はじめに
天気図によっては、観測地点ごとに、天気記号を用いて観測実況値が記入されていることがあります。天気記号には国際式、国内式などがあります。その中で、アジア太平洋域 地上天気図(豆知識25)で用いられ、また、気象予報士試験で出題される頻度が高いのは、国際式天気記号です。
そこで、今回は、国際式天気記号を取り上げます。
国際式天気記号に記入される情報
国際式天気記号には、観測された天気や気象データが、記号や数値で記入されています(図1)。今回は、その中で「現在天気」「過去天気」「気圧の変化量・変化傾向」に焦点をあてます。
なお、現在天気、過去天気などの記号は、観測を有人観測所で行ったか、自動観測所で行ったかによって異なります。今回は、気象予報士試験での出題頻度が高い、有人観測による記号を取り上げます。両者の違いが気になる方は、気象庁のwebサイトなどでご確認ください。

図1 国際式天気記号に記入される代表的な記号や数値
現在天気の記号
代表的な現在天気の記号
現在天気の記号は、図1で示したとおり、地点円の左側に記入されます。国際式の場合、現在天気(有人観測所)の記号は約100種類あります。このうち、代表的な記号を表1-1~表1-5に示します。





これらの天気記号のうち、コード番号(番号)25番、80番、81番で示した「しゅう雨」は、あまり聞きなれない言葉かもしれません。しゅう雨(驟雨)(Rain shower(s))は、対流性の雲から降る雨のことです。降水強度が急に変化し、短時間で止むような一過性のしゅう雨を、にわか雨と呼びます。
しゅう雨に対し、層状性の雲から、しとしとと降る雨を地雨と呼びます。
右側に角括弧 ] が書かれた現在天気記号(例えば25番)は、その現象が観測前1時間内に起き、現在は観測されていないことを意味します。過去天気と間違いやすいのですが、現在天気記号の1つに分類されています。
左側に付した垂直の線は「現象の強化」、右側の線は「現象の衰弱」を意味します。例えば47番は霧が濃くなったこと、43番はうすくなったこと等を表します。カッコ( )の記号は「視界内」を意味します。例えば40番は、霧が視界内にあることを表します。
降水の連続性と強さの表し方
表1で示した、霧雨(50~55番)、雨(60~65番)、および雪(70~75番)の記号は、その連続性と強さの違いによって分けられています。
このうち雨の記号を例にとって、その連続性と強さの違いについて、図を使ってお話します(図2)。●が横に並ぶ場合、1時間前から現在にかけて雨が続いていること(連続性)を表します。●が縦に並ぶ場合、その数が多いほど雨が強くなることを表します。この関係性は、霧雨、雪の場合も全く同じです。

図2 現在天気の記号(雨)における連続性と強さの関係性
気象予報士試験での出題例
国際式天気記号(現在天気)の気象予報士試験での出題例を、表2-1~表2-5に示します。出題例は、過去約15年の試験問題の中からピックアップしていますが、その期間中の全ての問題を網羅的に掲載しているわけではありません。ちなみに、表中のカッコ内には解答例を示していますが、実際の試験問題の解答形式は、記述式又は選択式となっています。
表2-1~表2-5をみると、「止み間がない弱い雨(61番)」「弱いしゅう雨(80番)」「弱いしゅう雪(85番)」などの記号に関する出題が多いようです。





過去天気の記号
代表的な過去天気の記号
過去天気の記号は、図1で示したとおり、地点円の右下に記入されます。日本標準時で3、9、15、21時の天気図の場合、観測時前6時間に起こった天気状態が記号で示されます。0、6、12、18時の場合、観測時前3時間の天気状態が示されます。
代表的な記号を、表3に示します。過去天気の記号は、現在天気の記号に比べ、その種類が少なくなっています。例えば、現在天気の記号は「しゅう雨」「しゅう雪」「しゅう雨性のみぞれ」などに分かれていますが(表1)、過去天気の記号では、しゅう雨性降水(表3、8番)に一本化されています。

気象予報士試験での出題例
国際式天気記号(過去天気)の気象予報士試験での出題例を、表4-1~表4-2に示します。「しゅう雨性降水(8番)」「雷電(9番)」などの記号に関する出題が、比較的多いようです。


気圧変化量・変化傾向
変化量(数値)と変化傾向(記号)
気圧変化量の数値は、図1で示したとおり、地点円の右側に記入されます。気圧変化量は、前3時間の気圧の変化量を表し、上昇(+)又は下降(-)の記号と、その変化量が2桁の数値で記入されています。例えば「+16は、1.6hPa上昇」を意味し、「−24は、2.4hPa下降」を意味します。
気圧変化の記号も、図1で示したとおり、地点円の右側に記入されます。その記号の一覧は、表5のとおりです。

気象予報士試験での出題例
国際式天気記号(気圧変化量・変化傾向)の気象予報士試験での出題例を、表6-1~表6-2に示します。「前3時間に上昇又は下降した気圧変化量の値」に関する出題が、比較的多いようです。


さいごに
今回は、国際式天気記号の中でも「現在天気」「過去天気」「気圧の変化量・変化傾向」に焦点をあてました。現在天気の記号は種類がとても多く、全てを覚えるのは大変です。気象予報士の試験で出題されたことのある記号は、実際の天気図で目にする機会も多いことから、これらを中心に覚えておかれてはどうでしょうか。
次回は、国際式天気記号のうち「上層雲・中層雲・下層雲の状態」「全雲量」などを取り上げる予定です。
今回の豆知識で参考にした図書等
●浅井冨雄,内田英治,河村 武 監修(1999)補強 気象の事典,平凡社
●安斎政雄(1998) 新・天気予報の手引(改訂29版),日本気象協会
●岩槻秀明(2024) 天気図の読み方がよ~くわかる本(第3版),秀和システム
●気象庁のwebサイト
●気象業務支援センターのwebサイト
●中島俊夫(2022)イラスト図解 よくわかる気象学 実技編,ナツメ社
●福地 章(1999)高層気象とFAXの知識(第7版),成山堂書店