【豆知識29】国際式天気記号(雲の状態と雲量)|過去に気象予報士試験で出題された事例も紹介

はじめに

 前回、雲は国際的な分類方法によって10種類に分類することができ、これを10種雲形と呼ぶことを紹介しました。
 今回は、国際式天気記号において、これらの雲がどのように表現されるのか、お話します。関連して、過去に気象予報士試験で出題された事例も紹介します。
 まずは、国際式天気記号について、少し復習しましょう。

国際式天気記号に記入される雲の情報

 図1は、豆知識27に掲載した図の左側を抜粋したものです。国際式天気記号には、雲の種類を表す項目もあります。
 空を見上げると、2種類以上の雲が観測される場合がありますね。世界気象機関(WMO)では、気象資料の交換にあたって個々の雲形でなく空全体の特徴を表すものとして「雲の状態」を観測し、通報するように定めています。「雲の状態」の観測にあたっては、全体的な雲の種類の傾向が、あらかじめ類別化され、それぞれに対応する記号が定められています。

図1 国際式天気記号に記入される代表的な記号や数値

 それらの記号は、図1の緑色で示した「上層雲」「中層雲」「下層雲」の場所に記入します。記号の詳細は、後で述べます。
 また、国際式天気記号の場合、地点円の中に全雲量を示す記号が記入されます。全雲量とは、空全体(全天)を観測したときに、空を覆う雲の割合を記号化(数値化)したものです。
 さらに、地点円の右下、つまり図1の紫色の場所には、下層雲の雲量(数値)で記入されます。下層雲がなく、中層雲が観測されている場合は、中層雲の雲量が記入されます。

雲の状態

雲の状態を表す記号

 前述のとおり「雲の状態」の観測にあたっては、全体的な雲の種類の傾向が、あらかじめ類別化され、それぞれに対応する記号が定められています。上層雲(C)の状態については、主に巻雲巻積雲巻層雲を対象とし、その状態を0~9に分類し、記号で表します(表1-1、1-2)。
 例えば、C-1の「杖」のような形をした記号は、「繊維状の巻雲が分散していて増加しない状態」を表します。C-2の「杖の持ち手(湾曲部分)が二重」になったような形の記号は、「積乱雲から生じたものでない濃い巻雲がある状態」を表します。
 また、C-9の「杖」のような形(巻雲)と、「二つこぶ」のような形を組み合わせた記号は、「主として巻積のみが存在する状態」を表します。

  

 中層雲(CM)の状態については、主に高積雲高層雲乱層雲を対象とし、その状態を0~9に分類し、記号で表します(表2-1、2-2)。
 例えば、CM-1の「三角定規の鋭角部分」のような形をした記号は、「薄い高層雲がある状態」を表します。CM-2の「三角定規の鋭角部分の上部が二重」になったような形の記号は、「厚い高層雲又は乱層雲がある状態」を表します。

  

 下層雲(C)の状態については、主に層積雲層雲積雲積乱雲を対象とし、その状態を0~9に分類し、記号で表します(表3-1、3-2)。
 例えば、CL-6の「直線」の記号は、「層雲又は層雲からちぎれた雲片が存在しているか,若しくはそれらが共存している状態」を表します。CL-5の「直線+一つこぶ」のような形の記号は、「積雲からひろがってできたものでない層積がある状態」を表します。
 また、CL-1の「一つの饅頭」のような形の記号は、「発達していない扁平な積雲がある状態」を表し、CL-1(積雲)とCL-5(層積雲)とが組み合わさった記号(CL-8)は「積雲及び積雲からひろがってできたものでない層積雲が共存している状態」を表します。
 さらに、CL-2の「二つ重ねの饅頭」のような形の記号は、「並又はそれ以上に発達した積雲がある状態」を表し、CL-2の「の饅頭の上部が平」な形の記号は、「雲頂が明らかに巻雲状をなし,多くは,かなとこ状を呈している積乱雲がある状態」を表します。
 以上のように、雲の状態は、「雲の形」や「複数の雲の組み合わせ」がイメージしやすいように、記号化されています。

   

気象予報士試験での出題例

 雲形の記号(雲の状態)に関する気象予報士試験での出題例を、表4-1~4-6に示します。出題例は、過去約20年の試験問題の中からピックアップしていますが、その期間中の全ての問題を網羅的に掲載しているわけではありません。
 例えば表3-1の説明のとき、CL-2の記号は、「並又はそれ以上に発達した積雲がある状態」を表すことを述べました。気象予報士試験の場合は、ここまで詳しい記述は求められないようです。すなわち、CL-2の記号について問われる場合は、代表的な雲である「積雲」を記述させる形式となっています(63回実技2、57回実技1など)。
 ちなみに、雲形が国際名の略号(Cu、Scなど)で問われた52回実技2の解答形式に関しては、記述式ではなく、選択式となっていました。
 過去の出題の全般的な傾向として、表4-1~4-5をみると、「CM-3(高積雲)」「CL-2(積雲)」「CL-8(積雲と層積雲)」などの記号に関する出題が多いようです。

  

雲量

全雲量を表す記号

 前述のとおり、空全体(全天)を観測したときに、空を覆う雲の割合を数値化したものを、全雲量と呼びます。全雲量の記号・値、及び天気を表5に整理しました。
 実際に雲量を観測するときは、10分雲量を用います。これを国際間で通報する際には、8分雲量に変換します(表5)。このため、国際式天気記号の場合、地点円の中に記入する全雲量は(図1)、8分雲量を記号化して記入されます(表5)。
 雨や雪などの大気現象がない場合、全雲量から「快晴・晴・曇」の天気を判別することができます。つまり、10分雲量で0~1(8分雲量で0~1)は快晴、10分雲量で2~8(8分雲量で2~6)は、10分雲量で9~10(8分雲量で7~8)はとなります(表5)。なお、雲の天気において、上層雲が主体である場合、その天気は薄曇となります。

気象予報士試験での出題例

 雲量に関する気象予報士試験での出題例を、表6-1~6-2に示します。これらの事例に関しては、国際式天気記号に関連する出題であることから、雲量は8分雲量で解答することになります。
 このうち53回実技2(黄色)、及び52回実技2(黄色)は全雲量に関するもの。その他は、下層(中層)雲に関する出題です。
 前述のとおり、地点円の右下には下層雲の雲量が記入されますが(図1)、下層雲がなく、中層雲が観測されている場合は、中層雲の雲量が記入されます。ここで、58回実技2(青色)をみてみましょう。地点円の下に下層雲の状態を表す記号がなく、地点円の上に中層雲の状態を表す記号はあります。つまり、下層雲がなく、中層雲は観測されています。このため地点円の右下の数値「2」は、中層雲の雲量を表しています。
 なお、58回実技2(青色)、50回実技1(青色)では、雲形についても問われています。

さいごに

 今回は、「雲の状態」「雲量」を表す記号を中心に、お話しました。このうち、「雲の状態」については記号の種類が多く、丸暗記しようとすると大変です。前述のとおり、雲の状態は、「雲の形」や「複数の雲の組み合わせ」がイメージしやすいように、記号化されています。
 例えば、雲の厚みが増す場合は、記号を構成する直線の数が増える(表2:CM-1→CM-2)、曲線の数が増える(表1:CH-1→CH-2)など、直感的に分かりやすくなるような工夫がされています。また、高積雲から乱層雲への変化(表2:CM-1→CM-2)、積雲→発達した積雲→積雲から変わって間もない積乱雲→かなとこ状を呈した積乱雲への変化(表3:CL-1→CL-2→CL-3→CL-9)など、雲の変化(発達)の過程がイメージしやすいよう考慮した記号化が図られています。
 このように、雲の状態の記号は、その意味を考えながら整理するとよさそうですね。

今回の豆知識で参考にした図書等

●安斎政雄(1998) 新・天気予報の手引(改訂29版),日本気象協会
●岩槻秀明(2024) 天気図の読み方がよ~くわかる本(第3版),秀和システム
●気象庁のwebサイト
●気象庁(1998)気象観測の手引き,気象庁
●気象業務支援センターのwebサイト
●中島俊夫(2022)イラスト図解 よくわかる気象学 実技編,ナツメ社
●福地 章(1999)高層気象とFAXの知識(第7版),成山堂書店

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