雲は、暖湿気が上昇して凝結することによって発生し、一般にその雲底および雲頂高度は積乱雲に比べ低いことが知られています(図2)。
 また、アーク雲は積乱雲の前面下層に形成されるため、積乱雲に先行する形で認識されます。庇(ひさし)のように突出した雲と、先端のロール状の雲が特徴的です。ただし、その形態は一定ではなく、積雲がアーク状に並ぶこともあれば、複雑で判別しにくい場合もあります。

図2 ガストフロントとアーク雲(斜め前から見た図)

新たに形成される積乱雲

 ガストフロントの先端で、新たな積乱雲が形成されることがあります。
 図3をご覧ください。上層では西風、下層では東風が吹いているとします。この場合、積乱雲(①)に、湿った下層風(②)が流入して上昇気流となり、下降気流(③)は主に雲の西側にあります。
 積乱雲からの冷気外出流(④)は地表面に沿って四方に広がります。このうち積乱雲の東側では、下層の東風(⑤)と衝突します。衝突した空気は地表付近で行き場を失うため、上昇に転じます(⑥)。
 上昇気流が凝結高度(豆知識16)に達すると、ここで雲が発生します。大気が条件付き不安定(豆知識16)で、この上昇気流が強く、下層の空気が自由対流高度(豆知識16)まで達すると、この雲は発達します(⑦)。

図3 新たに形成される積乱雲

 もとの積乱雲(①)を親雲、新しくできた雲(⑦)を子雲とも呼びます。子雲が成長して積乱雲となる頃には、親雲は衰えます。これは、当初は下層風によって親雲へ流入していた水蒸気(②)が、次第に子雲の方へ流れ込むようになり(⑤)、親雲への水蒸気供給が弱まるためです。

 なお、アーク雲(図1、2)の場合は、前述のとおり、その雲底高度は一般的な雲よりかなり低いことが知られています。つまり、アーク雲(図1、2)は、ガストフロントと連動して見える現象(視覚的特徴)の一部であり、新たに形成される積乱雲(図3)とは区別されます。

日本で発生したガストフロント

発生の分布図

 図4は、1991~2025年に気象庁が確認したダウンバーストまたはガストフロントの発生の分布です(気象庁Webサイトより引用)。
 ダウンバースト・ガストフロントの発生確認地点は北海道から沖縄まで広く分布し、関東地方北西部で特に発生が目立ちます。また、内陸部と沿岸部とでその地点数を比較すると、竜巻は沿岸部に集中しているのに対し(豆知識43)、ダウンバースト・ガストフロントの場合は、内陸部でやや多い傾向がみられます(図4)。

図4 ダウンバーストまたはガストフロントの発生分布図(1991~2025年)
注)気象庁のwebサイト(竜巻等の突風データベース)から引用(2026年2月13日更新のデータ)

発生事例

 気象庁のwebサイト(竜巻等の突風データベース)では、突風(竜巻、ダウンバースト、ガストフロント等)の事例一覧が整理されています。各事例における現象区別の中には、「竜巻」「ダウンバースト」「ガストフロント」「ダウンバーストまたはガストフロント」などがあります。
 このうち、「ガストフロント」と分類されている事例の中から16事例を抽出し、表1にまとめました。

地上で観測される気温や風などの特徴

 ガストフロントが通過すると、突風風向の急変が起こります。積乱雲から下降した冷たくて湿った空気の領域に入ることで気温が低下し、湿度が上昇します。また、通過時に一時的に気圧が上昇することがあります。気圧が上昇する理由として、流れ込む冷たい空気塊の密度が大きいことに加え、ガストフロント付近で気流が衝突する際に空気がわずかに圧縮されることが挙げられます。ガストフロントの通過に伴って、短時間に強いが降る場合もあります。
 蒸し暑い夏、夕立ちの前に突然ひんやりした風を感じることがありますね。あれがまさに、ガストフロントの通過です。

 ガストフロント通過時にみられる、上記の風や気温などの各要素の特徴が、実際の気象観測データ(10分ごとのデータ)にどのように現れているかを確認してみましょう。表2~8は、それぞれ表1に示したNo.2、3、6、7、8、10、14のガストフロントの事例において、発生地点周辺で観測された気象データです。

 これらの観測地点は、必ずしもガストフロントの発生地点そのものではないため、さきほど述べた特徴がすべて明瞭に現れているとは限りません。その点を踏まえたうえで、各気象要素を見ていきます。

 「突風」「気温の低下」「短時間の降雨」は、表2~8の赤字で示したデータから確認できます。気圧と湿度の両方が観測されているのは、表2、3、8の地点です。このうち、「気圧の上昇」は表2、3、8の赤字のデータから、「湿度の上昇」は表2、8の赤字のデータから、それぞれ確認できます。

ガストフロントによる被害

 ガストフロントの水平の広がりは、竜巻やダウンバーストより大きく数十から100km程度に及ぶ場合があります。前掲の表1に示した被害地域の長さについても、30km以上に及ぶ事例(No.8)が見られます。
 気象庁では竜巻(豆知識43)やダウンバースト(豆知識44)に加え、ガストフロントに伴う突風の風速評定にも、2016年3月までは藤田スケール(Fスケール)を用い、2016年4月以降は日本版改良藤田スケール(JEFスケール)を用いています。
 ガストフロントは、ダウンバーストなどに伴う冷気外出流の先端部分に形成されため、一般にダウンバースト本体の風速より弱い傾向があります。

アーク雲と考えられる雲の観察事例

 積乱雲に伴う短時間強雨が見られた際、アーク雲と考えられる雲を観察した事例を紹介します。
 図5①は、2015年7月19日17時頃に、南南東の方向に向かって撮影した写真です。図5②はその時の気象衛星画像(赤外画像)です。①の対流雲の底は非常に暗く、さらに赤外画像(②)で白く写っていることから、雲頂高度の高い積乱雲であることが分かります。
 雲底下が周囲より暗く見える部分は、雲底から地面へ向かって落下する降水域(降水のすじ)と考えられます。

図5  2015年7月19日17時頃の撮影写真(①)と気象衛星画像(②)
注)①は南南東の方向に向かって筆者が撮影。②の矢印は、①の撮影方向を示す。衛星画像は高知大学気象情報頁(http://weather.is.kochi-u.ac.jp/) による。画像の見方は、豆知識17を参照。②の矢印の先端は、①の撮影地点を示す。

 図6①、図7①、図8①は、それぞれ17時11分、17時14分、17時20分に撮影した写真です。雲底が暗い積乱雲、撮影者の方に接近している様子がわかります。また、積乱雲の前面下層付近を縁取るように、暗灰色の細長い雲が確認でき、これはアーク雲と考えられます。
 図6②、図7②、図8②は、それぞれ17時10分、17時15分、17時20分の気象レーダー画像(降水エコー強度)です。画像中の★は積乱雲の撮影地点、矢印はその撮影方向を示します。強い降水エコーが撮影地点(★)に接近していることが確認できます。

図6  2015年7月19日17時10分頃の撮影写真(①)と気象レーダー画像(②)
注)①は南南東の方向に向かって筆者が撮影。②は気象庁提供。②の矢印は①の撮影方向を示し、★は撮影地点を示す。

図7  2015年7月19日17時15分頃の撮影写真(①)と気象レーダー画像(②)
注)注釈は、図6を参照。

図8  2015年7月19日17時20分の撮影写真(①)と気象レーダー画像(②)
注)注釈は、図6を参照。

 図9①③、図10①③、図11①は、それぞれ17時24分と26分、17時28分と29分、17時34分に撮影した写真です。17時29分の雲の写真(図10③)は、雨が降り始めたため車内から撮影しました。17時34分の写真(図11①)は、強い降雨の中、車外に出て地面に当たって跳ねる雨粒を撮影したものです。
 図9②、図10②、図11②は、それぞれ17時25分、30分、35分の気象レーダー画像(降水エコー強度)です。強い降水エコー域が撮影地点(★)を通過していく様子が確認できます。

図9  2015年7月19日17時25分頃の撮影写真(①、③)と気象レーダー画像(②)
注)注釈は、図6を参照。

図10  2015年7月19日17時30分頃の撮影写真(①、③)と気象レーダー画像(②)
注)③は車内から撮影。その他の注釈は、図6を参照。

図11  2015年7月19日17時35分頃の撮影写真(①)と気象レーダー画像(②)
注)①は、車外に出て降雨の状況を撮影。②は気象庁提供。★は撮影地点を示す。

 次に、私が雲を観察(撮影)した地点から約5km南に位置する佐賀地方気象台の観測データを、表9に示します。
 表2~8の事例ほど顕著ではありませんが、17時30分頃に風向が変化し、強い風が観測されました。さらに、この時刻に気温の低下、湿度の上昇、短時間の降雨が確認されました。

過去の気象予報士の試験問題

 過去の気象予報士試験において、ガストフロントに関する問題が出された例を、以下に紹介します。

第64回気象予報士試験 学科

図12 第64回学科 一般知識問9

 (a)に関しては、図1を用いて述べたとおり、ガストフロントは積乱雲の発達期から衰弱期に発生します。よって、問題文(a)は、誤りです。
 (b)に関しては、「ガストフロントによる被害」の項目で述べたとおり、ガストフロントの水平の広がりは、数十から100km程度に及ぶ場合があります。よって、問題文(b)は、誤りです。
 (c)に関しては、「地上で観測される気温や風などの特徴」の項目で述べたとおり、ガストフロントが通過すると、一般的に気温は低下し、気圧と湿度は上昇します。よって、問題文(c)は、誤りです。

第59回気象予報士試験 学科

図13 第59回学科 一般知識問9

 (a)に関しては、図1を用いて述べたとおり、ガストフロントは冷気外出流の先端が、周囲の暖湿気衝突する部分に形成されます。よって、問題文の下線部(a)は、正しいです。
 (b)に関しては、「地上で観測される気温や風などの特徴」の項目で述べたとおり、ガストフロントが通過すると、一般的に気圧は上昇します。よって、問題文の下線部(b)は、誤りです。
 (c)に関しては、「ガストフロントによる被害」の項目で述べたとおり、ガストフロントの水平の広がりは、数十から100km程度に及ぶ場合があります。よって、問題文の下線部(c)は、誤りです。

第50回気象予報士試験 学科

図14 第50回学科 一般知識問9

 (a)に関しては、豆知識44の図2を用いて述べたとおり、積乱雲の中では、氷粒子が落下するときに周りの空気が引きずりおろされます。よって、問題文(a)の下線部は、正しいです。
 (b)に関しては、豆知識44の図2を用いて述べたとおり、雨粒の蒸発や氷粒子の融解などにより空気が冷却されます。また、冷却された空気は重たいので、積乱雲の下では、冷気の塊である局地的な高気圧ができ、そこから周囲に冷気が流れ出します。よって、問題文(b)の下線部は、正しいです。
 (c)に関しては、「地上で観測される気温や風などの特徴」の項目で述べたとおり、ガストフロントが通過すると、一般的に気温は低下し、湿度と気圧は上昇します。よって、問題文(c)の下線部は、誤りです。
 (d)に関しては、図3を用いて述べたとおり、新たな積乱雲が形成されることがあります。よって、問題文(d)の下線部は、正しいです。

第47回気象予報士試験 学科

図15 第47回学科 専門知識問8

 (a)に関しては、「地上で観測される気温や風などの特徴」の項目で述べたとおり、ガストフロントが通過すると、一般的に気圧は上昇します。よって、問題文の下線部(a)は、誤りです。
 (b)に関しては、「ガストフロントによる被害」の項目で述べたとおり、ガストフロントの水平の広がりは竜巻やダウンバーストより大きく、数十から100km程度に及ぶ場合があります。よって、問題文の下線部(b)は、正しいです。
 (c)に関しては、図1と2を用いて述べたとおり、ガストフロント付近では、アーク雲と呼ばれる雲がしばしば発生します。よって、問題文の下線部(c)は、誤りです。

第39回気象予報士試験 学科

図16 第39回学科 一般知識問9

 (a)、(b)に関しては、「地上で観測される気温や風などの特徴」の項目で述べた内容を考慮すると、(a)には “気温”、(b)には “増加” の語句がそれぞれ入ります。
 (c)には、図1と2を用いて述べた内容を考慮すると、“アーク雲” の語句が入ります。

第31回気象予報士試験 学科

図17 第31回学科 専門知識問10

 (d)に関しては、問題文の前半のとおり、積乱雲の下では冷却された空気が地上付近に生成されます。この空気は重いので局地的な高気圧ができ、そこから周囲に冷気が流れ出します。図1を用いて述べたとおり、この冷気外出流の先端に発生する局地前線がガストフロントです。よって、問題文(d)の下線部は、正しいです。

第28回気象予報士試験 学科

図18 第28回学科 専門知識問9

 (b)には、「地上で観測される気温や風などの特徴」の項目で述べた内容を考慮すると、“気圧” の語句が入ります。

第24回気象予報士試験 学科

図19 第24回学科 専門知識問9

 (b)に関しては、豆知識44の図2および今回の豆知識の図1を用いて述べたとおり、ガストフロントは、積乱雲からの冷気下降流が地面に衝突して周辺に流れ出した先端部分に形成される突風前線です。よって、問題文(b)は、正しいです。

さいごに

 今回取り上げたアーク雲は、その形状からアーチ雲や棚雲とも呼ばれます。かつては「雷雲の襟」と表現されたこともありました。
 いずれにしても、このアーク雲によってガストフロントの形状が可視化されます。そのため、アーク雲はガストフロントによる突風の前兆を示す、身を守るための重要なサインとなります。
 豆知識43では竜巻、豆知識44ではダウンバースト、そして今回の豆知識45ではガストフロントを取り上げました。これらに伴う突風については、気象庁のwebサイト(竜巻等の突風データベース)に詳しくまとめられています。豆知識43~45で紹介した突風の事例は、その中の一部に過ぎません。興味がある方は、気象庁のwebサイトもご覧になってはいかがでしょうか。

今回の豆知識で参考にした図書等

●荒木健太郎(2014)雲の中では何が起こっているのか,ペレ出版
●岩槻秀明(2017) 気象学のキホンがよ~くわかる本(第3版),秀和システム
●岩槻秀明(2021) 雲の図鑑,日本文芸社
●上田 博(1989) Gust Front(ガストフロント),天気,36: 484
●小倉義光(1994) お天気の科学-気象災害から身を守るために-,森北出版
●小倉義光(1999) 一般気象学(第2版),東京大学出版会
●小倉義光(1999) メソ気象力学の基礎(III),天気46: 669-676 
●加藤輝之(2017) 図解説 中小規模気象学,気象庁
●気象庁のwebサイト
●気象庁(2015)日本版改良藤田スケールに関するガイドライン(2024年最終改正),気象庁
●気象業務支援センターのwebサイト
●高知大学のwebサイト(気象情報項)
●小林文明(1996)ガストフロントに伴って形成されたアーク状の雲,天気43: 727-728 
●小林文明(2021)新訂 竜巻 メカニズム・被害・身の守り方,成山堂書店
●小林文明,鈴木菊男,菅原広史,前田直樹,中藤誠二(2007)ガストフロントの突風構造,日本風工学会誌32: 21-28
●中島俊夫(2022)イラスト図解 よくわかる気象学 実技編,ナツメ社
●村松貴有,川村隆一(2012)日本におけるダウンバースト発生の環境場と予測可能性,天気59: 827-845 
●吉﨑正憲,加藤輝之(2007) 豪雨・豪雪の気象学,朝倉書店

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