天気予報で「上空に寒気が入り、大気の状態が不安定になっています」という言葉を耳にすることがありますね。今回は、この「大気の状態が不安定」について、お話しします。
空気の重さについて
大気の状態を考える前に、空気の重さを考えてみます。写真1は、私が撮影した熱気球です。熱気球は、どうやって空に浮かぶことができるのでしょうか?それは「バーナーを焚いて暖められた球皮(風船)内の空気は、周りの冷たい空気より軽くなる」からです。
冬に部屋の暖房をつけると、天井付近の方が暖かく、足もとが冷たく感じますね。これも、「暖かい空気は軽く、冷たい空気は重い」ためです。

写真1 空に浮かぶ熱気球
大気の状態について
大気ってなんだ?
地球の表面を層状に覆っている気体のことを、地球の大気と言います。この大気の層、すなわち大気圏は、地表から順に、対流圏、成層圏、中間圏、熱圏に分かれます(図1)。

図1 大気圏の区分
対流圏
日々の天気変化をもたらす大気の運動は、ほとんど全て対流圏内(図2)で起こっています。対流圏は平均して約11kmの厚さを持ちます。(対流圏界面の高さは、赤道付近では約16km、高緯度地帯では約8km。また温帯低気圧に伴って低く、高気圧に伴って高くなります)
地球に降りそそぐ太陽エネルギーによって、大気は地表面に近い層から暖められます。このため、対流圏内では、気温は高度と共に減少します。(高度1kmについて約6.5℃の割合で減少)
また、前述のとおり「暖かい空気は、冷たい空気より軽い」ので、上層と下層の大気の交換すなわち対流が起こります。

図2 対流圏の気温の分布(模式図)
注)低温を青、高温を赤で表示。上昇流によって雲が発生したところを、模式的に示した。
「大気の状態が不安定」とは?
寒気を伴う上空の気圧の谷や寒冷渦(今後の豆知識で取り上げます)が接近して上層に冷たい空気が入る、又は低気圧や前線の影響で下層に暖かい湿った空気が流れ込むと、上層と下層との温度差がより大きくなり、対流活動が強まります(図3)。このことを「大気の状態が不安定になる」といいます。
大気の状態が不安定なときは、上昇流が強まり、積乱雲が発生・発達しやすくなります。積乱雲は、急な強い雨や激しい突風などの現象をもたらします。

図3 対流圏の気温の分布(大気の状態が不安定な場合の模式図)
注)低温は青、高温は赤。図2の内容に加え、上層に入った冷気と下層に入った暖気を表示。上昇流が強化され、積乱雲が発達しつつあるところを模式的に示した。
さいごに
天気図は、地上天気図だけではありません。上空の高い所の天気図もあります。大気の状態を調べるとき、上層(又は中層)の寒気については300hPa(高さ約9000m)や500hPa(高さ約5500m)、下層の暖湿気については、850hPa(高さ約1500m)の天気図に注目します。
このことは、次回以降の「豆知識」のコーナーで紹介する予定です。